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本田雅規 氏(日本大学歯学部解剖学第Ⅱ講座 准教授)
成熟脂肪細胞から、歯周組織の再生へ
高齢で歯を失う第一の原因は、歯周病の末期症状です。歯周病の有病率は歳を重ねるごとに上昇し、50代後半になると5割近くに達するという報告もあります。「歯と骨をつなぐ歯周組織には、歯を支える大切な役割があります。私たちは、この組織の再生を目指して研究を進めています」と話すのは、日本大学歯学部の本田雅規氏。「最近、同じ大学の生物資源学部の研究グループが、成熟脂肪細胞の培養方法を変更するだけで間葉系幹細胞に類似した幹細胞が得られることを発見しました。これにより脂肪組織から幹細胞を大量に得ることが期待できます。また間葉系幹細胞は歯の中心にある歯髄組織にも多く含まれていますが、それらは虫歯で神経( 歯髄)を抜く際に取り除かれて捨てられてしまう組織です。歯髄幹細胞の医療への有効利用も考えてみたいですね」。本田氏のグループは、生物資源学部や医学部の研究グループと協力し、様々な歯の細胞を利用した再生医療の研究を進めています。
歯の完全再生も目指したい
本田氏らは、歯を一から再生させる研究にも挑んでいます。これまで成人の細胞を利用した歯の完全な再生は成功していません。歯の形は胎生期に決まり、あとはほぼその形のまま大きくなります。「一から完全な歯をつくることは、体性幹細胞では難しいかもしれません。一方、胎児マウスの細胞を利用すると、歯がうまく再生することが知られています。人への応用を考えると、iPS細胞から歯の形成につながる細胞を作製してみてもよいかもしれません」と語ります。様々な細胞を利用した研究が、歯の再生医療を土台からしっかりと支えています。