Search Thermo Fisher Scientific
Search Thermo Fisher Scientific
サンプル調製は、HPLCおよびUHPLC分析の成功の鍵を握る処理です。サンプル調製では具体的に次のような処理を行います。
サンプル調製テクニック(英語資料へリンク)は多くの手法が確立されており、個々のメソッドごとに特定のメリットや適した用途があります。
調製法 | 分析の原則 | 用途 |
希釈 | サンプル中の分析物、溶剤、マトリックス濃度の低減 | カラム/検出器の過負荷を防止し、サンプル溶媒の溶出強度を低減 |
遠心分離 | 密度に応じた沈降 | 溶液中の大きな細胞成分の除去 |
ろ過 | サンプル中の微粒子の除去 | カラムの寿命延長と、流体の目詰まり防止 |
タンパク質沈殿 | 塩類や溶剤の添加またはpH変更によるタンパク質の脱可溶化 | 溶液中のタンパク質の除去 |
液-液抽出 | 2つの混和溶媒の溶解性の違いを利用したサンプル成分の分離 | 極性/電荷に基づいた化合物の精製 |
固相抽出 | 吸着固定相を用いた対象化合物の選択的分離/精製 | 生物学的マトリックスからの低分子の分離と、生体高分子の脱塩 |
イムノアフィニティー捕捉 | 抗体を用いた分析物の選択的精製 | 生物学/環境/食品および飲料のマトリックスからの低分子の分離 |
タンパク質消化 | 酵素的切断によるタンパク質のペプチド化 | ボトムアッププロテオミクス/ペプチドマッピング用のペプチド生成 |
誘導体化 | 化学反応による分析物の物理化学的特性の変更 | 分析物の保持係数、安定性、検出能の向上 |
サイズ排除 | サイズに応じたサンプルコンポーネントの分離 | タンパク質緩衝液交換/脱塩、高分子の除去 |
均質化 | 機械的な力による固体サンプル構造の破壊 | 環境サンプルや生体組織の破壊による抽出能の向上 |
均質化、液-液抽出、遠心分離、固相抽出を含む多段階プロセス | 食品および環境サンプルからの農薬の抽出 |
サンプルマトリックスとは、ターゲットの分析物を除いたサンプル内のあらゆる物質のことだと考えることができます。そこには塩類その他の化合物から溶媒にいたるすべてのものが含まれます。こうしたマトリックスのタイプに応じて、それに適したサンプル調製、クロマトグラフィーのモード、検出方法を選択しなければなりません。サンプルマトリックスの把握は、メソッド開発における本質的な検討事項です。
マトリックス効果とは広範な意味を持つ用語ですが、特定の分析物マトリックスがどの程度分析物の検出や定量に影響するかの傾向を説明する際に使われます。通常この効果はバイアスとして現れ、溶液中の分析物濃度を過小ないし過大評価する原因になります。
マトリックス効果は、サンプルの調製、カラムでの分離、検出を含めた、分析時のほぼすべての段階で現れる可能性があります。次にいくつかの一般的な例を示します。
マトリックス効果の軽減については、一般的な方法がいくつか存在します。何が正しい選択かは、分析の内容によって異なります。
分析物の感度が適切であれば、一番簡単なアプローチは、適切な注入溶媒でサンプルを希釈することです。サンプルが希薄であれば、マトリックス効果の影響も無視できるレベルに小さくなります。
その他の解決策としては分析前に抽出を行う手法もあります。これはサンプル汚染の原因となりうるものを排除することで分離能を改善します。2D-LCの使用や、より選択性の高い検出方法への切り替えによっても、マトリックス効果を回避できます。
最後に、メソッドを変更することなく標準物質を追加するという手法も存在します。ただし、サンプルあたりの注入回数が増加するため、この手法は一般的に避けられています。
既存の確立済みメソッドが利用できない場合は、慎重なプランニングとその実践により、堅牢な手順を開発する必要があります。HPLCおよびUHPLC用のメソッドを構築する場合、サンプル調製以外にも以下の4つの主要なステップ(英語資料へリンク)を意識しておかなければなりません。
メソッドのスカウティング。各種のカラムおよび溶離液条件のスクリーニングを行います。このフェーズの目的は、HPLCでの分離を成功させるために最適な組み合わせを選択することです。実際のメソッドスカウティングは、カラムと移動相の切り替えや機器メソッドの構築に関して、かなりの手作業を必要とします。ターゲットとなる化合物の特性を把握しておくことで、最初からスカウティングの候補を、最も有望な少数のカラムのみに絞り込むことができます。
