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杉拓磨 氏( 京都大学物質–細胞統合システム拠点 さきがけ研究者)
線虫を使い、記憶のメカニズムを研究中の杉拓磨氏。記憶の保持は遺伝子発現の変化に依存しているという仮説に基づき、記憶に関わるとされる10対ほどの神経細胞での遺伝子発現を解析しています。杉氏は2013年3月頃からTALENsを活用し、記憶に関わる遺伝子の開始コドンを飛ばしたり、プロモーターに変異を導入したりして目的の遺伝子発現を変化させ、その影響を観察しています。「他の生物に比べ、線虫は一世代のライフサイクルが圧倒的に短く、究極のモデル生物と言えます。ゲノム編集を活用することで研究の幅がさらに広がりました。変異体を自在に得られるようになったので、特定の遺伝子の機能を迅速に調べられます」と語ります。
ゲノム編集で線虫の変異体作製が容易に
線虫では、変異原の薬剤を使うなど、これまでもいくつか遺伝子改変の方法がありました。しかしいずれもランダムに遺伝子変異を起こさせてから目的の変異体を探すというアプローチのため、作業が膨大になるという難点があります。一方、ゲノム編集を活用すれば、例えばプラスミド状態のTALENsからmRNAを作り、成虫の生殖腺にインジェクションすることで、F1世代で目的の変異体を素早く得られます。「生まれた個体の5~10%はヘテロの変異を持っています。十分な効率ですね」と杉氏。mRNA合成はAmbion® のmMESSAGE mMACHINE®Kit、続くポリAの付加はPoly(A) TailingKit、RNA精製にはMEGAclear™ Kitを使っています。「それぞれのキットのマニュアルが他を意識して書かれていて一緒に使うと便利です」とコメントします。