正確な酵母数計測に役立つTali®イメージベースサイトメーター

大西章博 氏( 東京農業大学応用生物科学部醸造科学科准教授)

今回訪ねたのは、東京農業大学の醸造環境科学研究室。日本の大学の中でもただ一つ「醸造」の名を冠している醸造科学科に所属しています。「私たちの研究室では、水素やエタノールといったバイオ燃料を生産する酵母やバクテリアを研究中です」と大西章博氏(写真左)。環境に配慮し、伝統技術である醸造学を駆使した、新エネルギー開発へのアプローチを、大西氏に伺いました。


酵母数計測でTali®イメージベースサイトメーターの利点を確認
同じ研究室の大学4年生の篠崎宏樹氏(写真右)は、効率よくエタノールを生産する酵母(Saccharomyces cerevisiae)を探索中。様々な酵母を比較するためには、実験に使用する酵母数を正確に計測する必要があります。一般的には平板培養法や、血算板と顕微鏡でカウントしますが、前者は手間と時間がかかり、後者では個人差が気になります。大西氏は、「今回、Tali®イメージベースサイトメーターを平板培養法と比較し、数値に隔たりなく計測できることを確認しました(グラフ参照)。また、簡便なサイトメーターだと、なかなかカタログ通りのダイナミックレンジが出ないことがありますが、Tali®ではカタログ通りの幅広いレンジで測定できましたよ」とコメントします。エタノール生産中の酵母数の計測は米やもみ殻が邪魔をするのでTali®では対応できませんが、検証のために前培養する酵母数の確認には大きな力を発揮したようです。篠崎氏もスライドチャンバーにサンプルを加えるだけで測定できるTali®の簡単な操作をすぐに習得して使いこなしています。

新しいバイオ水素生産細菌、Megasphaera elsdeniiへの期待
「私自身の研究テーマは、偏性嫌気性細菌Megasphaera elsdeniiを利用した水素燃料の生産です。現在、Clostridium属が広く利用されていますが、乳酸菌に弱いため培養前に熱殺菌が欠かせません。一方Megasphaera属は乳酸菌に強いので熱殺菌の必要がなく、しかも乳酸を利用します。トータルなエネルギー収支の観点から考えると、Megasphaera elsdeniiは新たなバイオ燃料生産菌の候補として有望ですよ」と大西氏。「すでにFISH(Fluorescentin situ hybridization)法を用いたこの菌の検出法や定量法を独自に開発しました。将来的には産学連携も視野に入れ、ダイナミックに研究を進めたいですね」。新しい水素燃料生産菌として期待が高まるMegasphaera elsdenii。酵母によるバイオエタノール産生とともに石油代替燃料の一翼を担うべく精力的に研究が進められています。


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