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In vitro法であるプルダウンアッセイ法によって、複数のタンパク質間の物理的な相互作用の測定が行えます。プルダウンアッセイ法は、別の研究技法から予測されるタンパク質間相互作用の存在を確認したいとき(例:共免疫沈降)、 未知のタンパク質間相互作用を同定するための初回スクリーニングアッセイを行う際に有用です。
この方法は、親和性精製方式を採用しており、免疫沈降法の手順に類似しています。ただし、抗体の代わりに「ベイト」タンパク質を使用する場合は除きます。アフィニティークロマトグラフィー(親和性精製)技法は、タンパク質精製の処理速度や効率性が飛躍的に向上させることができます。また同時に、潜在的な結合パートナーのプルダウン/共精製を実行するための技術基盤ともなります。プルダウンアッセイでは、ベイトタンパク質がタグ付けされ、タグ特異的な固定化アフィニティーリガンド上で検出されます。その結果、 ベイトタンパク質と相互作用するタンパク質の精製用として、「secondary affinity support」が生成されます。その後ベイトが付加されているsecondary affinity supportを、推定されている「プレイ」タンパク質を含有するタンパク質供給源(細胞溶解物など)とインキュベートさせます。この段階でのプレイタンパク質供給源が異なります:予め想定されるタンパク質間相互作用を確認する目的、あるいは、未知の相互作用を同定する目的の違いによりこの段階でのpreyタンパク質供給源が異なります。タンパク質溶出法は親和性リガンドに依存しており、競合検体の使用から低pHまたは還元バッファーまで多岐にわたります。
プルダウンアッセイ法は、複数タンパク質間の相互作用研究だけでなく、特定タンパク質の活性化状態を検出するための強力な手段となります。例えばチロシンリン酸化に応答して活性化されるタンパク質をプルダウンするには、所定タンパク質上のリン酸化チロシンを標的とするSH2ドメインを使用します。さらに、GTP結合(活性状態)とGDP結合(非活性状態)間のサイクルによって、細胞シグナル伝達を調節する分子スイッチとして機能している GTPアーゼをプルダウンするには、GTP結合性活性化GTPアーゼにリクルートされた下流タンパク質のGTPアーゼ結合ドメインを使用します。いずれのプルダウンアッセイ方式でも相互作用の特異性が結合ドメイン配列に依存しているため、これらの手法は種々タンパク質活性化の検出において高特異性です。
Our 72-page Protein Interactions Technical Handbook provides protocols and technical and product information to help maximize results for protein interaction studies. The handbook provides background, helpful hints and troubleshooting advice for immunoprecipitation and co-immunoprecipitation assays, pull-down assays, far-western blotting and crosslinking. The handbook also features an expanded section on methods to study protein–nucleic acid interactions, including ChIP, EMSA and RNA EMSA. The handbook is an essential resource for any laboratory studying protein interactions.
Contents include: Introduction to protein interactions, Co-immunoprecipitation assays, Pull-down assays, Far-western blotting, Protein interaction mapping, Yeast two-hybrid reporter assays, Electrophoretic mobility shift assays (EMSA), Chromatin immunoprecipitation assays (ChIP), Protein–nucleic acid conjugates, and more.
予め想定される相互作用を確認するには、一般に人工タンパク質発現系で発現されたプレイタンパク質を利用します。これによって、内因性の発現から得られるタンパク質に比べ大量のタンパク質を扱った研究が行えます。さらに、研究対象以外の相互作用タンパク質とベイトタンパク質間の相互作用が原因で、実験結果が混乱する可能性を排除することができます。確認試験に適したプレイタンパク質供給源としては、タンパク質発現系の溶解物(E. coliまたはバキュロウイルス感染昆虫細胞)、in vitro転写/翻訳反応、精製済みタンパク質などが挙げられます。
未知の相互作用の発見は、内因性環境でpreyタンパク質と相互作用する新たなタンパク質を発見することを研究目的とするため、確認試験とは対照的です。内因性環境は過多の潜在的タンパク質供給源を必要とする場合がありますが、一般には、ベイトタンパク質の本来の環境とみなされる複合タンパク質混合物として特徴付けられます。発見を目的とした研究に適したプレイタンパク質としては、ベイトタンパク質が通常発現される細胞溶解物、あるいはベイトタンパク質が機能性を発揮する複合生体体液(血液、腸の分泌物等)が挙げられます。
プルダウンアッセイ用のベイトタンパク質は、従来法で精製されたタンパク質に親和性タグを結合させる、もしくは組換え融合タグ化タンパク質を発現させることで生成されます。精製タンパク質製品または精製タンパク質の凍結アリコートを研究初期段階から利用できる場合、目的タンパク質をコードする遺伝子クローニングを行わずにプルダウンアッセイを設計できます。こうした標識用のタンパク質反応性タグを用いて、精製タンパク質のタグ付けが行えます。またクローン化遺伝子が利用可能であれば、分子生物学法を適用して、融合タグ付きの適切なベクターに遺伝子をサブクローニングできます。組換えクローンは過剰発現させることが可能であり、また精製も容易に行えます。したがって、プルダウンアッセイ用のベイトタンパク質を大量に得ることができます。
