問題

望ましくない部分に蛍光が観察される。

バックグラウンド蛍光は、時にノイズとも称される、望ましくない部分に観察される蛍光シグナルです。バックグランド蛍光は様々な原因から発生しますが、その原因は主として二つのカテゴリーに分類されます。

バックグラウンド蛍光の起源

  1. 装置の設定および関連パラメーターに由来するバックグラウンド蛍光—例えば、励起光源からの光、カメラノイズおよび周辺光
  2. サンプル、容器および観察媒体の自家蛍光、または特定の標的に結合していない蛍光色素に由来する蛍光

装置および光源に由来するノイズは同定および除去が困難ですが、ほぼ毎日一定である傾向があります。自家蛍光または比特異的染色に由来するバックグラウンドは、少なくとも理論上は、同定および修正がより容易です。実験デザインは、非常に多くの異なる様式でバックグラウンド蛍光に影響を与える可能性があるため、その低減にも恐らく複数の選択肢が存在します。蛍光観察実験におけるバックグラウンド蛍光の原因のいくつかを以下に示します。:

  • 蛍光色素:試料中の非結合性の色素または色素の非特異的結合:
  • サンプル自体に自家蛍光が存在し、バックグラウンド蛍光に寄与している
  • 薬物および誘導試薬の中には蛍光性の(または蛍光性になる可能性がある)ものがあります
  • 容器または細胞増殖用の基質に由来する蛍光
  • 蛍光観察中に使用する媒体がバックグラウンド蛍光に寄与する可能性もあります。

Background fluorescence can arise from many sources in your experiment.

図 1. バックグラウンド蛍光は実験において多くの原因から発生する可能性があります。

バックグラウンド蛍光を低減させるために実行可能なこと。

蛍光画像から最良のデーターを取得するためには、シグナル(蛍光標識されることが望ましいもの)とバックグラウンド(蛍光標識されることが望ましくないもの)の差をできる限り大きくするために最大限努力することが必要です。その差は、定量結果を報告する際に、シグナルとバックグランドの差を∆F、バックグラウンドをFとした場合、∆F/Fという比として表現されることもあります。なるべく輝度の高い蛍光色素を使用したいと考えるのは当然ですが、最良の結果を得るためには、バックグラウンドまたはターゲットから外れた蛍光をできるだけ少なくすることも必要です。一般的には、バックグラウンドを低減させると、画像のコントラストが向上し、目的とするシグナルの観察がより容易となります。 


サンプル中の非結合性の色素または非特異的に結合している色素に由来するバックグラウンド蛍光

  • 洗浄:蛍光色素または染色剤でサンプルを標識した後、サンプルをPBSなどの緩衝生理食塩水で2~3回洗浄します。この操作により、非結合性の蛍光色素が除去され、バックグラウンドが低減されます。
  • 蛍光色素濃度の至適化:サンプルを使用している蛍光色素で、滴定法により標識します(例を参照してください)。示唆される濃度よりも低い濃度、同じ濃度および高い濃度を使用してください。実験条件に最適な色素濃度を使用することにより、輝度の高い特異的なシグナルを、最低限のバックグラウンドシグナルの存在下において取得することが可能となります。

 

Different dye concentrations under identical experimental conditions can produce significantly different amounts of background.

図2. 同一の実験条件下において、異なる色素濃度を使用すると、極めて異なる量のバックグラウンドが得られます。


異なるフィルターとマッチする色素で標識してください。

サンプル自体が、シグナルを不明瞭にさせる蛍光を発光している場合には(自家蛍光)、異なるフィルターセットにマッチする色素での標識を試みてください(例えば、緑色フィルターセットを使用する蛍光色素から、赤色または近赤外のフィルターセットを使用する蛍光色素に変更する)。 


細胞および薬物または処理剤のみを含むウェルからの蛍光強度を測定してください。

細胞および薬物または処理剤のみを含む(蛍光標識を含まない)ウェルからの蛍光強度を測定することにより、生細胞観察において、細胞処理方法がバックグラウンドの上昇に寄与しているかどうかを同定することが可能です。もしその寄与が存在する場合には、結果からこのバックグラウンドを差し引くことも可能です。あるいは、異なるチャネルを使用する、異なる処理方法または色素を使用することが必要になる場合もあります。


媒体を確認する

サンプルを保持している媒体が結果に影響を与えている場合もあります。固定化細胞および生細胞のいずれの観察においても、この可能性は存在します。免疫染色を最も一般的に使用する、固定細胞の観察においては、封入剤の検討を試みるとよいかもしれません。生細胞観察においては、蛍光を発光するタンパク質やビタミンなどを含む完全培地を使用する代わりに、光学的に透明な緩衝生理食塩水中での観察を行うと、シグナル対バックグラウンドの比が改善します(生細胞を用いた蛍光観察を参照してください)。 


容器を確認する。

観察を行う容器もバックグラウンド蛍光に寄与する可能性があります。例えば、細胞培養で一般的に使用されるプラスチック底の培養皿は、非常に輝度の高い蛍光を発する可能性があります。過剰なバックグラウンド蛍光が存在し、観察をプラスチック底の容器で行っている場合には、ガラス底の容器の使用への変更を試みてください。 

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For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.