細胞構造およびタンパク質に関するより明確な情報はこちらから。

細胞を白色光のみで観察することによっても、多くの情報が得られます。蛍光タンパク質、色素またはコンジュゲートした抗体で、タンパク質、構造および生物学的過程を選択的に標識することにより、観察および追跡可能な事象が劇的に増加します。

蛍光色素のどのような特性が重要であるかを理解し、蛍光色素を機能および構造細胞解析研究にどのように使用することが可能であるかを理解するための情報はこちらから。

本セクションのトピック


標的を検出するための蛍光の使用

蛍光を使用することにより、明視野顕微鏡のみを使用して試料を観察する場合と比較して、より優れたコントラストが提供されます。様々な標的を別々の蛍光色で標識することにより、同一実験内で、細胞内の異なる構造またはタンパク質を可視化することが可能となります。標的を蛍光標識する方法には、蛍光色素、免疫標識および蛍光融合タンパク質が含まれますが、これらはすべて細胞内の構造およびタンパク質を選択的に標識する方法を提供し、イメージングにおけるそれらの可視化を容易にします。

いくつかの色素は、生細胞において使用され、その他の色素は固定化および透過処理した細胞に使用されます。他のすべての技術と同様に、標的の標識における蛍光色素の使用には制限があります。蛍光色素が生細胞内において使用される場合、色素が光毒性である場合があります。観察したい物質を標識できる蛍光色素が存在しない場合もあります。特定の色素が入手不可能な場合には、標的を可視化するために、蛍光免疫染色 を生細胞中で使用する、または蛍光融合タンパク質 を固定化細胞または生細胞中で使用することを検討することが可能です。


一つの蛍光色素分子に、多数の異なる選択性

細胞生物学用の蛍光ツールの多くは、基本的には蛍光色素であり、様々な修飾または様々な分子とのコンジュゲーションにより特定の機能が付加され、または特定の細胞小器官またはタンパク質に結合できる特定の機能が付加されています。

化学修飾により、単一の蛍光色素が、それぞれ異なる特性を有した、数多くの異なる形で生成されます。例えば、緑色のAlexa Fluor® 488 色素分子は、アクチンフィラメント を標的とするように修飾すること(A)、IgG に付加して免疫標識 に使用すること(B)、または細胞全体の染色用に使用すること(C)が可能です。

A single fluorophore can be modified to carry out any number of labeling jobs, including functionalized forms for labeling cell structure components such as actin (A) and tubulin (B) and salt forms for whole-cell staining (C).

図 1. 単一の蛍光色素を修飾して数多くの標識操作を行うことが可能で、例えば、機能化フォームに修飾することにより, アクチン(A) およびチューブリン (B)などの細胞構造成分の標識を行い、塩フォームに修飾することにより細胞全体の染色(C)を行うことが可能です。


蛍光ラベリング法には様々な種類があります

前述したように、蛍光標識は通常、特性を付与するように修飾された蛍光色素からなります。蛍光色素を様々な分子に連結させることに加えて、その他の種類の修飾により蛍光色素に新しい特性が付加されます。

蛍光色素を特定の分子、例えば抗体に連結させることにより、標的に対する選択性、この例では抗原に対する選択性が付加されます。この方法の利点は、蛍光色素が標的に結合しているため、非結合性または過剰な蛍光色素は洗浄により除去することが可能で、結果として高いシグナルとバックグラウンド の比が得られ、コントラストが改善します。

蛍光性色素は、初期発光が弱く、細胞内の条件または活性により輝度の上昇が引き起こされます。例えば、:

  • 標的への結合後の蛍光の上昇—多くの核染色剤 例えば、SYTOX® Green およびHoechstなどは、色素自体はほとんど蛍光を示しません。しかし、これらの色素が核酸に結合すると、蛍光強度が大きく上昇し、輝度の高いシグナルが得られます。
  • 細胞内修飾後の蛍光の上昇—他の色素は、化学的活性基を含んでおり、細胞活性により修飾されます。例えば、カルセインAMは、エステル基を含んでいます。生細胞内では、活性エステラーゼの存在下において、エステル基の解離が生じ、非蛍光性のカルセインAM が緑色の蛍光カルセインに変換されます。

