シングルセルレベルでの経時観察とエンドポイントアッセイが両方できるスグレモノ

須賀圭 氏(杏林大学医学部細胞生理学教室・講師)

ラット海馬神経細胞のアポトーシスの動画を説明しつつ、CellEvent®試薬について須賀氏は、タイトルのようにコメントしました。須賀氏は、Syntaxin(Syx)ファミリーの中でも、主に小胞体からゴルジ体にかけて局在し、小胞輸送に関与するSyx5を研究中。これまでにアルツハイマー病関連タンパク質の細胞内輸送における役割を調べ、家族性アルツハイマー病の原因遺伝子の一つであるPresenilin(PS)と結合していることを発見。さらにアミロイドβ(Aβ)ペプチド量が亢進している病態に関連するPSΔE9変異体とは結合量が減少し、Syx5の過剰発現がAβの分泌抑制、細胞内におけるアミロイド前駆体タンパク(βAPP)の蓄積を引き起こすことを明らかにしました(1)。神経変性疾患では、異常なタンパク質の蓄積などにより細胞にストレスがかかります。


須賀氏は、新たにストレスによる神経細胞死とSyx5の関係を解析中。「組織から取ってきた神経系の初代細胞には、様々なニューロンやグリア細胞が混在しているので、個々の細胞を区別して観察できるCellEvent®試薬は感度も高く、便利です。しかも数日間、タイムラプスで追跡しても、アポトーシス後の細胞の蛍光が消失しないので、エンドポ イントでの定量もできます。もちろん長期の神経細胞培養に適したB-27™サプリメントも使っていますよ。さらにアポトーシス以外にも、エンドサイトーシスや活性酸素の測定も、pHrodo™やCell ROX®試薬で解析予定です」と語ります。細胞内輸送システムに関与するSyx5の詳細な研究から、神経変性疾患の謎が明らかにされることが期待されます。

参考文献

  1. 参考文献(1):Syntaxin 5 specifically interacts with presenilin holoproteins, and affects processing of β APP in neuronal cells Suga K. et.al J. Neurochem. 94: 425-439(2005)


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