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加々良尚文 氏、大城智弥 氏( 大阪大学医学部乳腺・内分泌外科)
血中の乳がん関連遺伝子変異の検出へ
生活様式の欧米化にともない、日本でも増加している乳がん。早期発見や適切な手術後の経過観察が重要視されています。この時、役立つのが腫瘍マーカー。「現在、いくつかのタンパク質の腫瘍マーカーが使用されていますが、そのほとんどは進行した乳がんに対するものです。今後は、感度の高いマーカーとしてDNAが注目されています。乳がん組織から血中にこぼれ落ちた微量なDNAを腫瘍マーカーとして使う研究が進みそうです。血中の乳がん関連遺伝子の変異を高感度に検出できれば、早期段階での乳がんの存在診断や、治療方針の決定に役立つ可能性があります。またDNA変異を正確に検出することは、他のがんとの差別性や個人のがんの特異性を客観的に把握することにもつながります。将来的には、がんの個性に合わせた治療方針や原発がんの再発評価に使えそうです」。こう話すのは、大阪大学医学部の加々良尚文氏。大学院生の大城智弥氏とともに乳がんの腫瘍マーカーとして、血中に存在する微量なDNA変異の検出方法を開発中です。
微量DNAの検出に高感度デジタルPCRを使う
微量なDNA変異の検出には、高感度で、しかも臨床応用を想定すると再現性が高いシステムが求められます。そこで彼らが2013年6月に導入したのが、QuantStudio™ 3DデジタルPCRシステム。「まだ基礎実験の段階ですが、リアルタイムPCRよりも1桁くらい感度が高く、再現性も高いことを確認しました。しかも感度の良さから懸念される偽陽性もこれまでのところ観察されていません。客観的な評価が求められる臨床への応用を考えると、絶対定量できる点もメリットですね」と加々良氏と大城氏。臨床への基礎固めとして、順調な滑り出しのようです。「操作が簡単で、実験結果もすんなり出ましたよ」と操作性についてもコメントします。
今後はより多くの遺伝子変異をターゲットに
最後に加々良氏に今後のビジョンを伺いました。「乳がんの進行に伴い、遺伝子内の変異が変化していく可能性もあり、一つの変異だけでは診断できない状況が出てくることが想定されます。もちろん配列だけでなく、エピジェネティックな変化も考慮する必要があります。今後、複数の乳がん関連遺伝子やその変異パターンを細かく解析していくことで、血中DNAの利用範囲を広げていきたいですね」。乳がんでは、血中の微量なDNAを利用する腫瘍マーカーの研究は始まったばかり。臨床への応用にむけて、今後さらに成果が加速度的に増えていきそうです。