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あらゆる PCR の効率は、ターゲットアッセイを用いた希釈系列実験を実施することにより評価することができます。 弊社では、10 倍希釈系列での実施を推奨しています。 ベースラインおよび閾値を適切に設定後、検量線の傾きから増幅効率値を導き出します:
検量線の傾きは PCR 効率を表します。 検量線が作成されている場合、Applied Biosystems™ StepOne™、StepOnePlus™、および 7500 Real-Time PCR System version 2.0 のソフトウェアプログラムが PCR 効率を算出します。
良好な反応では、PCR 効率は 90~100%となるはずで、傾きとしては −3.6 から −3.3 の間になります。 PCR 効率が100%の場合、10 倍希釈系列の各増幅曲線の CT 値の間隔は 3.3 サイクルになるはずです(すなわち、サイクル(Ct 値)毎に増幅産物量が2倍に増幅することになります)。 傾きが –3.6 より小さい場合、PCR 効率は低いとされます。
PCR 効率に影響を及ぼすパラメータ
いくつかのパラメータが PCR 効率に影響を及ぼす可能性があります(Applied Biosystems Support の所見に基づき、頻度の高い順に記載します):
RNA に阻害物質(サンプル調製試薬、過剰なタンパク質など)が含まれている場合、ダウンストリームの PCR が部分的あるいは全体的に阻害されることがあります。 出発材料由来の PCR 阻害物質には、ヘパリン(> 0.15 mg/mL)、ヘモグロビンなどのタンパク質(> 1 mg/mL)、多糖、クロロフィル、メラニン、フミン酸などがあります。核酸抽出段階で発生する不純物には、 SDS(> 0.01% w/v)、フェノール(> 0.2% w/v)、エタノール(> 1%)、プロテイナーゼ K、グアニジン、酢酸ナトリウム(> 5 mM)などがあります。
PCR 阻害物質の同定方法
紫外分光光度計、バイオアナライザー、あるいは Thermo Scientific™ NanoDrop™ 超微量分光光度計を用いて RNA サンプルを解析し、量および質を評価します。 高品質の RNA サンプルは、紫外分光光度計による A260/A280 の値が 2 に近い値になるはずです。 A260/A280 の値が 1.8 の場合、サンプル中に約 70~80%のタンパク質が存在する、つまり PCR および逆転写の両方を阻害するタンパク質が多く含まれていることが示唆されます。
阻害プロット: 検量線プロットからのリアルタイム PCR データを用いて、誤った結果を引き起こすような阻害が発生しているかを判断することが可能です。 阻害の特性を判断するのに使用される場合、こうした片対数の検量線は阻害プロットと呼ばれます。 「Guide to Performing Relative Quantitation of Gene Expression Using Real-Time Quantitative PCR」の RNA Preparation and Reverse Transcription の項目をご参照ください。
ソリューション
効率的な PCRを行うためには、PCR プライマーおよびプローブを最適に設計することが必須です。
Custom Applied Biosystems™ TaqMan® Gene Expression Assay の設計は、お客様よりご提供いただいたテンプレート配列に基づいて行います。 また、他のプログラムを用いてご自身のアッセイを設計いただいてから、オリゴヌクレオチド配列をお送りいただき、弊社で合成することも可能です。 PCR の失敗を回避するため、配列をご提出いただく前にお客様ご自身でバイオインフォマティクス解析を実施してください。
テンプレート配列のバイオインフォマティクス解析をどのように実施するのか理解するためには、Bioinformatic Evaluation of a Sequencece for Custom TaqMan Gene Expression Assays を参照してください。
バイオインフォマティクス解析は、3 つのタスクの遂行が可能です:
定期的に校正されたピペッターを用いた正確なピペッティングは、正確で精度の高いデータを取得するのに極めて重要です。 低容量のピペッティング(i.e., < 5 µl)は精度の低下に寄与します。ピペッターが低容量用に設計され、定期的に校正されていない限り、これ以下の量のピペッティングは推奨されません。 また、装置でランする前には、プレートを密閉して短時間の低速遠心でスピンダウンすることが推奨されます。 不正確なピペッティングから得られる結果を下表にリストアップします。