メソッドの最適化。分解能、速度、再現性を可能な限り最大化するため、HPLCメソッドでの各種の分離条件のテストを反復して行います。このステップは、メソッド開発の中でも最も長い時間を要するパートであり、完全な解析を行うには多くの場合、専門知識が不可欠となります。
堅牢性テスト。分離メソッドのパラメーター変更の影響を判断するために試験を行います。堅牢性の最適化は、メソッドの開発と検証のプロセスの多くで重要な要件です。
メソッドの妥当性確認。開発した分析メソッドが目的の用途に適合しているかを検証する、業界固有のプロセスです。
メソッド開発での重要性が増しているものに、化合物の保持係数(k)、効率(N)、選択性(a)という3つのパラメーターがあります。選択性を調整する一般的な方法の1つは、用いるカラムケミストリー(英語資料へリンク)と溶離液を変更することです。多くの場合、こうした変更の手動での実施は長時間を要する作業になります。幸いなことに、現在のテクノロジーでは、このようなプロセスの自動化が可能です。
2つの化合物のクロマトグラフィー分離における、保持係数、カラム効率、選択性の影響。
堅牢性、再現性、信頼性に優れたHPLCまたはUHPLCメソッドの開発は、かなりの液体クロマトグラフ経験者であっても一筋縄では進まない可能性があります。
場合によっては、分析アプリケーションのAppsLabライブラリ(英語資料へリンク)を検索することでメソッド開発を完全に回避できるケースも存在します。このオンラインライブラリには検索可能なリポジトリとして、膨大な数のアプリケーションが、詳細なメソッド情報と事前設定済みのeWorkflow™手順付きで収録されています。
メソッドのパラメーター確定に有用なソースとしては、米国薬局方(USP)や欧州薬局方(Ph. Eur)などの確立済みの薬局方モノグラフが利用可能な場合もあります。
LCメソッドの開発は、依然として多くのラボでのボトルネックであり、そうした時間とリソースを節約するプロセスとして非常に重要な存在が自動メソッド開発です。各種のハードウェアおよびソフトウェアツールを活用することで、メソッド開発プロセスの高速化、最終的なメソッドの品質向上、そして従来は数週間ないし数カ月を要していた開発時間の数日単位への短縮を実現できます。
自動メソッド開発では主として次の2つのハードウェア機能が必要とされます。
自動溶媒切り替え。このテクノロジーは、手動でのボトル交換やシステムパージを不要とし、シーケンス中に移動相を切り替える能力を提供するものです。Thermo Scientific Vanquishメソッド開発システムには、外部選択バルブ付きの溶媒拡張キットが含まれており、チャネルごとに最大10種類の溶媒の自動スカウティングが行えます。
自動カラム切り替え。これは初期段階のメソッド開発で用いるもので、通常は数種類の固定相の化学的性質についてスカウティングを実施します。自動カラム切り替えを利用すると、手動でのカラム間フィッティングの切り替え用にシーケンスを中断する必要性が排除され、時間とユーザーの労力の両方を節約できます。Thermo Scientific Viperメソッドスカウティングキットには、4カラムケミストリーの検証に必要なすべての流路接続とキャピラリーが含まれています。
メソッド開発プロセスを完全に自動化するには、メソッドのスカウティングから妥当性確認までのプロセスをガイドする専用ソフトウェアが必要です。いくつかのソフトウェアパッケージには、分析物の保持能の予測からシーケンス生成までの機能が含まれています。
たとえばChromSwordAuto Chromeleon Connectでは、人工知能ベースのアプローチを用いたメソッドの最適化が行えます。ChromSword AutoRobust Chromeleon Connectでは、多変量アプローチを用いた、自動メソッドの堅牢性とシステムの安定性の評価のスリム化が行えます。どちらのオプションもChromeleonとの完全な統合がされており、高度なユーザーエクスペリエンスがもたらされます。
Thermo Scientific HPLCシステムに対応したもう1つの主要なソフトウェアパッケージとして、S-Matrix® Fusion QbD®が挙げられます。ここでのメソッド開発はクオリティ・バイ・デザインのアプローチに大きく依存しています。
*必須項目