問題点

タイムラプスイメージング中に、生細胞が病的で不健全な状態になってしまう

細胞は、蛍光色素を励起するための低波長および高波長の光のどちらによってもダメージを受けます。研究に使用されるほとんどの細胞は、一般的なイメージング実験中に細胞へ照射される光子数に耐えられるように適応していません。

観察を行っている間に、培養容器からの細胞の剥離、細胞膜の小疱形成または大きな空胞の形成、ミトコンドリアの肥大化、あるいは 蛍光タンパク質の凝集が見られた場合、これらは全て細胞がストレスを受け、不健全な状態にあることを示す兆候です。

The cell in the top of the figure shows catastrophic blebbing of the cell membrane, and fluorescent protein aggregation, while its neighbor remains relatively healthy. 図 1. 図の上部にある細胞では、細胞膜が 末期的な小疱形成を起こしていますが、隣接する細胞は比較的健全な状態を保っています。


さらに、光励起した蛍光色素は活性酸素種を放出し、近接する細胞構造を損傷します。

brightfield and green channel overlay of a field of live HeLa cells transduced with CellLight® H2B-GFP reagent.

図 2. 上段: CellLight® H2B-GFP 試薬により形質導入したHeLa生細胞の画像、明視野および 緑色チャンネルのオーバーレイ。 この画像を撮影するまでに、Illuminated areaの細胞は10時間繰り返し照明を当てられていますが、Non-illuminated areaの細胞はこの画像を撮影した時にのみ照明を当てています。 繰り返し照明にさらされた細胞では、GFPシグナルの低下と消失が見られ(緑色チャンネル画像)、同時に細胞の収縮、細胞の円形化、およびミトコンドリアの肥大といった明らかな細胞損傷が見られます(明視野画像)。 下段: CellTracker® Deep Red試薬を添加したHDFn 細胞カルチャーにおける擦過痕。 Illuminated areaには、10時間繰り返し照明が当てられました。 Illuminated areaの細胞はバイアビリティーの喪失を示しており、擦過痕には細胞が増殖していませんが、Non-illuminated areaの細胞は擦過痕に細胞が増殖しています。


上記の現象はどちらも光毒性と呼ばれており、両者を区別しない場合もあります。光毒性に対する主な対策は、顕微鏡の設定および実験条件を最適化し、必要最小限の照明を使用することです。

可能な対策 


蛍光顕微鏡の光路を最適化する

細胞へのダメージを最小化するためには蛍光色素の励起光量を減らすことになるので、1つの対策としてイメージングシステムを非常に高感度でかつ放出光のほとんどを補足できるようなものにデザインする方法が挙げられます。これは通常、できるだけ効率が良くなるように蛍光顕微鏡の光路を最適化する、最も高感度な検出器(通常CCDカメラ)を使用する、必要最小限の励起光を使用する、使用する蛍光色素に最適な波長を用いることで実現できます。


シグナル強度を下げる、露出時間を短くする

時には手持ちの装置で最善を尽くさなければならない場合もあるでしょう。その場合でも、バックグラウンドを超えて最善のシグナルを得られる最小限の蛍光励起光を照明に使用してください。そのためには、お使いのシステムで可能な限り低いシグナル強度および最短の露出時間に合わせて、実験条件を最適化します。場合により、特に長時間にわたりイメージングを行いたい場合は、細胞の健全性を保つために解像度を下げることを推奨します。そのためには、露出時間の短縮、ビニング、または低倍率での観察が挙げられます。また、赤色寄りの蛍光色素を使用し、細胞の健全性をより良く保てるか検討することもできます。生細胞を用いた蛍光観察のセクションをご覧ください。

関連ページ

Share
 

For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.