GeneArt® Strings™ DNA FragmentsとGeneArt® Seamless Cloning and Assembly Enzyme Mixのコンビネーションで研究をスピードアップ
吉村成弘 氏(京都大学大学院生命科学研究科分子情報解析学分野 准教授)
「主な解析対象は数百ベースなので、クローニング済みの人工遺伝子よりも、2週間で届くDNAフラグメント合成サービスを利用するようになりましたね」と、京都大学の吉村成弘氏(写真右上)はGeneArt®Strings™ DNA Fragmentsについて語ります。吉村氏の研究テーマは、核膜孔を介する物質輸送。タンパク質や核酸の細胞内局在の制御に重要な役割を果たす、このシステムの全容を基礎研究で理解し、応用へ活かすことを目指しています。
核膜孔を介した物質輸送とは?
吉村氏は、importinβという輸送タンパク質が、核内へ移行する際に、両親媒性モチーフの繰り返し構造を変化させ、核膜孔を通りやすい形になることを明らかにしました。このメカニズムを詳細に研究するとともに、その構造を利用して核膜孔を通過しやすい分子をデザインし、「遺伝子治療」や「ドラッグデリバリー」を確実に行う研究に取り組んでいます。「薬剤を核内に効率よく入れる技術は確立されていません。そこで両親媒性モチーフを利用し、核膜孔を通りやすいカプセルをつくろうと思ったのです」と吉村氏。
発現タンパク質の確認:GeneArtStringsで合成したDNA フラグメントをSeamless cloning kitでヒスタグ融合タンパク質発現用ベクターに導入後、大腸菌で発現誘導してNi-NTAカラムでアフィニティー精製。サンプルをBolt™4-12% Bis-Tris Plusで泳動後、CBB染色した。アミノ酸が数個だけ異なる2種の17kDa程度の人工タンパク質のバンドを確認できる(左2レーン)。 思いついたアイディアをすぐに試していく
importinβは約100kDaの大きなタンパク質。α-helixなどの繰り返し構造からなる多数の両親媒性モチーフを含んでいます。吉村氏は、様々な両親媒性モチーフをタンパク質構造データベースの中から選び出し、それらを最小単位にまで小型化し、かつ機能を最大化するスクリーニングの系を立ち上げました。「10kDa程度のモチーフでアッセイしていますが、対応する300~500bpの遺伝子をGeneArt®Strings™ DNA Fragmentsで合成しています。クローニングも、GeneArt ®Seamless Cloning and AssemblyEnzyme Mixを使うので簡単ですね」。その後、発現タンパク質を精製してアッセイに進みます(図)。「これまで2ヶ月程かかっていた、デザインからアッセイまでのサイクルが、この系を使うことで一ヶ月程度に短縮されましたよ」と吉村氏。「しかも配列情報から遺伝子を注文できるので、一度に複数の変異導入も簡単で、タンパク質エンジニアリングが自在に行えます」とコメントします。「さらに論文や学会で興味を持った遺伝子も、以前ならクローンの注文から始めていましたが、このサービスを使えば、すぐに試せて良いですね」と続けます。細胞が本来持つ核内への運搬メカニズムを抽出、改変、統合する研究を究め、遺伝子や薬剤を細胞の外から核内へ高い効率で運搬する新しい技術開発へ。迅速なスクリーニングが、吉村氏の研究を今後益々加速してくようです。
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