PureLink®RNA Mini KitとTRIzol® Reagentで血液細胞中のRNAを高品質に精製

荒木真理人 氏( 順天堂大学大学院医学研究科 輸血・幹細胞制御学・准教授)
森下総司 氏( 順天堂大学大学院医学研究科 輸血・幹細胞制御学・助教)


荒木氏(左)と森下氏(右)

骨髄増殖性腫瘍の分子基盤解明から検証へ

白血病をはじめ、様々な血球の腫瘍化により引き起される造血器腫瘍。順天堂大学の荒木真理人氏は、そのようながんをテーマに、基礎研究成果の臨床応用を目指しています。「ある種の骨髄増殖性腫瘍では、チロシンキナーゼのJAK2遺伝子の変異によって、JAK2シグナル伝達系が恒常的に活性化し、それが細胞の腫瘍化を引き起こすと考えられています。私たちは、血液細胞中のJAK2遺伝子の変異を定量することで、この症例の病態を理解できないか検証中です」。JAK2は、細胞の分化や増殖、病原体抵抗性に関わる多くのサイトカイン受容体シグナル伝達機構に関与する重要な分子です。「血液内科の小松則夫教授の協力を得て、共同研究者の森下総司氏とともに、現在までに約1000検体の造血器腫瘍に関連する解析を行ってきました」と荒木氏は語ります。


特殊なPCR法で病態診断法の開発へ

森下氏は、産業技術総合研究所の関口勇地氏、野田尚宏氏、早稲田大学の常田聡氏らのグループと共同で、JAK2遺伝子の変異を高精度で定量するためにABCPCR法(Alternately Binding probeCompetitive PCR)を開発しました。「変異の有無で蛍光強度が著しく変化する蛍光色素をラベルしたプローブを加えてPCRを行い、蛍光強度を計測することで、簡便でしかも正確にサンプル中の遺伝子変異を定量できます。そしてこの方法で、JAK2遺伝子変異と病態の関係を調べたところ、強い相関を持つことが明らかになりました」と森下氏。臨床を見据えた研究に期待が高まります。

PureLink®RNA Mini KitとTRIzol®Reagentで高品質なRNAを

「血液細胞中の変異RNAを定量するため、検体の保存管理は大変重要です。1週間に10程度の検体が届きますが、早朝や夜間を問わず、いつ届くか分かりません。貴重な検体が届くたびにRNAを抽出することは大変な作業です。これを大幅に楽にしてくれたのがTRIzol® ReagentとPureLink® RNAMini Kit。私たちは、受け取ったサンプルにTRIzol® Reagent を加えて保存し、ある程度検体が集まってからPureLink® RNAMini Kitで一気にRNAを精製しています。高品質なRNAが得られ、作業効率も上がりますね」と荒木氏と森下氏。基礎研究から臨床応用へのハードルを越える様々な研究アプローチと工夫が日々重ねられているようです。