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[ 夢見るサイエンスナイト!] 開催報告
ライフサイエンス研究者へ新しい出会いの場を提供する、NEXT FORUM。2014年は、「生命の根源に迫る最先端リサーチ」をテーマに東京・六本木のニコファーレで開催しました。第1部はゲノム編集、再生医学、がん研究のそれぞれの分野で活躍する研究者レクチャー、第2部は公募した研究者川柳コンテストや受賞作品の発表、第3部は若手を交えたトークセッション。MCとして出演した、ジャーナリストの津田大介氏とフリーキャスターの石田紗英子氏が、ニコ生中継ののべ2万5千人の視聴者からのコメントを拾いつつ、イベントを盛り上げました。
第1部
レクチャー「生命の根源に迫る最先端リサーチ」
トップバッターの山本卓氏の講演は、今注目のゲノム編集について。「この技術により、だれもが遺伝子改変ができる時代が到来し、今後のライフサイエンスのツールとして必要不可欠になるのは間違いありません。将来のノーベル賞候補の技術」と語ります。さらに使いやすいゲノム編集ツールや、遺伝子を効率よくノックインするシステムの開発など、自身の最新の研究を説明。「ウイルスからiPS細胞まで幅広く使え、さらに家畜の育種や抗体医薬などの医療分野での応用も期待されます」とその大きな可能性に言及しました。続いて登壇した谷口英樹氏は、昨年話題を呼んだiPS細胞からオリジナルな手法で肝臓を創る研究を紹介。谷口氏が目指すのは、「患者を救うために臓器をつくること」。機能に特化した細胞だけを創るのではなく、発想を転換して、iPS細胞から臓器を構成する複数の前駆細胞を分化させ、シャーレの中で共に培養することで三次元構造と肝臓機能を有する肝臓の元を創りだしました。今後、企業と連携しつつ進める、培養技術のロボット化など、新たな取り組みも紹介しました。最後の演者、藤田恭之氏は「誰もやっていない方法でがんを治すのが私の夢」と語り始めました。藤田氏が取り組む研究は、正常細胞とがん細胞との間に起こる相互作用、つまり細胞同士の「せめぎ合い」。正常細胞とがん細胞を100対1の割合で混ぜ、タイムラプスムービーで観察した動画が大画面に映し出されると、会場から感嘆の声が漏れました。この「細胞競合」と呼ばれる現象を利用して、新しい発想でがんという疾患に立ち向かいたいと、藤田氏は語ります。
第2部
研究者川柳コンテスト「川柳 in the ラボ 2014」
9月に募集した研究者川柳には、212人から1248句の応募がありました。次々と紹介されるユニークな作品に、会場は笑いに包まれました。ノミネート5作品のうち、ニコ生視聴者からの投票で人気作品賞に選ばれたのは「よし逃げろ 学会帰りの ボスが来た」。コメンテーターの藤田氏は、「学会帰りのボスはアイデアが活性化しているが、だいたい面白くない実験のアイデア。だからラボのメンバーは逃げようとなる」と笑います。講演者特別賞は、「発現を 制御できない 恋心」。優秀賞は、「だれかくれ モチベ増やせる プライマー」、「飲み会の あとはシメの 実験へ」、「妖怪の せいだと思うよ このデータ」の3作品。また、MC2人が選んだサイエンスナイト賞は「縁結び いつもしてます 動物の」でした。
第3部
サイエンスナイト セッション「夢から広げる生命科学」
最初に柴藤亮介氏が、クラウドファンディングによる研究費調達についてショートプレゼン。柴藤氏は、研究費をクラウドファンディングで調達するサービス「アカデミスト」を運営しています。「このファンディングが広がれば、国からの研究費だけに頼らず、だれもが直接自分の判断で研究者を支援でき、研究がオープンになると考えています」と夢を語りました。次に今村公紀氏が、iPS細胞を使った研究についてプレゼンしました。今村氏は「医療以外のiPS細胞の利用についても研究を広げたい」と言います。ひとつは、種の保存につなげるために、希少な動物のiPS細胞を冷凍保存する試み。もうひとつは霊長類のiPS細胞を比較した進化の研究と言います。最後は、出演者全員のトークセッション。「25歳の頃の夢は?」など6つの問いに5人がそれぞれ回答しました。「ゲノム編集やiPS細胞を使って改造するとしたらなにをしますか?」という問いには「頭髪」(山本氏)、「光合成」(藤田氏)などの回答が会場を沸かせました。一方「これからの生命科学研究に欲しい環境は?」という問いには、「研究、事務、教育の分業化」(今村氏)、「基礎研究への正当な評価」(藤田氏)など、現状の研究環境の課題を指摘する回答が相次ぎました。「生命科学で叶えたい夢とは?」という問いには、「ゲノム編集によるがん治療」(山本氏)、「瀕死の患者さんを助ける」(谷口氏)、「がんの新たな治療法確立」(藤田氏)。若手二人は「生命科学の総合大学」(今村氏)、「研究者版Gunosyをつくりたい」(柴藤氏)と意気込みを見せました。
2014年10月24日(金)18時より、ニコファーレにて
講演者
山本 卓 氏 (広島大学理学研究科教授)
谷口 英樹 氏 (横浜市立大学医学研究科教授)
藤田 恭之 氏 (北海道大学遺伝子病制御研究所教授)
ヤングプレゼンター
柴藤 亮介 氏 (株式会社エデュケーショナル・デザイン代表取締役社長)
今村 公紀 氏 (京都大学霊長類研究所助教)
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