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木田泰之 氏 (産業技術総合研究所 幹細胞工学研究センター 間葉系幹細胞ダイナミクス研究チーム チーム長)
今回紹介するのは、脂肪由来の間葉系幹細胞である「脂肪幹細胞」研究から、全身のメ タボリズム、病態の解明、そして再生医療の実現を目指す、産業技術総合研究所の木田 泰之氏。「脂肪幹細胞」は、骨髄幹細胞同様、様々な細胞への分化誘導が行えます。
脂肪幹細胞を使えばフィーダーフリーでiPS細胞作製も
「間葉系幹細胞の規格化は、再生医療では重要な基盤技術の一つ。その一環として私たちは脂肪幹細胞の代謝や遺伝子発現を網羅的に調べています」と語る木田氏。脂肪幹細胞の高い有用性を次の様に説明します。「脂肪幹細胞は、不思議なことに胎児期の細胞によく似ているんです。例えばiPS細胞のフィーダー細胞であるマウス胎児繊維芽細胞(MEF)とメチル化や遺伝子発現パターンがほぼ同じです。ですから私たちはMEFの代わりに脂肪幹細胞をiPS細胞のフィーダー細胞として使えることを報告しました。しかも脂肪幹細胞そのものをiPS細胞の作製材料として使えば、遺伝子が導入されなかった細胞がフィーダー細胞として働くので、脂肪幹細胞だけでiPS細胞を作れるのです」(PNAS 107, 3558-3563,(2010) Nature Protocols 6, 346–358(2011))。ちなみに、脂肪幹細胞は皮下脂肪からも容易に取り出せるとのこと。「脂肪幹細胞は増殖率が高く、外科手術の際に生じる皮膚のわずかな余剰分からでも採取できるんですよ」と、脂肪幹細胞の再生医療研究における複数の可能性を語ります。
EVOS® システムやGibco® PSC Neural Induction Mediumで無理なく研究効率アップ
「幹細胞は一つひとつ性質が違うので、96ウェルディッシュに1細胞ずつ播いて培養後、分化させます。これまでは、その違いを1ウェルずつ接眼レンズでのぞき込みながら行っていましたが、長時間、前かがみで行う作業となり、かなり疲れました。EVOS®システムなら、モニターで確認できるので観察が楽になりました。また作成したiPS細胞から神経幹細胞へ誘導する場合もありますが、最近発売されたGibco® PSC NeuralInduction Mediumを使うと、短期間で誘導できて研究効率もアップしますね」と木田氏。脂肪幹細胞からiPS細胞作成、分化誘導研究までをスムーズに進められているようです。「特にクリーンベンチ内で顕微鏡を使用する際、EVOS®システムは接眼レンズの引っかかりがなくて、シャッターを下まで降ろしてモニターで観察できる点を気に入っています。メンバー同士のディスカッションもやりやすくなりました。写真が簡単に撮れたり、USBメモリに保存できること、コストが抑えられるのも魅力です」と続けます。シンプルで使い勝手の良いEVOS®システムの特徴を存分に活用している様子です。研究室を立ち上げて2年目、「若い人たちから様々なアイディアを取り入れながら、新しい挑戦を続けていきたい」と、木田氏は幹細胞研究への情熱を熱く語ります。CELL STORY #1 ▶[ 脂肪幹細胞]
骨髄間質由来細胞の様に、様々な間葉系の細胞に分化する能力を有する成体組織幹細胞であり、間葉系幹細胞の一種。ヒトの皮下脂肪吸引物から単離された初代細胞としても入手できる。写真左は脂肪幹細胞、右は分化直後の脂肪細胞。細胞内に複数の小さな脂肪滴ができ始めている。
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