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独立行政法人 理化学研究所 生命分子システム基盤研究領域
核酸合成生物学研究チーム 平尾 一郎 先生、木本 路子 先生
理化学研究所の核酸合成生物学研究チームは、平尾一郎チームリーダーのもと、生物進化の解明や新しい発想の診断・医薬品開発につながる「人工塩基」の研究を行っています。地球上のすべての生物の遺伝情報を担う、A,T,C,Gという4種類の「天然」塩基。「人工塩基」の研究は、どのような可能性を秘めているのでしょうか?
新しい研究分野として注目される人工塩基研究と、その研究における半導体PGMシーケンサの活用について、核酸合成生物学研究チームの木本研究員に話を伺いました。
インタビュアー:フィールドアプリケーションサイエンティスト 近藤 真人
「どのような研究目的にシーケンシングを用いていますか」
in vitroセレクション法を使って、ランダムなDNAライブラリからより強く結合するDNAアプタマーを探索する目的にシーケンシングを利用しています。我々は、複製、転写、翻訳で機能する人工塩基対の開発、そして、その人工塩基対を利用して遺伝情報を拡張した技術の開発・応用を行っています。特にin vitroセレクション法によるDNAアプタマーの探索では、天然のA-T、G-C塩基対に加えて、第3の組み合わせとなる人工塩基対を組み込んでいます。そうすることで、より高機能でバラエティに富んだDNAアプタマーを創出することができます。例えば、5つの連続塩基であれば、組み合わせは4の5乗で1024通りになります。ここに人工塩基を一つ加えると、5の5乗で3125通り。人工塩基対で利用してさらにもう一つ加えると、6の5乗で7776通りに膨れ上がります。実際の実験では、もっと長いDNA鎖を用いるので、組み合わせはさらに膨大になります。これまでは、in vitroセレクション法で得られたDNAアプタマーをPCRで増幅し、そのDNA断片をクローニングし、得られたプラスミドを一つ一つ蛍光シーケンサで解析していました。
「これまでの蛍光シーケンシングにはどのような課題がありましたか」
私たちの人工塩基対を用いた研究では、塩基配列の組み合わせが大幅に増えるので、一度にできるだけたくさんのクローンを解析する必要があります。したがって、クローニングからシーケンサ解析までの作業を効率化することが急務でした。3500 Genetic AnalyzerとBigDyeR Direct Kitでコロニーシーケンスにトライしたこともありました。大腸菌からプラスミドを抽出するステップが省略されましたので、確かに作業は大幅に簡便化されましたが、大腸菌へのクローニングは必要であること、一日におよそ40~50クローンを読み取るとしても、もっと多くのクローン数をこなすには限界がある、という課題が残りました。だからといって、5500xL SOLiD システムのようなハイスループットの次世代シーケンサでは、データ量が多すぎて手に負えなくなってしまうかも、とも感じていました。そこで我々の研究室に新たに登場したのがIon PGM™ シーケンサです。
「Ion PGM™ を導入され、作業は効率化されましたか」
大幅に効率化されました。半導体チップのIon 314™ ChipにDNAフラグメントが結合したビーズをローディングすると、10万本程度のビーズからデータが回収できます。1本のビーズから読み取られるシーケンスの長さも100bpとちょうどよく、我々の実験にぴったりフィットしました。解析対象となるクローン数は数千から数万に相当し、まるで大腸菌の白いコロニーをすべてシーケンシングしたような感じです。PCRとクローニングでシーケンシングをしていた時は、100クローン程のデータを得るのに3日は要していたのが、Ion PGM™ では、ライブラリの作製から数万のクローンに相当するデータの解析まで1.5日程度で完了し、研究が速やかに進んでいます。たくさんのチューブを扱わずに済むこともスピードアップにつながっていますし、シーケンシングのランは1.5時間であっという間に終わってしまいます。2サンプル連続でかけることが多いですので、OneTouchシステムを2台用意しておくと更に効率化できるかもしれません。
「Ion PGM™ はどのような点で研究に貢献していますか?」
シーケンシング作業のスピードアップと得られる配列データ量が私たちの研究にフィットしている点に大変満足しています。
「研究の成果を教えてもらえますか?」
早速、数万コロニーに匹敵するシーケンシングを1つのChipで処理できるIon PGM™の使用によって、人工塩基が組み込まれたDNAアプタマーとして、標的の分子にかなり強く結合する配列を迅速に同定できました。今後はさらに診断・医薬品開発にも応用していきたいと考えています。
「さらにIon PGM™ を活用するには何が必要だと思いますか?」
研究を進めるにつれ、よりたくさんのデータを扱うことが予想されます。現在扱っているデータはそれほど多くないため、目的の配列を揃えて抽出する作業をエクセルベースで行っています。今後、大量のデータ処理ができ、我々の研究目的でも使用可能なツールが必要となるでしょう。Ion Communityには、解析ツールを集めたプラグインストアができているようなので、今後、より解析がスムーズにできるようなツールが開発されることを期待しています。
研究用にのみ使用できます。診断目的およびその手続き上での使用は出来ません。
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