エキソソーム: 限りない可能性を秘めた微小胞

エキソソームは、様々な種類の培養細胞から分泌される小型膜小胞として発見され、近年、ほとんどの種類の体液中に含まれることが明らかになってきました。この小胞は、特別なmiRNAやmRNA、そしてタンパク質を運び、幅広い生物学的機能を持つと考えられていますが、未だにわずかな知見しか得られていません。それでもエキソソームは、私たちの体の中で細胞間コミュニケーションや何らかのシグナル伝達を担うことから、幅広い分野で科学的興味が高まり、例えば機能解析を基に診断や治療法開発へつながることが期待されています。特にここ3年の間に、日本や欧米の先進的な研究機関は、エキソソームに関する多くの研究プロジェクトを開始しました。そしてエキソソームが、がんの進行や幹細胞の治療効果を高める鍵となることが確認されつつあります。また、エキソソーム中の分子を解析することは、生検(バイオプシー)に替わる優れた手法として、近い将来、最も侵襲性の低い診断方法につながる可能性があります。現在、エキソソームの機能解析の論文数は1,000報を超え、大手製薬企業もエキソソーム研究に大きな投資を行っています。 この様な背景から、多くの研究コミュニティはエキソソームの単離方法や含有物の解析に対する簡単で迅速な方法を強く待ち望んでいました。この要望に応えるため、ライフテクノロジーズは、エキソソーム研究に対する一連のワークフロー(図1)を開発しました。そのフローは、下記3つのステップからなります。

図1. エキソソーム研究のトータルワークフロー

[ステップ1] Total Exosome Isolation試薬を用いた、血清、血漿、尿、脳脊髄液、羊水、腹水、母乳、唾液、および細胞培養上清からの迅速かつ効率的なエキソソーム回収
[ステップ2] Total Exosome RNA & Protein Isolation Kitによるエキソソーム の精製
[ステップ3] エキソソーム中のmRNA、miRNA、その他のノンコーディングRNAの含量や特性をIon PGM™やIon Proton™シーケンサ、及びTaqMan®アッセイによるリアルタイムRT-PCRで解析


図2. RNAシーケンシングの結果HeLa細胞の培養上清、ヒト血清や尿から単離したエキソソーム中のRNAを解析

代表的なデータ解析例を図2に示します。エキソソームは、HeLa細胞の培養上清、健康なヒトの血清および尿から抽出しました。Ion PGM™システムを使ったシーケンシングから、エキソソームには多種類のRNAが存在すること、特に血清中のエキソソームにはmiRNAが高レベルで存在することが明らかになりました。さらに注意深くmiRNAの解析を進め、エキソソームのマーカーとして有望なセットを同定しました。 さらにCD63陽性エキソソームの単離など、抗体をベースにしたサブタイプ用の単離試薬も提供しています(図1)。 またエキソソーム中のRNAやその膜を迅速に蛍光標識する試薬やスピンカラムも提供中です。これらはエキソソームの機能や作用機序を理解するためにinvitroやinvivoで挙動追跡のために使用します(図3)。

 

図3. 2種類の蛍光試薬でラベルしたエキソソームを取り込んだ細胞
SYTO® RNASelect™

HeLa細胞にSYTO® RNASelect™で
ラベルしたエキソソームを加え、取り込ませた。
(40x 画像)
三重染色:
赤 =phalloidin
青=DAPI
緑=Syto® RNASelect™
BODIPY® TR

HeLa細胞にBODIPY® TRでラベルした
エキソソームを加え、取り込ませた。
( 40x 画像)
三重染色:
緑 =phalloidin
青=DAPI
赤= BODIPY® TR

私たちライフテクノロジーズは、今後もエキソソーム研究のあらゆるニーズに応える製品を開発提供する予定です。これまでに11種類のエキソソーム解析用製品を発売しており、2014年以降も新製品を提供すべく準備を進めています。また新規情報やアプリケーションノートは下記URLで随時公開しています。

Alexander “Sasha” Vlassov (ライフテクノロジーズR&Dシニアサイエンティスト)
ライフテクノロジーズのR&D部門のシニアサイエンティストであり、グループリーダー。活動拠点は、アメリカ・テキサス州オースチンのAmbion。 現在、彼のチームは、エキソソーム研究用試薬や血液等の臨床サンプルからの核酸の単離手法にフォーカスして研究開発を進めている


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