チャージバリアント分析に関する情報

タンパク質チャージバリアントの構造を理解するには

チャージバリアント分析は、バイオ医薬品用タンパク質の規制要件です。大きく不均質な分子の抗体医薬品は、製造中にさまざまな酵素による翻訳後修飾(グルコシル化、リジンのトランケーションなど)を受けます。また、精製や保管の間にも化学修飾(酸化、脱アミノ化など)が受ける可能性もあります。このチャージバリアントの分析において高い有効性が実証されているのが、イオン交換クロマトグラフィーを用いた高分解能分離です。タンパク質のチャージバリアントについては、ICH Q6B などの規制によってプロファイリングが義務付けられています。


イオン交換クロマトグラフィーによるタンパク質チャージバリアント分析

タンパク質チャージバリアントは、抗体またはその他のタンパク質の電荷特性に基づき、その物理化学的特性を使用して分離します。従来、タンパク質の分離は、塩グラジエントを使用したイオン交換クロマトグラフィーで行われていました。しかしながら、塩ベースのグラジエントは、目的のタンパク質分子ごとに固有のグラジエントを開発する必要がありました。、さらに、塩ベースのグラジエントは再現することが難しいため、メソッドの再現性や堅牢性が低く、しかもメソッド開発に時間がかかるという複数の課題がありました。

そのような状況の中で 2009 年、Genentech が初めて、塩グラジエントの代わりに pH グラジエントを使用したチャージバリアントの分離を報告しました。pH ベースのグラジエントの長所は、一つのメソッドをあらゆるモノクローナル抗体(mAb)に対してグローバルに適用でき、メソッド開発が大幅に簡素化されることなどがあります。およそ 等電点 7 ~ 9 の範囲にある mAb であれば、pH ベースのグラジエントを使用した陽イオン交換カラムで分離できることが報告されています。また、この方法は汎用性が高く、単一のメソッドでさまざまな抗体に存在する異なるチャージバリアントの分離に簡単に使用できるだけではなく、従来のイオン強度を有する塩グラジエントを使用した場合の所要時間(90 分)と比べて、pH グラジエントを使用した場合は 30 分 と大幅に短縮できることが明らかになりました。

新たなカラムや装置技術により、分析時間をさらに短縮できる可能性も示されています。
小粒子径の短いカラムをリニア pH グラジエントと組み合わせることで、真の UHPLC アプリケーションとして利用できるようになります。

この手法の難点は、 pH グラジエントを如何に直線的に実行できるか、という点にあります。さまざまな濃度で pH 範囲全体をカバーするには、複数のバッファーを使用して、各バッファーのバッファー容量が一致するようにしなければなりません。しかし、カラム自体が pH の変化に対するバッファーとして機能するため、高分解能/低容量のカラムを慎重に選択する必要があります。バッファーカクテルを用いてリニア pH グラジエントを生成するのが容易ではないことは、以下の図からも明らかです。プログラムされたリニアグラジエントに対して、明らかにグラジェントがカーブしているのが分かります。この問題を克服するには、市販のグラジエントバッファーを採用します。適切なカラムと組み合わせることで、リニアグラジエントを生成できます。これにより、メソッドの最適化が簡単かつ論理的に達成され、オペレーターとラボの間で堅牢性と一貫性が実現されます。


代替手法について

迅速で汎用性のあるチャージバリアント分析メソッドとして、キャピラリー電気泳動(CE)を用いた等電点電気泳動も利用されています。この手法は有効性が実証されている一方で、平衡時間が長く、オペレーター間の不一致が発生しやすいという問題点があります。HPLC や UHPLC による pH グラジエントは、CE による代替手法に比べ、より高速で再現性が高くなっています。また、HPLC や UHPLC は、すべてのバイオ医薬品関連ラボにおいて広く利用され、応用性が高いものです。さらに、新しいバリアントとして検出されたピークを分画し、より詳しい分析を行うことで確実に同定することも可能となります。

タンパク質チャージバリアント分析の製品や手法の詳細については、当社のチャージバリアント分析製品のページをご覧ください。


チャージバリアントプロファイリングの関連資料

e-learning シリーズ

アイルランドのダブリンに所在する National Institute of Bioprocess Research and Training(NIBRT: アイルランド国立バイオプロセス研究研修機関)とサーモフィッシャーサイエンティフィックの専門家が、インタクトタンパク質特性評価分析の最新技術について解説します。

動画

特許取得済みの pH グラジエントバッファーキットを使用して、リニア pH グラジエントを簡単に生成し、高速かつ堅牢な医薬品用タンパク質分離が得られる方法について、5 分で学ぶことができます。

アプリケーション

この研究では、デノスマブのチャージバリアントの分離における塩グラジエントと pH グラジエントを評価しています。pH バッファーは、チャージバリアントの分離を向上させ、より高速なスクリーニングの可能性を提供します。

アプリケーション

この研究は、ProPac SCX-10 カラムを使用した pH グラジエントベースの強陽イオン交換クロマトグラフィーにより、MAb チャージバリアントで高分解能が実現できることを示しています。バリアントの一部は、シアリル化バリアントと同定されました。ルーチンのキャピラリー電気泳動の等電点電気泳動法に比べて、タンパク質の品質管理において利便性が高く、わかりやすいメソッドです。


