プラズマ集束イオンビーム走査型電子顕微鏡法

ボリューム電子顕微鏡法でPFIB SEMが使用される理由

プラズマ集束イオンビームミリング走査型電子顕微鏡法(プラズマFIB SEM)は、改善されたスパッタリング効率とナノメートルのイメージング分解能が組み合わされたものであり、室温または極低温条件下で実施されます。これにより、3Dイメージング中の高速エンドポインティングが可能になります。部位特異的な大容量の材料除去を行う汎用性の高いオプションとして、複数のイオン種(Xe、O、Ar、N)を利用できます。たとえばO+ PFIBは、エポキシまたはアクリルベースの樹脂包埋サンプルのデータ収集で優れた効率を発揮し、得られる画質も良好です。GaベースのFIBとは異なり、LR-White、HM20、Epon樹脂などの幅広い材料に対して、カーテンフリーの表面を容易に生成できます。樹脂やサンプルの処理における適合性も優れており、樹脂内での直接的な関心領域(ROI)の相関イメージングにより、ターゲットを絞ったFIB-SEMトモグラフィーが実現します。ROIターゲティングは、光-電子相関顕微鏡法(CLEM)によりさらに強化することが可能です。スライスのデータ管理は自動化されています。

EPONでHPF処理したシナプス小胞とミトコンドリアを含むマウスニューロンの3Dボリューム(着色部)。

ボリューム電子顕微鏡法におけるPFIB SEMの仕組み

Thermo Scientific Helios 5 DualBeamは、高スループットな細胞FIB-SEMトモグラフィーに適した汎用的ツールであり、一般的なあらゆるサンプル包埋メディアおよび作製プロトコルに対応しています。2Dおよび3Dでのトップダウンおよびクロスセクション解析をする際の、部位特異的な大容量の材料除去では、4つのイオン種(Xe、O、Ar、N)を独立して使用することが可能です。サンプル各自の要件に適したイオンビームを選択することで、試料基質界面や歯科材料(石灰化組織)などの複雑なサンプルに対しても、優れた表面テクスチャを構築できます。

 

プラズマFIBは、効率的な大容量の連続切片作製を可能にします。これは幅広い平行ビームにより、Ga-FIBより高い最大2.5 µAの電流を供給できるためです。スパッタリング効率の向上はパフォーマンスを向上させ、生成する切断面のスムーズ化、カーテンアーティファクトの削減、スループットのさらなる向上、関心領域への高速アクセスをもたらします。電流およびスパッタ速度の向上と損傷の軽減により、ナノスケールでの特徴を観察しながら、数百マイクロメートルサイズのボリュームへのアクセスが可能になります。

大規模な平面ミリングおよびイメージングに適したPFIBスピンミル法

Helios 5 Hydra DualBeamのオプションであるスピンミルメソッドでは、最大直径1 mmの大面積平面ミリングを行うことができ、3Dキャラクタリゼーション用に大面積の水平面イメージングを行えます。スピンミルプロセスは完全に自動化されており、Thermo Scientific Auto Slice & Viewソフトウェアを使用して簡単にセットアップできます。画像取得領域は、単一のスピンミル試験中に複数選択することができます。個々の関心領域は、試験の特異性に基づいて、異なる設定でイメージングすることが可能です。

 

スピンミルでは、PFIBにより、視射角に近いミリングが行えます。スライスアンドビュー分析で一般的なサンプルの前処理(保護キャッピング、トレンチング、基準マークなど)は不要です。このように大きなミリング領域が得られるため、多数の領域を選択したイメージングができます。散逸的な特徴も簡単に識別でき、統計的に関連した3Dデータを複数領域から収集することが可能です。

相関顕微鏡法によるPFIB SEMと蛍光顕微鏡の組み合わせ

Thermo Scientific iFLM相関システムは、クライオ相関イメージング用に広視野の光学顕微鏡をHelios 5 Hydra PFIBに組み込んだものです。単一の顕微鏡内で蛍光イメージングとイオンミリングを組み合わせることで、室温またはクライオ条件下での光-電子相関顕微鏡法(CLEM)を実現できます。


PFIB SEM 3Dのサンプルギャラリー

マウス海馬のスピンミルメソッドによる可視化

スピンミルメソッドにより大面積のミリングを行って高分解能なサンプル詳細を取得することで、関心領域にフォーカスしたさらなる分析が可能となる。マウス海馬を器官型スライス培養し、HPF凍結とEPON樹脂を適用。写真提供:S. Watanabe(ジョンホプキンス大学)およびJ. Wang(サーモフィッシャーサイエンティフィック)。


ボリューム電子顕微鏡法でPFIB SEMを使用している研究者

「環境ストレスや病気に対する作物の回復力を向上させる方法を理解する必要性は、ますます高まっています。新しく登場したHydra vEMには、かつてない注目すべき新機能が備わっており、植物の細胞と組織全体を詳細に再現できるようになりました。このテクノロジーは生物を時間的かつ空間的に”凍結”して、複雑な3Dモデルの構築を可能にするもので、食料安全保障という重要な課題の解決に貢献するはずです」。

 

Kirk J. Czymmek(研究主任、先端バイオイメージング研究室長、ドナルド・ダンフォース植物科学センター)


PFIB SEMの関連リソース

Thermo Scientific Helios 5 Hydra DualBeamは汎用性の高いPFIB SEMであり、複数のイオン種を使用したボリューム電子顕微鏡法に適しています。

分析用生体標本の準備では、サンプルの作成メソッドと樹脂のタイプによって、細胞内構造と蛍光シグナルがどの程度保持されるかが決まります。

このアプリケーションノートでは、大面積(最大1 mm)に対するアクセスと調査を目的とした、酸素PFIBを用いたスピンミルメソッドによる大面積平面ミリングについて説明します。