東京都健康長寿医療センター研究所 老化制御研究チーム 健康長寿ゲノム探索
田中 雅嗣 先生、福 典之 先生

「田中先生は長年ミトコンドリアゲノムについて研究されていますが、今まではどのような手法を使われていましたか?」

初期にはガラス板を使った蛍光シーケンサ(ABI PRISM 373)を使いましたが、キャピラリシーケンサ(ABI Prism 310と3130xl)を使い、約900人のmtDNAの全塩基配列を決定しました。現在、mtDNA多型の大規模関連解析と61種のmtDNA病因変異のスクリーニングには、蛍光ビーズ法(Luminex 100)を用いています。

 

 

「キャピラリシーケンサやマイクロアレイに対比して、PGMにはどのようなことを期待されますか?」

キャピラリシーケンサのデータをSequencherで分析しますが、ヒトの眼で変異を確認する必要があります。またノイズの多い部分を削除するなどの手作業も必須です。PGMからのoutputはデジタルであるので、適当なフィルターを整備すれば、mtDNAの多型と病因変異の自動抽出が可能になります。1人のmtDNAの全塩基配列をSanger法で決定する費用は約1万円になっていますので、PGMでのシークエンスもより安価に実施できるようになることを期待します。

「今回PGMを使ってどのような事が明らかになったのでしょうか?」

ミトコンドリア病の患者さんのミトコンドリアゲノムをPGMで解析した結果をweb site (HaploGrep)にuploadすると、ハプログループを特定できました。同時にglobal private mutationとして病因変異の候補を得ることができました。この変異部位ではヘテロプラスミーが検出されていることと、重要な遺伝子のコード領域上で哺乳類において高度に保存されているので、新規の病因変異である可能性が高く、今後検証して行きます。

「PGMの取り扱いやデータ解析で苦労されていることはありますか?」

PGMはinsertion/deletionの判断が困難であると想像していましたが、結果の信頼性は高いと思います。mtDNAの挿入欠失多型は、法医学的な個人識別に利用される特定の部分(D-loop region)などに集中します。Sanger法でもlength polymorphismは分析しにくいので、ハプログループ解析のためにこれらの領域を除外しています。これらの分析自動化を目指したいと考えます。

「PGMについて、どのように評価されていますか?」

mtDNA全領域の塩基置換が、自動で抽出できるのは魅力的です。私はIon Torrentに惚れ込んでいます。ヒトのexomeをPGMで早く分析できるようになると良いと期待しています。

「今後PGMの導入を検討されている研究者の方にアドバイスやメッセージはございますか?」

増幅されたDNA断片のre-sequencingにおいては、PCR productsを均等に混合することが重要だと思います。


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