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鈴木 英明 氏( 東京慈恵会医科大学解剖学講座 講師)
先天性異常は、臨床所見だけでは判断がつかない症例も多く、疾患と関連する遺伝子変異を特定し病態を正しく理解することが重要となります。鈴木氏は、これまで症例検体から遺伝子配列を次世代シーケンサで解析し、候補遺伝子を絞り込むアプローチを行ってきました。今後、その情報を基にゲノム編集で変異を導入した細胞やモデル生物を作製し、その解析を通して疾患発症の原因や治療へ役立てようとしています。
CRISPRによるゲノム編集とその評価
ゲノム編集の方法には、ZFNやTALENがありますが、昨年初めにCRISPRが登場すると、鈴木氏はターゲット遺伝子のデザインの簡便さや実験手法の容易さに注目。すぐに試してみることに。「ただしCRISPRにはオフターゲットの心配がありました。そこでまずは実際のオンターゲットとオフターゲットの割合をきちんと評価しようと思ったのです」。ここで使用したのがIonAmpliSeq™ テクノロジーとIon PGM™ シーケンサ。鈴木氏は、CRISPRシステムで2遺伝子の4か所をターゲットに作製したコンストラクトのそれぞれをヒト細胞に導入し、その4細胞群でオンターゲットとオフターゲットを調べることにしました。実際の解析個所は、4つのターゲット配列及びターゲット配列に3塩基以内のミスマッチで類似する領域の合計40カ所です。「IonAmpliSeq™ テクノロジーで40領域をマルチプレックスPCRで一度に増幅し、ライブラリー調製後、Ion PGM™ シーケンサで40領域すべてを一度にシーケンス、付属ソフトウェアで解析しました。細胞へコンストラクト導入からオフターゲット評価まで1週間以内で終了できました」と話します。
検証結果と今後の活用について
「その結果、4つのコンストラクトにおいて、全体の30~60%の細胞で目的部位の欠失を確認、0~3%の割合でオフターゲットの欠失を検出しました」と鈴木氏。「思ったよりもオフターゲットがありましたね」とコメントします。「この結果を基に短期間でゲノム編集可能なCRISPRや、正確性の高いTALENというゲノム編集ツールを使い分けていきたい」と話します。