融合タグ | 親和性リガンド |
---|---|
グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST) | グルタチオン |
ポリヒスチジン(ポリヒスチジンタグまたは6xHisタグ) | ニッケルまたはコバルトキレート錯体 |
ビオチン | ストレプトアビジン |
プルダウン法によるタンパク質間相互作用の発見や確認は、研究対象の相互作用の性質に決定的に依存しています。相互作用は安定性もしくは一過性いずれかの性質を持ち、この性質によってベイトタンパク質とプレイタンパク質間結合を最適化する条件が決定付けられます。一過性相互作用は、一般に運搬もしくは酵素のメカニズムに関与しています。リボソームの構造は多数の安定なタンパク質間相互作用から構成されるため、安定性もしくは一過性の性質の一例となります。ただし、新生タンパク質へmRNAを翻訳する酵素機構は一過性相互作用を必要とします。
タンパク質複合体は時間経過による分解が起きないため、安定なタンパク質間相互作用を単離させるには、プルダウンアッセイ法などの物理的手法が最も簡単です。強力かつ安定なタンパク質複合体を高イオン強度バッファで徹底的に洗浄すると、非特異的な偽陽性の結果を完全に排除することができます。複合体相互作用の解離定数が高いと同時に相互作用度が低い場合、pH・塩の種類・塩濃度などに関連したアッセイ条件を最適化することによって、相互作用の強度を改善させることができます。適切な対照実験を詳細に設計すれば、非特異的な相互作用に関する問題を最小限に抑えられます。
「タンパク質との一時的な相互作用」と定義される一過性相互作用は、タンパク質間相互作用の中では最も単離が困難です。一過性相互作用は、複合体がアッセイ中に解離し得ることから、プルダウンアッセイなどの物理的手段による同定が比較的困難となります。一過性相互作用は運搬中あるいは酵素プロセスの一部として発生するため、一般にヌクレオチド三リン酸の加水分解を介した補因子やエネルギーを必要とします。アッセイの最適化時に補因子および非加水分解性ヌクレオシド三リン酸(NTP)の類似体を組み込むと、補因子またはNTP依存性の機能複合体の様々な段階で相互作用タンパク質を捕捉することができるようになります。
弱いまたは一過性のタンパク質間相互作用を強化させるために、プルダウン前に相互作用タンパク質を共有結合的に架橋することができます。これは架橋の伴わないプルダウンアッセイよりも高度な戦略ですが、タンパク質相互作用を架橋により強化させることがプルダウンアッセイの成否を左右するかもしれません。
ベイト-プレイ相互作用を同定するには、複合体を親和性支持体から除去し、標準的なタンパク質検出法で分析する必要があります。複合体全体を親和性支持体から溶出させるには、ドデシル硫酸ナトリウム - ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)ローディングバッファもしくは、ベイトタンパク質上のタグに特異的な競合検体を使用します。SDS-PAGEローディングバッファの使用はタンパク質にとって過酷な環境の処理法であり、サンプル中の全てのタンパク質が変性するため、サンプル分析法はSDS-PAGEのみに限定されます。また、この処理法では、マトリクスに非特異的に結合した親和性支持体から過剰タンパク質が除去されることで分析が妨害される可能性があります。競合検体の溶出を使用した際には、親和性支持体に非特異的結合したタンパク質が除去されないため、ベイト-プレイ相互作用への特異性がはるかに高まります。この手法は非変性であるため、生物学的に機能的なタンパク質複合体が溶出されます。これによって、後続の研究が実施しやすくなるでしょう。
また、段階的勾配で塩濃度上昇やpH低下を促すことにより、ベイトタンパク質を固定化したままプレイタンパク質のみを選択的に溶出させるプロトコルもあります。臨界塩濃度またはpHが効率的な溶出に最適化されていれば、勾配溶出を実行する必要はありません。またこれらの溶出法は非変性であり、相対的な相互作用強度の測定に有用となるでしょう。
溶出サンプル中に含まれるタンパク質複合体は、SDS-PAGEにより可視化が行えます。また、ゲル染色・ウェスタンブロッティング検出・S-35放射性同位元素検出をはじめとした関連検出法による可視化も可能です。相互作用タンパク質の最終測定時には、一般的にポリアクリルアミドゲルからのタンパク質バンドの単離や単離タンパク質のトリプシン消化、消化ペプチドの質量分析同定を行います。
プルダウンアッセイには複数の細胞溶解物を使用した様々な工程が伴うことから、最終結果が人為的な産物でないことを実証するために各実験を適切にコントロールすることが不可欠です。各実験では支持体への非特異的な結合を同定するために、溶解液が支持体中を通過する前後の時点で溶解液を分析する必要があります。また溶出タンパク質を全て観察するために、各洗浄手順の分析も必要です。またベイト溶解液中にベイト/プレイ相互作用が存在しないことや、プレイタンパク質が固定化支持体に結合しないことを確認するために、ベイト/プレイ非含有の対照物質を使用する必要があります。
タンパク質間相互作用の確認/同定用の独自のプルダウン法が、現代の科学文献において数多く発表されています。独自のプルダウンアッセイ法は、各メーカーの試薬コレクションを象徴しています。そのためひとつの機能的な集合体としてまとめて検証することはできません。また、各メーカーの試薬を併用した場合、トラブルシューティングが難航することがあります。市販のプルダウンキット製品では、プルダウンアッセイに特化して開発された、検証済み試薬が揃ったセットが用意されています。各キットで提供されるバッファは柔軟性が非常に高く、相互作用タンパク質の単離の最適条件を測定できます。洗浄そして結合用に使用する溶液は、生理学的なpHおよびイオン強度を備えています。この溶液を最初に使用して、各固有の相互作用の特定バッファ条件の最適化を行うことができます。また多くの市販キットには、少量の親和性支持体を効率的に処理できるスピンカラムが組み込まれています。そのため、プルダウンアッセイ時や、最小限の非特異的タンパク質をプルダウンするためにタンパク質複合体の洗浄を行っても、親和性支持体を維持させることができます(従来のプルダウンアッセイ法では、こうした共通要因から変動や高バックグラウンドが発生します)。
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.