ゲノムサイエンスの研究に欠かすことのできないVeriti® サーマルサイクラー®

野中綾 氏 ( 東京大学 先端科学技術研究センター ゲノムサイエンス分野 博士研究員)

「Veriti®サーマルサイクラー®の使いやすさはもちろんですが、曲線的なデザインや見やすい大きなディスプレイも気に入っています」と話すのは、東京大学先端科学技術研究センターの野中綾氏。Veriti®サーマルサイクラー®の鮮やかな青い色が目をひきます。実験台にはたくさんの器具が所狭しと並んでいるにも関わらず、サーマルサイクラー®を2台並べておけるのは、吸排気口を装置の前後に設けた省スペース設計なため。側面にある従来型と違って、装置の間隔は少なくて済みます。

がん特異的ncRNAの同定

野中氏は、腫瘍細胞に特異的に発現するノンコーディングRNA(ncRNA)を研究中。これまでは20~30塩基程度のmiRNAやsiRNAの研究が主流でしたが、近年、大規模シーケンサーの技術によりヒトゲノムから転写されるncRNAから200塩基以上の長鎖RNAが見つかり、がんの浸潤や転移に関与することが示唆されました。「長鎖ncRNAの機能は不明な点が多く、これからの進展が期待される分野です。がん細胞に特異的に発現して、がん化を促進するものがないかと研究を始めました」。野中氏は、RNAシーケンシグにより、ヒトゲノムから読みだされるRNAを網羅的に解析し、さらにエクソンアレイやクロマチン免疫沈降シーケンシングを行い、数種類のがん特異的ncRNAを同定しました。その中には、大腸がんなどの臨床検体で高く発現しているものがあり、詳細な検討から、がん細胞の増殖を促す効果があるとともに、がん抑制遺伝子の発現に関与する可能性を示しました。

研究を支える便利な機能

「ライブラリーやベクターをつくったり、シーケンスの確認をしたり、そのたびにPCRを行うのでサーマルサイクラー®を使う頻度は多いですね」と野中氏。研究室には、4台のVeriti®サーマルサイクラーがありますが、研究室の人数も多いので、混み合うこともあります。「空いている装置を探して使うのですが、USBをセットするだけでどの装置でも同じプログラムでPCRを行えて便利です。しかも結果も安定していますね」。Veriti®サーマルサイクラー®では、800ものファイルをUSBに保存できて、持ち出しも簡単なので、どの装置でもプログラムを再設定することなく使えます。また、温度コントロールの精度やPCRの再現性も高く、装置による結果のばらつきを心配する必要もありません。「大学院時代は、反応時にオイルを使うなど大変でしたが、今は楽になりましたね。特にVeriti®だと、1時間で反応が終わり、マニュアルなしでも扱え、新しいメンバーに使い方を教えることも苦になりません」。

これからの研究に向けて

野中氏は、自身がみつけたncRNAの機能を解析し、がん化へ関与を精力的に研究中。サーマルサイクラー®の出番は、これからも続きそうです。「一枚のプレートでも、2列ずつ6種類の独立したアニーリング温度を設定できるので、同一のサンプルで条件を変えたいときに1回の反応で結果が確認でき、PCRの条件決定が迅速です」と語ります。ルーチンワークを簡素化して効率的に研究を進める野中氏。その研究を異なる種類のがんに応用すれば、新たながん特異的ncRNAが発見できる可能性もあります。今後の研究の広がりが楽しみです。


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