微細藻類の有用性と活用法

倉橋みどり 氏 ( 東京大学生物生産工学研究センター寄付研究部門 「藻と深層水によるエネルギーと新産業創生」 特任准教授)

理想の装置に出会えた

「藻類の生育を見るのに、Tali®サイトメーターは欠かせないんですよね」と開口一番に語ってくれたのは、東京大学の倉橋みどり氏。倉橋氏は、微細藻類と海洋深層水によるバイオマスエネルギーを開発し、実用化を目指しています。

植物プランクトンとも呼ばれる微細藻類とは、顕微鏡サイズの藻のこと。倉橋氏は、Ta l i®イメージベースサイトメーターを使って、この小さな植物の細胞数や生存率を測定しています。「他の装置では、藻類以外の混濁物を測定してしまったり、値がばらついたりして満足のいくものがありませんでした。でも、Tali®サイトメーターは、細胞だけを計測し、ばらつきも少ないです。やっと理想の装置に出会えました」。


「勝てる」エネルギーをつくり出す


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海水中の微細藻類の生存数のグラフESWは濃縮表層水、EDSWは濃縮海洋深層水を示す。(データ提供: 倉橋氏)
微細藻類は 太陽エネルギーと二酸化炭素や無機塩類を使って増殖し、海や川などあらゆる場所で生息しています。この植物は、効率よくエネルギーをつくり出すバイオマス資源として期待されています。「培養が容易な微細藻類を使って、勝てるバイオマスエネルギーを開発したいんです」と倉橋氏は熱く語ります。「勝てる」とは、経済収支とエネルギー収支が見合うということ。微細藻類を増殖させ、エネルギーを得ても、コストがかったり、他のエネルギーをたくさん使ったりしていては、実用化はできません。

そこで、倉橋氏が注目したのが海洋深層水。水深200mもの深海から採取する海洋深層水は、きれいな上に、ミネラルなどの栄養分や栄養塩類が豊富に含まれていて、まさに「天然の培養液」なのです。「コストをかけずに微細藻類を培養するには、太陽エネルギーの豊富な乾燥した土漠に屋外池をつくり、海洋深層水を引き込んで行うのが一番効率がよい」と倉橋氏。海水を濃縮して塩分に強い目的の藻類以外の微生物の生育を防いだり、低温の深層水を利用して温度差発電ができるというメリットもあります。

微量な蛍光を測定できる

倉橋氏は、微細藻類が自ら出す蛍光を測定しています。「Tali®サイトメーターは、微量な蛍光を測定できるうえに、蛍光強度も測れるので、細胞の活きの良さもわかります。しかもマニュアルの推奨濃度よりも薄い細胞液でも十分に測定できていますよ」と隠し技(?)を教えてくれました。地球の未来のためにバイオマスエネルギーへの期待はは高まるばかりです。実用化を目指して、倉橋氏の東奔西走する日々が続きます。


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