Search Thermo Fisher Scientific
Search Thermo Fisher Scientific
タンパク質は細胞や組織のタイプによって発現するものもしないものもあります。抗体の特異性は、さまざまなアプリケーション(免疫蛍光染色、ウェスタンブロッティング、フローサイトメトリーなど)を使用して、異なる細胞や組織タイプにおけるタンパク質の相対発現量を分析することによって検証できます。例えば、転写因子の Nanog は、胚性幹(ES)細胞、人工多能性(iPS)細胞、そして NCCIT や NTERA-2 のような胚性癌腫細胞株の核内に発現、存在していることが知られています。しかし、Nanog は HeLa 細胞のような他のがん細胞株には存在しません。ポジティブおよびネガティブ細胞株による、Nanog 抗体特異性の例を下に示します。Nanog 抗体による染色は、予想され得る Nanog 染色パターンを示します(右図、緑色)。Nanog は NTERA-2 細胞の核内のみに存在し、HeLa 細胞には存在しません(左図)。
NTERA-2 および HeLa 細胞における Nanog(緑色)の免疫蛍光染色解析。ホルマリン固定した細胞を TBS で希釈した 0.1% Triton X-100 で室温にて 10 分間透過処理しました。細胞を 1% BSA で室温にて 15 分間ブロッキングしました。細胞を 1:50 に希釈した Nanog モノクローナル抗体(Cat.No. MA1-017)で室温にて 1 時間プロービングし、 PBS で洗浄後、DyLight 488 標識ヤギ抗マウス IgG 二次抗体(Cat.No. 35502)とインキュベーションしました。F-アクチン(赤色)は DyLight 554 ファロイジン(Cat.No. 21834)で、核(青色)は Hoechst 33342 dye(Cat.No. 62249)でそれぞれ染色しました。画像は、Thermo Scientific ToxInsight イメージサイトメトリープラットフォームにより、倍率20xで取得しました。
ウェスタンブロッティングのような別のアプリケーションによっても、同様の情報を得ることができます。ウェスタンブロッティングによって Nanog モノクローナル抗体(クローン 23D2-3C6)の特異性を調べるために、Nanog を発現していることが知られている 2 つの細胞株、NCCIT および NTERA-2 の全細胞ライセートを使用しました。HeLa 細胞の全細胞ライセートは、ネガティブコントロールとして使用しました。下の図に示すように、NCCIT および NTERA-2 のセルライセートでは、Nanog が 38 kDa 付近に顕著なバンドとして検出されましたが、HeLa 細胞由来のライセートには検出されませんでした(左パネル)。また、NCCIT 細胞から核および細胞質分画を調製し、それぞれ等量のタンパク質を用いて Nanog の量を分析しました。予想通り、高含量の Nanog が NCCIT 細胞の核分画に認められ、抗体で検出した結果とタンパク質の局在が良好な相関を示しました。細胞質分画にも少量の Nanog が検出されていますが、これは、各分画の分離が不完全であることに由来するとされています(右パネル)。
全細胞ライセートを用いた Nanog のウェスタンブロッティング解析。全細胞ライセート 60 µg と 10 µL の PageRuler 染色済みタンパク質ラダー(Cat.No. 26616)を 4 ~ 20% Tris-HCl ポリアクリルアミドゲルにローディングし、電気泳動しました。タンパク質は PVDF メンブレンに転写し、5% BSA/TBST 溶液で最低 1 時間ブロッキングしました。メンブレンを 1:1000 に希釈した Nanog モノクローナル抗体(Cat.No. MA1-017)と 4 °C にて一晩、振とう下で反応させた後、TBS/0.1% Tween 20 溶液で洗浄し、1:20,000 に希釈した HRP 標識ヤギ抗マウス IgG 二次抗体(Cat.No. 31430)と、1 時間反応させました。化学発光検出には、SuperSignal West Pico substrate(Cat.No. 34078)を使用しました。ネガティブコントロールとして使用した HeLa 細胞由来ライセートには、Nanog が検出されていません。
