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「いつ行く? どうする? 海外留学 Vol.3」
長谷川秀樹 氏 (国立感染症研究所感染病理部部長)
ニューヨークとダブリンへポスドクで留学した経験をもつ長谷川秀樹氏。現在は国立感染症研究所で、経鼻インフルエンザワクチンの開発、HTLV-1 感染を原因とする成人T細胞白血病リンパ腫の発症機序の解明やモデル動物の開発と、多忙な研究生活を送っています。留学して業績は出るの? 設備は日本より優れている?…そんな不安のある若者には「先を考えすぎないで、やりたいことにチャレンジするといい」とアドバイスします。
ロックフェラーでの刺激
大学院時代、恩師の勧めでロックフェラー大学へ留学するチャンスを得た長谷川氏。William W.Hall博士のラボで、HTLV-1の感染メカニズムの解明とトランスジェニックマウス開発に取り組みました。ロックフェラー大学には、毎週金曜の所内バー、ファカルティークラブでのハッピーアワーなど、学生も教授も気さくにサイエンスを語れる環境があります。長谷川氏もここで、レプチン遺伝子のJeffrey M.Friedman氏、樹状細胞のRalph Steinman氏、がんウイルスの花房秀三郎氏らと親交を結びました。「研究をドライブさせるのは“設備”ではなく“人”。ロックフェラーだとノーベル賞級の研究者が普通に歩いていて、講義を受けたり一緒に飲んだりできる。その刺激は、どんな設備の整った日本のラボにいても得られない」と語ります。
留学したのに結果が出ない
長谷川氏はその後、ボスと共にラボごとアイルランドへ移ります。試薬が届くのに1週間かかり、18時きっかりに仕事を終えギネスビールで乾杯というのんびりスタイルです。合わせて2年半、どちらの国の生活も楽しみましたが、肝心の研究では際立った成果がでなかったとか。「研究では焦りが先行し、うつうつとしていました。ボスはディスカッション重視でやり方を任せるタイプ。おかげでプロジェクトの歯車ではなく、自分で考えアイデアを試す習慣が身につきました」。
帰国後にHTLV-1研究を再開
帰国のきっかけは感染研にポジションを得たこと。日本では悔しさをバネにHTLV-1感染症モデルのトランスジェニックマウスを作り直し、10年越しで成果をまとめNature Medicine誌にHall博士との共著で発表します。留学中の研究をひきずるなという意見もありますが長谷川氏はその逆。新しく始めたインフルエンザ研究と共に、新旧2つのテーマを両輪に帰国後の研究を軌道にのせていきました。
世界を歩く
英語は研究のコミュニケーションツールという長谷川氏。Hall博士との縁でGlobal Virus Networkの日本代表にもなり、世界のウイルス研究を推進しています。留学で得た数々の出会いが、いまの活躍につながっているのです。
長谷川秀樹 氏
1967年埼玉県生まれ。1993年北海道大学医学部卒業、1997年北海道大学大学院医学研究科博士課程修了。1995年~1997年に米国ロックフェラー大学、アイルランドのユニバーシティー・カレッジ・ダブリンで、William W.Hall博士のもと研究(ポスドク)。1997年より国立感染症研究所感染病理部研究員、2011年より現職。
参考
Hasegawa H et.al. Development of Thymus-Derived T-cell Leukemia/Lymphoma in MiceTransgenic for the Tax gene of Human T-Lymphotropic Virus Type-I (HTLV-I). Nature Medicine2006 Apr;12(4):466-472.Hasegawa H et.al. Development of a mucosal vaccine for influenza viruses: preparation for apotential influenza pandemic. Expert Review of Vaccines, April 2007, Vol. 6, No. 2, 193-201.
関連リンク