国立がん研究センター研究所 エピゲノム解析分野
丹羽 透 先生、牛島 俊和 先生

「Ion PGM システムを導入され、これまでのキャピラリシーケンサからどのようにシーケンシングが変化されましたか」
これまでは、がん組織に対し、特定のがん関連遺伝子の中の限られた変異を標的にシーケンシングを行っていました。本来であれば、複数のエクソンや多岐に渡るがん関連遺伝子についてシーケンシングを行いたかったのですが、多くの検体を扱うには、手間やコスト面から標的を絞らざるを得ませんでした。それがIon PGM シーケンサにより、これまで非現実的だった標的数を比較的コストを抑えながら実施できるようになりました。

 

 

「AmpliSeq Cancer Panel Kitはどのような目的にお使いですか」
私たちの研究室では、がんおよび非がん部におけるDNAメチル化解析を初めとしたエピゲノム解析を中心に行っています。AmpliSeq Cancer Panel Kitを用いることで、網羅的に遺伝子の変異情報を得られることから、がんにおける遺伝子変異とエピゲノム変化の関連について解析を進めています。

「実際にAmpliSeq Cancer Panel Kitをお使いいただいていかがでしたか」
200近い領域を1チューブのPCRで増幅し、それを一度にシーケンスするなど、キャピラリシーケンサでは実現不可能な実験でしたので、夢のようです。たしかに、ターゲットによっては、増幅(カバレージ)が良くないところがあります。しかし、平均カバレージが大変高い( x 1,000以上)ので、そのような領域でも x100前後は確保できており、基本的にはカタログ・スペックどおりの性能を発揮できていると思います。実験手技的にも難しいところはなく、がんの変異解析を大きく変える画期的な製品と思います。

「解析で工夫されたことはありますか」
キットに含まれていないような領域をターゲットとするプライマーをプラスアルファで追加して解析を行っています。プライマーの追加により、キットでカバーされている領域の増幅が変化しますが、概ね大きな影響を受けずにシーケンスができています。また、キットでカバーされている領域で著しく増幅が悪い領域には、新たなプライマーをデザインすることでカバレージを上げるなどの工夫を行っています。

「今後、AmpliSeq テクノロジーにはどのようなことを期待されますか」
ウェットの面では、100bpのリード長では、ラストエクソンのような長い領域が一度に読めませんので、より長いリード長がほしいです。ペアエンドシーケンスにも期待をしています。ドライの面では、dbSNP、COSMICのデータベースと連動した結果の出力ができることを期待しています。

「今後、Ion PGM をどのように活用されたいですか」
AmpliSeq Cancer Panel Kitがマルチプレックス(バーコードアダプター)対応になりましたので、まずは、Ion 316 チップでバーコードアダプターを使用し、多検体を処理したいと思います。次に、我々は、エピゲノム解析が研究の主体ですので、ChIP-Seqなども、Ion PGMを用いて行う予定です。また、バイサルファイトシーケンシングにも、Ion PGMを用いていきたいです。

※AmpliSeq(TM) Cancer Panel Kit:
がん関連の46遺伝子に対し、190アンプリコンを1チューブでマルチプレックスPCR増幅し、シーケンシングするキット。
739の変異箇所のジェノタイピングに対応。


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