蛍光性色素は一般的に、高いシグナルとバックグラウンドの比を示しますが、これは非結合または非解離性の色素が、結合または活性化された場合に観察される劇的な蛍光の上昇と比較して、弱いシグナルを有しているためです。修飾されていない蛍光性色素の輝度は高くないため、通常は洗浄除去する必要がありません。


蛍光色素の機能インジケーターとしての使用

時には、単に何かを標識するだけではなく、細胞の健康状態または細胞が本来の機能を果たしているかどうかを確認することが必要となります。細胞が生きているかどうか? アポトーシス性であるかどうか? またはストレスを受けているかどうか?などを確認したい場合もあります。様々な細胞機能のインジケーターとして作用し、これらの疑問に答えることが可能な多くの蛍光色素が入手可能です。

例えば、蛍光色素であるテトラメチルローダミンメチルエステル(TMRM)は、特異的にミトコンドリアを標識し、ミトコンドリアが健康であるかどうかを示すことも可能です。健康な細胞中の活性ミトコンドリアは、ミトコンドリア膜電位を維持しており、これらのミトコンドリア内ではTMRMは高い蛍光性を示します。ミトコンドリア膜電位が失われると(病的細胞中または瀕死細胞中)TMRMシグナルが低減します。

Panel A shows TMRM staining in healthy HeLa cells; panel B shows the loss of TMRM signal concurrent with treatment to destroy the mitochondrial membrane potential.

図 2. パネルAには、健康なHeLa細胞内におけるTMRM染色が示されています。パネルBでは、ミトコンドリア膜電位を破壊する処理と同時に発生するTMRMシグナルの消失が示されています。


蛍光色素の重要な特性

蛍光色素分子または蛍光色素に関する話題では、吸光係数および量子収量という表現が使用されます。これらの表現は、蛍光色素分子そのものの物理的性質であり、化学者が色素の輝度の程度を知る手掛かりとなります。しかし、生物学的研究においては、蛍光色素には、消光係数および量子収量以外にも重要な特性が存在します。これらの蛍光標識を実際に生体系内において使用する必要のある科学者にとっては、実験をデザインする場合には、考慮するべき特性が他にも多数存在します。

  1. 選択性—蛍光標識が、関心のある分子または活性にのみ適用されることが望まれます。例えば、アクチンを標識したい場合にはアクチンのみを標的とする蛍光が望まれます。
  2. シグナルとバックグラウンドの比—輝度の高い蛍光を、非特異的なバックグラウンドシグナルが低い状態で与える物質が望まれます。バックグラウンドが低い状態において、高いシグナルが得られると、見たいと思う対象とそれ以外のすべての間の、最良のコントラストが得られます。バックグラウンド蛍光について学ぶ。 
  3. 光安定性—光安定性とは、照射光への曝露が繰り返された後、蛍光シグナルがどの程度良好に維持されているかを示します。光安定性でない蛍光色素は使用が困難ですが、これは顕微鏡をフォーカスするために必要な時間内にシグナルが消失してしまう可能性があるためです。さらに、光安定性は経時的イメージングを行う場合にも重要となります。
  4. 励起/蛍光特性—使用するフィルターセットに適合する、励起および蛍光特性を有する蛍光色素を使用することが必要です。シグナルキャプチャーのためのフィルターの使用法を学ぶ。
  5. 環境安定性—環境的に不安定である色素の使用は、どうしても必要な場合もありますが、困難です。蛍光色素の中には、空気、光または温度に感受性を示すものがありますので、開始前にこれらのパラメーターを考慮することが必要です。

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For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.