同じタンパク質をターゲットとする 2 つの別々の抗体は、抗体の特異性を評価する上で有効なツールとなり得ます。理想的なシナリオとしては、抗原認識部位の重ならない 2 つの抗体を使用します。同じ目的タンパク質上の別々の部位を認識する抗体から同等の結果が得られることで、目的とするターゲット検出に関するそれらの抗体の特異性と適合性への信頼度を高めます。別々の抗体を使用する方法は、研究用の Invitrogen 抗体の検証に利用される戦略の 1 つです。

別々の抗体による検証法の一般的なアプリケーションでは、複数のライセートを用いたウェスタンブロッティング、IHC アレイ、複数の細胞株の免疫蛍光染色、免疫沈降、フローサイトメトリーなどにおいて、同等の検出パターンを得ることとなります。

別々の抗体の使用は、理論的には簡単ですが、実際には予測することが難しいのです。得られる結果は、サンプル調製、バッファー系、タンパク質複合体の配向、タンパク質のコンフォメーションに影響し得るさまざまなパラメーターにより異なり、サンプルによって違いが生じます。そのため、一方のまたは両方の検証抗体において、エピトープへのアクセシビリティは、かなり異なります。こういった問題に対応するため、抗体の特異性の検証には、同じターゲットに対してポリクローナル抗体を用いたアプローチも使用します。モノクローナルおよびポリクローナルは、感度が異なることが予想されるものの、ともに同様の検出パターンを示すことが期待されます。

別々の抗体による検証法のデータ

ターゲット特異性の検証のために、別々の抗体の使用法例を、以下に示します。

最初の例では、ERα 陽性の MCF7、T47D、SK-BR-3、そして ERα 陰性の Hs578T 細胞由来の全細胞ライセートおよび核抽出物を、2 つの異なる ERα 抗体、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体で分析しました。ポリクローナル抗体の免疫原は、ヒト ERα タンパク質C末端由来の短い合成ペプチドであり、一方、モノクローナル抗体の免疫源は、E. coli で発現させたヒト ERα C 末端領域(アミノ酸 302–595)に由来する 35 kDa の部分タンパク質です。質量分析における結果と同様に、種ごとの反応性の違いは、これらの抗体がターゲットに対して異なる結合プロファイルを持っていること、そして特異性の検証が適切であることを示しています。予想通り ERα は、ER 陽性細胞株の、特に核抽出物に、顕著なバンドとして検出されました。さらに、核分画に ERα が濃縮されているという同じパターンを、両方の抗体が示したという結果は、抗体の特異性をさらに裏付けるものです。

Western blot analysis of Estrogen Receptor
Western blot analysis of Estrogen Receptor

エストロゲン受容体(ER)のウェスタンブロッティング解析図に示した各ウェルの乳癌細胞株の全細胞ライセート(WCL)または核抽出物(NE)20 µg と、PageRuler Prestained Protein Ladder (Cat. No. 26616) 10 µL を、Novex 4 ~ 20%トリスグリシンポリアクリルアミドゲルにローディングし、電気泳動を行いました。タンパク質は PVDF(メンブレン Cat.No. 88518)に転写し、TBST に溶解した 5%のミルク溶液で最低 1 時間、室温にてブロッキングしました。ブロッキングバッファーで 1:500 に希釈したERポリクローナル抗体(Cat.No. PA5-16440)と、ロッキングプラットフォームにおいて 4 °C にて一晩、振とう下で反応させた後、1:40,000 に希釈した HRP 標識ヤギ抗ウサギ IgG 二次抗体(Cat.No. 31460)により、ER を 43 kDa 付近(上のパネル)の位置に検出しました。化学発光検出には、SuperSignal West Dura substrate(Cat.No. 34075)を使用しました。各レーンに等量のタンパク質が導入されているかどうかは、HDAC1 ポリクローナル抗体(Cat.No. PA1-860)を用いて確認しました(下のパネル)。検出された内在性タンパク質の分子量は、ERα または ERβ のアイソフォームと一致しました。

