BigDye® Direct Kitで解読塩基数1000bp超え

ご所属:琉球大学大学院 理工学研究科 海洋自然科学専攻 分子生理学研究室(大瀧研究室)
ユーザー:平良 渉 さん

Q1. ご研究内容とシーケンス解析の利用方法について教えてください。
チョウの同種内・近縁種内の遺伝的多様性に関する分子系統解析にシーケンシングを用いています。

Q2. BigDye® Direct Kitを使用してみてのご感想は?
BigDye® Direct Kit用い、3500xL Genetic Analyzerで解析すると、実験を始めて5時間後にはキャピラリ電気泳動の波形を確認することができました。どちらも初めて使用しましたが、アガロースゲルでバンドを確認するのと同じくらい簡単な作業でした。これだけ簡単な作業であれば、オペレーターの方にお任せしなくても自分独りでできそうです。

Q3. これまで、きれいな波形が得られず、苦労されていたようですね?
私の扱う試料では、ミトコンドリアのシーケンシングでもPCR産物をダイレクトに解析すると、ノイズが多く不明瞭なデータになっていました(図1a)。そのため、プラスミドを用いてクローニングし、シーケンシングを行っていました。その結果、きれいなデータは得られていました(図1b)が、一つの検体の解析に数日を要していました。今後、ヘテロの確認をするために、さらに複数のクローンを解析する必要がありましたが、多検体になることで手間とコストを懸念しておりました。しかしながら、今回のように一度のダイレクトシーケンシングでノイズの低い高品質なデータ(図1c)を得ることができると、ヘテロの確認も容易で大変実験が効率的になります。

Q4. 今回、1000 bpのアンプリコンのシーケンシングを試して頂きましたが…
キットのプロトコルは700bp以下のアンプリコンに最適化されていたので、PCR反応の伸長時間を標準の45秒から、1分15秒に増やして増幅を試みました。その結果、約1000bpのアンプリコンを増幅することに成功し、3500xL Genetic Analyzerのスタンダードモードで電気泳動することで、1000bpを超えるシーケンスデータが得られました(図2)。

Q5. 今後、ご研究の中でキャピラリシーケンサをどのように活用される予定ですか?
今後、キャピラリシーケンサを利用してAFLP法も行っていく予定です。よりゲノムワイドにサンプル間の違いを比較し、詳細に系統解析を実施する予定です。

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【図1】
a :上段 従来のダイレクトシーケンシングデータ
b :中段 プラスミドのシーケンシングデータ
c :下段 BigDye® Direct Kitのシーケンシングデータ
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【図2】
QV20以上が1000bpを超えるBigDye® Direct Kitのシーケンシングデータ

平良さんは、簡単な手順で高品質なデータが得られ、大変満足されていたようです。貴重なご意見をありがとうございました。
(インタビュアー:フィールドアプリケーションサイエンティスト 近藤 真人)

※BigDye® Direct Cycle Sequencing Kitは、700bp以下のアンプリコンの増幅に最適化されております。
この記事は1000bpのシーケンシング解析を保証するものではありません。


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