タンパク質チャージバリアントプロファイリングに関する資料ライブラリ

条件に一致するレコードは見つかりませんでした

タイプタイトル製品の対象分野
アプリケーション概要翻訳後修飾の高塩濃度グラジエント分析 - 脱アミド化モニタリング(英語)HPLC/UHPLC2015
アプリケーションノートモノクローナル抗体(mAb)チャージバリアント分析のための、迅速で堅固なリニア pH グラジエント分離プラットフォーム(英語)HPLC/UHPLC2013
アプリケーションノートモノクローナル抗体(mAb)チャージバリアント分析のための、迅速で堅固なリニア pH グラジエント分離プラットフォーム(英語)HPLC/UHPLC2014
アプリケーションノートモノクローナル抗体(mAb)チャージバリアント分析のための、迅速で堅固なリニア pH グラジエント分離プラットフォーム(英語)HPLC/UHPLC2013
アプリケーションノートリニア pH グラジエント分離プラットフォームを使用した、トップセラーモノクローナル抗体治療薬のチャージバリアントの高分離分析(英語)化学薬品および消耗品2015
アプリケーションノートインタクトモノクローナル抗体アイソフォームの高分解能分離(英語)化学薬品および消耗品2014
アプリケーションノート小粒径HPLCカラムを用いた、ハイスループットかつ高分離能のモノクローナル抗体分析(英語)化学薬品および消耗品2014
アプリケーションノートpH グラジエントイオン交換クロマトグラフィーによりインタクト抗体シアリル化アイソフォームの分離(英語)化学薬品および消耗品2016
アプリケーションノートモノクローナル抗体のネイティブ蛍光を利用したチャージバリアントの高感度検出(英語)HPLC/UHPLC2016
アプリケーションノート融合タンパク質の高分解能分離(英語)HPLC/UHPLC2016
アプリケーションノート逆相 C4 ポリマーモノリスカラムによるモノクローナル抗体分析(英語)化学薬品および消耗品2015
アプリケーションノート高分解能 HIC カラムによるモノクローナル抗体(mAb)酸化バリアントの分離(英語)化学薬品および消耗品2014
アプリケーションノートpH グラジエントイオン交換クロマトグラフィーによりインタクト抗体シアリル化アイソフォームの分離(英語)化学薬品および消耗品2014
アプリケーションノートNISTmAb(米国国立標準技術研究所が供給するモノクローナル抗体)標準物質を使用してチャージバリアント分析のシンプルなアプローチを実証(英語)HPLC/UHPLC2017
ポスター自動 MAb ワークフロー:細胞培養回収から、不均一成分のインタクト質量分析に至るまで(英語)ワークフロー2012
ポスターノート新たな疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)カラムを用いたモノクローナル抗体および抗体薬物複合体の分析(英語)化学薬品および消耗品2015
ポスターノートモノクローナル抗体(mAb)チャージバリアント分析のための、迅速で堅固なリニア pH グラジエント分離プラットフォーム(英語)HPLC/UHPLC2013
ポスターノートモノクローナル抗体アナリシスにおける高分解能分離メディアの利点(英語)HPLC/UHPLC2013
ポスターノートモノクローナル抗体アナリシスにおける小粒子高分解能分離メディアの利点(英語)化学薬品および消耗品2013
ポスターノート陽イオン交換 pH グラジエント分離プラットフォームの開発(英語)化学薬品および消耗品2013
ポスターノートリニア pH グラジエント分離プラットフォームを使用した、トップセラーモノクローナル抗体治療薬のチャージバリアントの高分離分析(英語)化学薬品および消耗品2015
ポスターノートリニア pH グラジエントを使用した、分離モノクローナル抗体(MAb)チャージバリアントのインタクト質量分析(英語)化学薬品および消耗品2013
ポスターノートモノクローナル抗体(MAb)バリアント分析のためのMAbPac SCX 3 および 5 µm 粒子径相(英語)化学薬品および消耗品2012
ポスターノート陽イオン交換カラムを使用したモノクローナル抗体の異種特性分析(英語)化学薬品および消耗品2011
ポスターノートハイスループットで高分解能のモノクローナル抗体分析のための小粒子メディア(英語)化学薬品および消耗品2014
ポスターノートサイズ排除用の塩ベースの従来型クロマトグラフィー技術とバイオ医薬品タンパク質用のイオン交換クロマトグラフィーとを高分解能質量分析に導入するための新手法(英語)ワークフロー2017
プレゼンテーション電荷バリアントプロファイリング、インタクトモノクローナル抗体分析、および DAR 測定のための新しいクロマトグラフィーワークフロー(英語)ワークフロー2016
製品仕様pH グラジエントバッファー化学薬品および消耗品2013
技術ノートモノクローナル抗体チャージバリアント分離のための、超高速 pH グラジエントイオン交換クロマトグラフィーの開発(英語)HPLC/UHPLC2014
ホワイトペーパー治療用モノクローナル抗体の特性評価(英語)HPLC/UHPLC2016
事例バイオシミラー治療法の迅速な市場投入 – CRO 事例研究(英語)化学薬品および消耗品2017

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