不正確なピペッティングから得られる結果
ピペッティングの問題点 | 結果 |
---|---|
サンプル: 同一レプリケートの不正確なピペッティング | 高い CT 標準偏差 |
スタンダード: スタンダードの不正確なピペッティング | 高い CT 標準偏差(同一レプリケート間), R2 値 < 0.99 |
スタンダード: 段階希釈のピペッティングにおいて一貫して過剰に希釈 (例:90 µL で希釈すべきところを 100 µL で希釈) | 良好な R2 値 ≥ 0.99 を示すこともあるが、検量線の傾きは不正確となり、アッセイの PCR 効率 は低いと認識される |
スタンダード: 段階希釈のピペッティングにおいて一貫して希釈が不十分(例:90 µL で希釈すべきところを 80 µL で希釈) | 良好な R2 値 ≥ 0.99 を示すこともあるが、検量線の傾きは不正確となり、アッセイの PCR 効率 は高いと認識される |
スタンダード: 段階希釈のピペッティングにおいて一貫してスタンダードサンプルが過剰(例:10 µL で希釈すべきところを 12 µL 添加) | 良好な R2 値 ≥ 0.99 を示すこともあるが、検量線の傾きは不正確となり、アッセイの PCR 効率 は高いと認識される |
スタンダード: 段階希釈のピペッティングにおいて一貫してスタンダードサンプルが不十分(例:8 µL で希釈すべきところを 10 µL 添加) | 良好な R2 値 ≥ 0.99 を示すこともあるが、検量線の傾きは不正確となり、アッセイの PCR 効率 は低いと認識される |
ソリューション
PCR を実施したら、PCR 産物を解析する必要があります。 その際、Auto CT 機能を使用して解析を行うことを推奨します。
NTC において増幅シグナルが検出されないか、あるいは無視できるか確認します。
検量線上の実験データポイントのアライメントについては検証する必要があります。 レプリケートの反復精度は高くなければなりません(レプリケート間で CT 値ができる限り近く、その差が 0.3 CT 以内であることが必要です)。 R2 値を使用して、結果の質を評価します。 — 値が 0.99 以上であると精度が高いということになります。 傾きは –3.32 に限りなく近づくことが必要です。
ベースラインが適切に設定されていることを確認します。 Auto CT 機能または Auto Baseline 機能を使用します。
異常値が排除されていることを確認します。
希釈系列間の ΔCT が小さい方へ外れている場合:
増幅曲線の最高濃度サンプルの示すポイントが予想されるより遅い CT 値を示すが、残りの増幅曲線は予想通りの場合、この希釈ポイントは反応の阻害を示す可能性があります(下図参照)。 この希釈ポイントを排除して反応効率を再解析します。 これは、通常、好ましい PCR 効率を上回ることになります(–2.9 という傾きは、望ましい傾きの上限 –3.3 を超えます)。
ターゲットである Exon 4 の段階希釈物 (1:10) を 2 反復で増幅しました。 濃度の高い上位2つの希釈系列間の Ct 値の差 ΔCT はわずか 2.8 サイクルで、サンプル中に PCR 阻害物質が存在することが示唆されます。 さらに 10 倍希釈された連続する希釈系列間の ΔCT は望ましい 3.3 サイクルに増えています。
希釈系列間の ΔCT が大きい方へ外れている場合:
10 倍希釈系列間の CT 値の差が 3.3 より大きい場合、通常、反応初期に存在しているコピー数が非常にわずかであることを示します。 これらの異常値は、通常、CT 値が 35 サイクル以上で見られ、傾きは増減します。 これらの確率的変動は、ポアソン分布、反応液の均一性、および/またはピペッティング技術によるもので、検出限界をもたらすことがあります。 スタンダードの標準偏差が ≥ 0.5 の場合に定量限界に到達するという見解もあります。
低コピー数のターゲットでは、CT 値の変動は大きくなります。 ターゲットが 10 コピー以上存在するとレプリケート間で一貫した CT 値が得られますが、ターゲットが 1 コピーしか存在しない場合はレプリケート間で CT 値にばらつきが見られます。
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.