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池田正明 氏(埼玉医科大学医学部生理学教授、同ゲノム医学研究センター分子時計プロジェクト・プロジェクトリーダー)
熊谷恵 氏(助手)
およそ一日周期で体温や行動のリズムが継続する動物の概日時計。哺乳類では、脳の視床下部に存在する視交叉上核を中枢とする時計遺伝子の転写・翻訳のフィードバック機構が、概日リズム発振の分子基盤として知られています。埼玉医科大学医学部の池田正明氏は、コア時計遺伝子Bmal1を世界に先駆けて発見し、続いてその機能を補完する時計遺伝子Bmal2を同定しました。時計遺伝子を軸に研究と医療の現場をつなぎ、臨床医の育成にも取り組む池田氏に、iBind™ WesternSystemの活用法を伺いました。
時計遺伝子研究を医療に役立てる
池田氏は、うつ病など精神疾患の日内変動に興味があり、大学院生の頃から体内時計の研究をはじめました。そしてショウジョウバエのperiod遺伝子産物に含まれるPAS ドメインを手がかりに、哺乳類の胎児脳ライブラリから時計遺伝子Bmal1をクローニングすることに成功(1997年、2000年)。現在、名付け親となったBmal1の機能解析を中心に、時計遺伝子と関連する生活習慣病、がん、精神疾患などの疾患の解明や、治療法の開発を目指して研究を進めています。2010年には、PPAR-γ(Peroxisome Proliferator-Activated Receptor-γ)という脂質代謝に関連する転写因子が時計遺伝子によってリズム性の発現制御を受けることを報告しました。「臨床の現場との連携が欠かせません。将来的には時間薬理学の分野などにも応用したいですね」と語ります。
タンパク質解析はiBindで効率的に
「これまでスタッフから新しい装置導入のリクエストはあまりなかったのですが、iBind™システムは、強く推されましたね」と笑う池田氏。助手の熊谷恵氏は、4名の医学部生にタンパク質解析、遺伝子発現解析、細胞培養など実験の基礎を指導しています。学生がラボで研究できるのは講義が終わる夕方以降。初心者で時間が限られた学生でも、失敗なく使いこなせる手軽さがiBind™システムの特徴です。「これまでウェスタン解析はマニュアルで行い、15分から1時間おきに何度も液替えや溶液の準備をしていました。iBind™システムなら、別の実験や作業を中断せず、集中できるところが良いですね。学生の研究効率も上がり、私も助かっています。解析結果の再現性や精度にも満足しています」と熊谷氏。
研究マインドをもった臨床医を育てたい
学部生が通年でラボに所属して基礎研究に従事する「課外学習プログラム」は、埼玉医科大学が全国に先駆けて実施する取り組みです。遺伝子診断等、新しい技術とも向き合う将来の臨床医に、科学的なプロセスに基づき診断・検査を行う“研究マインド”を身に付けてもらう。それがこのプログラムの目標です。池田氏は研究だけでなく、将来の医療への貢献も念頭に研究を進めています。