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水野 満 氏( 東京医科歯科大学 再生医療研究センター 研究員)
自然治癒力の低い軟骨・半月板再生の細胞源として期待される滑膜間葉系幹細胞。東京医科歯科大学再生医療研究センターの関矢一郎センター長らは、15年ほど前より滑膜幹細胞を活用した再生医療の実現に取り組んでいます。関矢氏はこれまでの研究から、滑膜幹細胞が非常に高い軟骨分化能および増殖能を有し、軟骨や半月板の再生に有用であることを明らかとしました。滑膜幹細胞の利用は、正常な軟骨組織を犠牲にせずに、充分な細胞数を確保できるという利点もあり、低侵襲な治療法の実現が可能です。現在、マイクロミニピッグをはじめとする動物モデルによる基礎研究から、ヒト滑膜幹細胞を関節鏡下で自家移植する臨床研究まで、幅広い研究を展開中です。関矢氏の厚い信頼のもと、滑膜幹細胞を用いた臨床研究を牽引する水野満氏にお話を伺いました。
EVOS XL Core Imaging Systemでパソコンを使えない環境にも対応
「軟骨や半月板を損傷した患者さんから、手術時に得られた滑膜を自己血清で培養し、滑膜幹細胞を自家移植する臨床研究を進めています。体外で増殖させた滑膜幹細胞を損傷部位に移植することで、本来の治癒力を強化し修復を促進する試みです」と研究のポイントを説明します。「細胞の管理から移植までに約30人が関わっています。私はそのうち、製造チームとして滑膜組織から幹細胞を分離・培養し、2週間後に滑膜幹細胞を臨床チームへ渡すところまでが担当」と続けます。東京医科歯科大学医学部附属病院には、細胞治療・再生医療を支援する最新鋭の細胞培養加工施設(Cell Processing Facility; CPF)が設置されています。清浄度維持のため、CPF内では微粒子数を基準値以下に保つ必要がありますが、PCの冷却ファンによって微粒子が拡散することが問題となっていました。「これまで、CPF内で培養する細胞を顕微鏡で撮影できずにいました。しかしInvitrogen™ EVOS™ XL Core Imaging SystemはPCが不要で、データはUSBで持ち出せるため、私たちの利用方法に合致していました」と水野氏。従来の顕微鏡より使い方もシンプルで、楽だといいます。「アルコールを使って念入りに消毒しても問題なく使用できる丈夫な設計にも満足しています。モニターを使って皆で観察できる点も便利ですね。客観的な情報を共有でき、安心感が増しました」。
医療従事者として研究者が関わる時代に
獣医師免許を取得後、医科大学の大学院で基礎研究を開始した水野氏。日本再生医療学会で自身の研究を発表した際に、関矢氏に出会い、それが現在の研究室での新たなスタートを切るきっかけとなりました。「これまでの医療ではスタンダードとは言えなかった細胞培養技術が、目まぐるしい勢いで再生医療における臨床研究の基盤技術となってきていると感じています。近い将来、多くの基礎研究者が医療従事者の一員として再生医療の現場に参加する時代が来るのかもしれません」。基礎研究と臨床研究を結び、2つの視点から治療成果の向上を期待する新たな移植技術の開発も研究中だと語る水野氏。ゆくゆくは現在取り組む研究テーマを再生医療の一つとして普及させていきたいと意気込みを語ります。