TALENまたはTALエフェクターは、生細胞を用いた正確かつ効率的なゲノム編集のために広く使用されている技術です。このゲノム編集技術は、細菌、酵母、植物、昆虫、哺乳類、ゼブラフィッシュなど、多様な宿主系で機能することが知られています。TALENを用いた研究を開始し、継続的な改善を行っていただくためのサポートとなるように、リソースを集めました。

TALENとは?

転写アクチベーター様(TAL)エフェクタータンパク質は、広く分布している植物病原体であるXanthomonas属の細菌によって産生されます。天然のTALは宿主DNAの特定の配列に結合し、感染した植物の遺伝子発現を改変することで、疾病プロセスを促進します。天然TALエフェクタータンパク質には、2つの特徴的なドメイン、エフェクタードメインと非常に特異的なDNA結合ドメインがあります。

このDNA結合ドメインの構造を操作することにより、ゲノム内の任意のDNA配列に特異的に結合するタンパク質ドメインを生成することができます。これらの特異的に改変されたDNA結合タンパク質ドメインは、次にカスタマイズされたエフェクタードメイン(例:ヌクレアーゼ、転写アクチベーターまたはリプレッサー)に結合し、標的DNAを正確に操作できるキメラタンパク質を生成します。

研究者がデザインしたTALエフェクタータンパク質は、ゲノムを改変するための標的ヌクレアーゼを介して、または高精度な遺伝子発現モデレーターによって、細胞生物学、分子生物学、合成生物学、創薬、バイオ燃料など幅広いライフサイエンス分野のアプリケーションの進歩に役立っています。

TALENはどのように機能しますか?

XanthomonasのTALエフェクターに由来するTALのDNA結合ドメインは、さまざまな数のアミノ酸の繰り返し配列で構成されています。各繰り返し配列には33~35残基のアミノ酸が含まれ、1つのDNA塩基対を認識します。図1に示すように、DNAの認識は、RVD(repeat-variable di-residues)と呼ばれる各繰り返し配列内の12番目と13番目のアミノ酸にある 2アミノ酸残基の可変領域を介して行われます。

TALエフェクター繰り返し配列はモジュール式に集合させることができ、RVDを改変することにより、特定の標的DNA配列を認識するTALタンパク質を合成します。繰り返し配列は容易に結合させることができ、長いTALエフェクターはゲノム内の任意の遺伝子座を特異的に標的にするようにデザインすることが可能です。

TALエフェクタータンパク質のDNA結合ドメイン構造を示した図
図1.TALエフェクターのDNA結合ドメインDNA結合ドメインの構造を操作することにより、ゲノム内の任意のDNA配列と特異的に結合するタンパク質ドメインを生成することができます。

Fok1エンドヌクレアーゼに融合された1対のGeneArt TALタンパク質を用いて、特定のゲノム遺伝子座で2本鎖DNAを切断することができます(図2)。1対のTALタンパク質を用いてターゲッティングし、オフターゲット効果を減少させます。

図2.結合の最大化のためにカスタマイズしたTALエフェクターの標的部位のデザイン(A)TALでは、お客様からお預かりした配列に特異的なDNA結合タンパク質をコードし、FokIヌクレアーゼドメインに融合させてゲノム編集を行います。当社の初代TALエフェクターでターゲッティングした配列では5'末端にTが含まること、FokIヌクレアーゼを正しい組合せにし、2本鎖切断が行われるようにするためにforward TALエフェクターとreverse TALエフェクター間のスペーシングが13~18 bpでなければなりませんでした。(B)当社によるTALデザインの改善は、DNA結合ドメインの5'末端がTであるという制限を無くし、ゲノム全体の任意の配列へのターゲティングを可能にしました。2つのTALエフェクター間の最適なスペーシングは15~16 bpです。

Fok1ヌクレアーゼドメイン誘導により切断された部位は、その後非相同末端結合(NHEJ)または相同組み換えによる修復(HDR)のいずれかによる内在性の細胞機構によって修復されます。

  1. NHEJは変異が起こりやすく、コードするタンパク質コード配列内で生じた場合はしばしばフレームシフト突然変異が起こり、遺伝子を効率的にサイレンシングします。
  2. 相同DNAの「ドナー配列」を用いて、確定した新しいDNA配列を導入することができます。

その結果、Fok1エンドヌクレアーゼに融合させたタンパク質は、遺伝子サイレンシングを誘導したり、改変したDNAフラグメントをゲノム上の正しい部位に高精度に挿入したりすることが可能になります。

TALEN技術についてさらに学ぶ

Using Sanger sequencing to facilitate CRISPRand TALEN-mediated genome editing workflows

アプリケーションノート:CRISPRおよびTALENによるゲノム編集ワークフローを促進するサンガーシーケンスの使用(英語)

キャピラリー電気泳動によるサンガーシーケンスとMinor Variant Finder Softwareをゲノム編集ワークフローで使用する方法をご覧ください。CRISPRによるゲノム編集の結果を示していますが、ここで適用される原理は、ZFNやTALENによる編集ワークフローにも使用できます。ワークフローのシンプルさと費用対効果、および複雑でないデータ解析により、キャピラリー電気泳動によるサンガーシーケンスは、あらゆるゲノム編集ワークフローの貴重な一部となっています。

Jon Chesnut

ブログ:研究者Jon Chesnut氏に聞く—CRISPRとTALENの比較

CRISPRおよびTALENのツールと技術は、現在および将来のゲノム編集の方法を変えつつありますが、この2つの違いは何でしょうか?また一方の技術を、もう一方の技術よりも優先して使用するのはどのような場合なのでしょうか? この記事では、これらの疑問を取り上げます。

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CRISPRゲノム編集リソースガイド

ゲノム編集の入門書として、ゲノム編集に利用できる技術や、編集細胞のデザイン、導入、検出の方法について解説しています(英語)。

For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.

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