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藤田 貢 氏(近畿大学医学部細菌学教室准教授)
第4の悪性腫瘍治療法として期待される免疫療法。なかでも近年は免疫抑制性分子を標的とした治療法が奏功し、世界的に大きな話題となっています。その潮流の中、免疫抑制性細胞の制御を切り口に、がん治療のトランスレーショナル研究を進める近畿大学医学部の藤田貢氏。インターフェロンをはじめとする腫瘍関連サイトカインおよび免疫細胞の解析や、腫瘍細胞を駆逐しうる有力な細胞や分子を探索しています。細胞解析にはInvitrogen™ Attune™ Acoustic Focusing Cytometerを活用し、効率的に研究を進める藤田氏にお話を伺いました。
フローサイトメーターで細胞解析
藤田氏らの研究グループは、悪性腫瘍患者から得た腫瘍組織や血液から細胞を抽出し、フローサイトメーターで解析しています。健常者にみられる細胞との違いや治療前後での変化を解析したり、これまで培ってきた作業仮説に基づく新規免疫治療をマウス等の実験動物に施して抗腫瘍効果を検証することで、新規治療法の開発に向け一歩一歩前進しています。
ストレスフリーで研究に集中
藤田氏は所属研究室にAttune Acoust ic Focusing Cytometerを自ら設置し、必要に応じて適宜解析することができるヘビーユーザーのひとりです。「足掛け2年程継続使用してきましたが、これまで一度も流路が詰まったことがありません。これまで使用してきた他社製フローサイトメーターは起動・終了にかかるお作法も多く、その割にしばしば流路詰まりを経験しました。脳腫瘍サンプルを扱う場合、比重分離法によるサンプル調製から染色に至るまでに数時間要します。しかも貴重な臨床サンプルを使う場合も多く、そのプレッシャーを感じる中でのメカニカルトラブルはストレス大きかったですね」と語ります。Attuneシステムは、超音波により流路内で細胞を一列に整列させる、アコースティックフォーカシング技術を検出部に採用し、流路を狭めずに高流量で精度の高い細胞解析を行えます。「また、オートサンプラーを併設したので、96ウェルマイクロプレートにサンプルを準備すれば最小限の操作で自動測定が可能であり、極めて生産的ですね。フットプリント(占有面積)もデスクトップに設置できる程度で、近くに事務処理用のスペースを設けて他業務と平行して作業を進めることができ、大変有用に感じています」と続けます。
免疫抑制に関する分子を制御することで、脳へのがん転移を阻止できないか?
細胞解析を順調に進める藤田氏が最近注目する分子は、HMGB1という炎症を引き起こすタンパク質。「悪性腫瘍は細胞増殖が活発であるが故に死滅する細胞頻度も高く、それらがHMGB1と呼ばれる分子を大量に放出します。HMGB1は腫瘍微小環境における免疫系を抑制し、腫瘍増殖の勢いをさらに高めます。このような因子を制御できれば脳腫瘍発生を抑えられるかもしれません。特にがん患者さんの場合、脳転移の存在は臨床的には末期症状とされます。しかし余命を指標とした病期以上に患者さんの神経学的QOLへの影響は大きく、それ故に何としてでも脳だけは守りたいのです」。脳神経外科医・脳腫瘍医としての経験に、腫瘍免疫学研究者としての知見を総合してトランスレーショナル研究に取り組む藤田氏。目指す先は、悪性腫瘍に由来する免疫抑制を解除した上で、腫瘍に対する傷害活性をもつ免疫細胞を体外で増やし、患者へ投与する細胞性免疫療法です。研究に集中できる環境を整え、今後さらに研究を加速させていきます。