iPS細胞用完全合成培地 Essential 8™ とビトロネクチンを検証中!

福角勇人 氏( 大阪医療センター臨床研究センター先進医療研究開発部)

■ フィーダーフリー培養への移行
「iPS 細胞をフィーダー培養からフィーダーフリー培養へ移行するときは、ちょっと気を使うんですよ。未分化の状態をうまく維持できるかどうか心配で…」。こう語るのは、再生医療研究室の福角氏。福角氏は室長の金村米博氏とともに、iPS細胞の安定的な培養技術の開発に取り組んでいます。「先月、Gibco®のEssential 8™ 培地とビトロネクチン(VTN-N)を試したところ、コロニーや細胞の形状も変化せず、未分化のまま培養できました(写真参照)」と続けます。以前、フィーダーフリー培地への移行に苦労したこともあったので、スムーズな移行を少し意外に感じたそうです。

■ フィーダーフリー培養は、なぜ必要とされるのか?
「これまでヒトES/iPS細胞の樹立/維持培養では、マウス繊維芽細胞とのフィーダー培養がもっとも安定的だとされてきました。最近、私たちはフィーダーフリー培養でもiPS細胞を安定に樹立/維持する方法を開発しました(1)。今後、臨床応用を目指すのであれば異種動物由来成分の除去が、ドラッグスクリーニングであればiPS以外の 細胞の共存を避け、自動化することが望まれます」とフィーダーフリー培養のニーズを指摘します。そして「VTN-Nは室温でコーティングでき、価格的にも安心なので、気兼ねなく開発や検証に使用できそうです」とコメントします。

■ 今後の課題
「すでにこの条件で数回継代し、形態的に未分化状態を維持することを確認しました。今後、数十回の継代を経てもこの状態を維持できるか、遺伝子発現も確認しつつ検証できればと思います。そしてこの系をiPS 細胞の樹立にも試してみたいですね」と福角氏。iPS細胞の安定な培養技術は、臨床や創薬だけでなく、広く基礎研究の発展にも寄与します。再現性の高いiPS細胞実験に欠 かせない、福角氏ら技術開発の進展に期待が高まります。


参考文献

  1. 参考文献(1):Feeder-free generation and longterm culture of human induced pluripotent stem cells using Pericellular Matrix of Decidua derived Mesenchymal cells Fukusumi, H. et.al PLoS ONE(in press)


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