エストロゲン受容体(ER)のウェスタンブロッティング解析図に示した各ウェルの乳癌細胞株の全細胞ライセート(WCL)または核抽出物(NE)20 µg と、PageRuler Prestained Protein Ladder (Cat. No. 26616) 10 µL を、Novex 4 ~ 20%トリスグリシンポリアクリルアミドゲルにローディングし、電気泳動を行いました。タンパク質は PVDF(メンブレン Cat.No. 88518)に転写し、TBST に溶解した 5%のミルク溶液で最低 1 時間、室温にてブロッキングしました。ブロッキングバッファーで1:1000に希釈したERモノクローナル抗体(Cat. No. MA5-13065)と、ロッキングプラットフォームにおいて 4 °C にて一晩、振とう下で反応させた後、1:40,000 に希釈した HRP 標識ヤギ抗マウス IgG 二次抗体(Cat.No. 31430)により、ER を 48 kDa 付近の位置(上のパネル)に検出しました。化学発光検出には、SuperSignal West Dura substrate(Cat.No. 34075)を使用しました。各レーンに等量のタンパク質が導入されているかどうかは、HDAC1 ポリクローナル抗体(Cat.No. PA1-860)を用いて確認しました(下のパネル)。検出された内在性タンパク質の分子量は、ERα または ERβ のアイソフォームと一致しました。

 


もう 1 つの例として、2 つの異なるモノクローナル抗体、つまり、マウスモノクローナル β カテニン抗体のクローン 15B8 および 6F9 を使用して β カテニンを検出した結果を示します。下に示したように、2 つの抗体は、ヒト、マウス、ラットのβカテニンの検出において良好な相関を示しました。興味深いことに、クローン 15B8 では、非ヒト霊長類 COS7 細胞由来のβカテニンも検出されましたが、一方、同じライセートのクローン 6F9 では検出されませんでした。両方の抗体の免疫原はともに、リコンビナントのヒト β カテニンタンパク質です。

Western blot analysis of beta-Catenin
Western blot analysis of beta-Catenin.

β カテニンのウェスタンブロッティング解析図に示した細胞株の全細胞ライセート 50 µg を、4 ~ 20%のトリス塩酸塩ポリアクリルアミドゲルにローディングし、電気泳動を行いました。タンパク質は PVDF メンブレンに転写し、5% BSA/TBST 溶液で最低 1 時間ブロッキングしました。メンブレンを 1:1000 に希釈した β カテニンモノクローナル抗体(Cat.No. MA1-301)とロッキングプラットフォームにおいて 4 °C にて一晩、振とう下で反応させた後、TBS/0.1% Tween 20 溶液で洗浄し、1:20,000 に希釈した HRP 標識ヤギ抗マウス IgG 二次抗体(Cat.No. 31430)と、最低 1 時間反応させました。化学発光検出には、SuperSignal West Pico substrate(Cat.No. 34080)を使用しました。 

β カテニンのウェスタンブロッティング解析図に示した各ウェルの細胞株の全細胞ライセート 50 µg を、4 ~ 20%のトリス塩酸塩ポリアクリルアミドゲルにローディングし、電気泳動を行いました。タンパク質は PVDF メンブレンに転写し、5% BSA/TBST 溶液で最低 1 時間ブロッキングしました。メンブレンを 1:1000 に希釈したβカテニンモノクローナル抗体(Cat.No. MA1-300)とロッキングプラットフォームにおいて 4 °C にて一晩、振とう下で反応させた後、TBS/0.1% Tween 20 溶液で洗浄し、1:20,000 に希釈した HRP 標識ヤギ抗マウス IgG 二次抗体(Cat.No. 31430)と、最低1時間反応させました。化学発光検出には、SuperSignal West Pico substrate(Cat.No. 34080)を使用しました。

 


別々の抗体を用いる検証法による Invitrogen 抗体のターゲット特異性の検証

別々の抗体を用いる方法によって検証された Invitrogen 抗体は、検索結果や製品ページにおいて「特異性検証済み」の記号で示されています。検証済みを示すデータが、それぞれの製品ページに掲載されています。

*「検証」という用語の使用またはあらゆるバリエーションは、表示した研究技術に使用可能であることを確認するための機能試験の対象となった研究用抗体のみに適用されます。その製品が臨床用または診断用として検証されたことを担保するものではありません。