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本ページでは、免疫グロブリンの構造、クラスおよび機能タイプを表す用語および基準について概説します。
抗体 (または免疫グロブリン) 分子は、複数ユニットで構成される糖タンパク質であり、各ユニットには 4 つのポリペプチド鎖 (2 つの同一の重鎖 (H) および 2 つの同一の軽鎖 (L) が含まれています。ポリペプチド鎖のアミノ末端は、アミノ酸配列の変化が大きいことから、比較的変化の少ない定常領域 (C 領域) と区別するために可変領域 (V 領域) と呼ばれています。各 L 鎖は、1 つの可変ドメイン VL と、1 つの定常ドメイン CL から構成されています。H 鎖は、1 つの可変ドメイン VH と、3 つの定常ドメイン CH1、CH2 および CH3 から構成されています。各重鎖は、各軽鎖 (分子量: ~25,000) の約二倍のアミノ酸数と分子量 (~50,000) を有するため、免疫グロブリン単量体の総分子量は約 15 万に達します。
免疫グロブリン (IgG) の一般構造。
免疫グロブリン構造の注釈付き模式図
H 重鎖および軽鎖は、非共有結合性の相互作用と鎖間の共有結合性ジスルフィド結合を組み合わせることによって共に保持されるため、左右対称の構造を形成します。H 鎖および L 鎖の V 領域は、免疫グロブリン (Ig) 分子の抗原結合部位を含んでいます。各 Ig 単量体は、二つの抗原結合部位を含んでおり、二価であると言われています。
ヒンジ領域は、第一および第二の C 領域ドメイン間のH鎖領域であり、ジスルフィド結合によって共に保持されます。このフレキシブルなヒンジ領域 (IgG、IgA および IgD には見られるが、IgM および IgE には見られない) により、二つの抗原結合部位間の距離を変化させることができます。
免疫グロブリンの 5 つの主要なクラスには、IgG、IgM、IgA、IgD および IgE があります。各クラスは、分子内の重鎖のタイプによって区別されます。IgG 分子は γ 鎖として知られる重鎖を有します。IgM は μ 鎖を有します。IgA は α 鎖を有します。IgE は ε 鎖を有します。IgD は δ 鎖を有します。
重鎖ポリペプチドの差異によって、これらの免疫グロブリンは さまざまなタイプの免疫応答や免疫応答の特定段階で機能を果たすことができます。こうした差異に寄与するポリペプチド (タンパク質) 配列は、主に Fc 断片中に見られます。重鎖には 5 つの異なるタイプが存在するのに対し、軽鎖は κ 鎖と λ 鎖の 2 種類の主要タイプしかありません。
完全なタンパク質を形成するために結合する Y 字型ユニット (単量体) の個数が異なるため、各抗体クラスの価数はそれぞれ異なります。例えば、ヒトにおける機能性 IgM 抗体は、合計 1 0個の軽鎖、10 個の重鎖および 10 個の抗原結合部位を含む5つのY字型ユニット (五量体) から構成されています。
IgG の特性:
IgM の特性:
IgA の特性:
IgD の特性:
IgEの特性:
免疫グロブリンの主要クラスに加えて、特定動物種の全メンバーにおいて数種の IgG サブクラスが存在します。抗体は、各 Ig クラスの重鎖タイプの小さな差異に基づいて、サブクラスに分類されます。ヒトにおいては 4 種類の IgG サブクラスが存在します:IgG1、IgG2、IgG3 および IgG4 (血清中濃度の高い順に番号付けされています)。
異なるサブクラス間における差異は、異なるクラス間における差異ほど大きくはありません。例えば、IgG1は、IgA、IgM、IgD や IgE よりも、IgG2、IgG 3 および IgG 4 と近縁です。このため、免疫検出法で用いられる抗体結合タンパク質 (例: プロテイン A またはプロテイン G) や大半の二次抗体は、複数のサブクラスと交差反応しますが、通常は複数の Ig クラスとは交差反応しません。
抗体 (クラスやサブクラスのタイプに関わらず) は、イムノアッセイにおける試薬として使用するために、2 種類の基本形態 (ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体) で産生および精製されます。一般的に抗原に対する免疫応答は異種性であるため、同一抗原に対して、多種多様な B リンパ球の細胞株 (形質細胞の前駆体) が抗体を産生します。これら全ての細胞は共通の幹細胞に由来しますが、各細胞には個々の能力が発達しているため、抗体は同一抗原上の特定の決定基 (エピトープ) を認識します。こうした異種応答の結果、免疫動物由来の血清には多数の抗原特異的抗体クローンが含まれるようになります。この抗体クローンは、数種類の免疫グロブリンクラスおよびサブクラス (通常、総免疫グロブリンの 2〜 5% を占める) を有する可能性があります。これには異種性の抗原結合性免疫グロブリン群が含まれるため、このようなサンプルから精製された抗体は、ポリクローナル抗体と呼ばれます。一般に血清から直接精製されるポリクローナル抗体は、イムノアッセイにおける標識二次抗体として特に有用です。
各 B リンパ球は、特異的抗体分子を1個のみ産生し分泌するため、B リンパ球クローンによりモノクローナル抗体が産生されます。B 細胞クローンから分泌される抗体は全て同一であり、単一の特異性を持つ同種抗体の供給源となります。しかしながら、B リンパ球は、脾臓懸濁液または免疫動物から切除したリンパ節細胞から単離可能ですが、寿命期間が限られており、直接培養して有効量の抗体を産生することはできません。幸い、ハイブリドーマ技術の開発により、こうした制限問題は克服されています。この技術において、懸濁液中の単離された B リンパ球は、同じ種 (通常はマウス) 由来の骨髄腫細胞と融合し、抗体産生能力を保持しつつ実質的に不死細胞であるモノクローナルハイブリッド細胞株を形成します。このようなハイブリドーマは、特異的モノクローナル抗体を産生する必要に応じて、凍結保存および培養することができます。単一のエピトープ特異性が求められるアプリケーションや、長年継続的に使用する間一定に供給される必要のあるアプリケーションにおいて、モノクローナル抗体は一次抗体として特に有用です。腹水から抗体を採取するため、ハイブリドーマクローンを細胞培養で増殖させることができます。