核および細胞質分画を用いた Nanog のウェスタンブロッティング解析。NCCIT 由来の核および細胞質分画ライセート 60 µg と 10 µL の PageRuler Prestained Protein Ladder(Cat.No. 26616)を 4 ~ 20% Tris-HCl ポリアクリルアミドゲルにローディングし、電気泳動しました。タンパク質は PVDF メンブレンに転写し、5% BSA/TBST 溶液で最低 1 時間ブロッキングしました。メンブレンを 1:1000 に希釈した Nanog モノクローナル抗体(Cat.No. MA1-017)と 4 °C にて一晩、振とう下で反応させた後、TBS/0.1% Tween 20 溶液で洗浄し、1:20,000 に希釈した HRP 標識ヤギ抗マウス IgG 二次抗体(Cat.No. 31430)と、1 時間反応させました。化学発光検出には、SuperSignal West Pico substrate(Cat.No. 34078)を使用しました。核および細胞質分画は、Thermo Scientific NE-PER キット(Cat.No. 78833)を使用して調製しました。
同様に、転写因子の PAX8 は、COS7 アフリカミドリザル腎線維芽細胞の核内に発現していますが、ヒト 293T 細胞には発現していないことが知られています。ポジティブおよびネガティブ細胞による、PAX8 抗体特異性の例を下に示します。PAX8 抗体による染色は、予想され得る PAX8 染色パターンを与えます(右図、緑色)。PAX8 は COS7 細胞の核内にのみ存在し、293T 細胞には存在しません。
293T 細胞(左パネル)および COS7 細胞(右パネル)における PAX8(緑色)の免疫蛍光染色解析。ホルマリン固定した細胞を TBS で希釈した 0.1% Triton X-100 で室温にて 10 分間透過処理しました。細胞を 1% BSA で室温にて 15 分間ブロッキングしました。細胞は、1:50 に希釈した PAX8 モノクローナル抗体(Cat.No. MA1-117)で室温にて 1 時間プロービングし、 PBS で洗浄後、DyLight 488 標識ヤギ抗マウス IgG 二次抗体(Cat.No. 35502) と室温で 30 分間反応させました。F-アクチン(赤色)は、DyLight 554 ファロイジン(Cat.No. 21834)で、核(青色)はHoechst 33342 dye(Cat.No. 62249)でそれぞれ染色しました。画像は、Thermo Scientific ToxInsight 装置により、倍率 20x で取得しました。
ウェスタンブロッティングによって PAX8 モノクローナル抗体(クローン 1F8-3A8)の特異性を調べるために、3 種類のネガティブコントロール細胞株と、さまざまな量の PAX8 を発現している4種類のポジティブコントロール細胞株の、全細胞ライセートを使用しました。下の図に示すように、PAX8 は ES2 卵巣明細胞腺癌、MCF7 乳癌、Jurkat T 細胞白血病(左パネル)、および HeLa 細胞(右パネル)の全細胞ライセートからは検出されませんでした。一方、PAX8 モノクローナル抗体(クローン1F8-3A8)は、Kuramochi 卵巣高異型度漿液性腺癌、OVSAHO 卵巣高異型度漿液性腺癌、SKOV3 卵巣腺癌、FT246 不死化卵管上皮(左パネル)、および COS7 細胞(右パネル)の全細胞ライセートにおいて、50 kDa 付近に PAX8 を検出しました。結果は全て、予想される PAX8 の存在パターンと一致したことから、ウェスタンブロッティングにおける PAX8 モノクローナル抗体(クローン1F8-3A8)の特異性が証明されました。
PAX8 のウェスタンブロッティング解析。図に示した細胞株の全細胞ライセート 20 µg を、Invitrogen NuPAGE 4 ~ 12% Bis-Tris ポリアクリルアミドゲルにローディングし、電気泳動しました。タンパク質はニトロセルロースメンブレンに転写し、5%ミルク/PBST 溶液で 1 時間ブロッキングしました。メンブレンを 1:500 に希釈した PAX8 モノクローナル抗体(Cat.No. MA1-117)と4 °C にて一晩、振とう下で反応させた後、PBST 溶液で洗浄し、ヤギ抗マウス IgG 二次抗体と反応させました。サンプルはまた、ローディングコントロールとして β アクチン抗体とも反応させました。化学発光検出には、ECL Plus substrate(Cat.No. 32132)を使用しました。ライセートには次の細胞を使用しました:ES2 卵巣明細胞腺癌細胞、MCF7 乳癌細胞、Jurkat T 細胞白血病細胞、Kuramochi 卵巣高異型度漿液性腺癌細胞、OVSAHO 卵巣高異型度漿液性腺癌細胞、SKOV3 卵巣腺癌細胞、FT246 不死化卵管上皮細胞。
PAX8 のウェスタンブロッティング解析。SKOV-3、COS7、そしてネガティブコントロールの HeLa 細胞由来ライセート 60 µg と 10 µL の PageRuler Plus Prestained Protein Ladder(Cat.No. 26619)を 4 ~ 20% Tris-HCl ポリアクリルアミドゲルにローディングし、電気泳動しました。タンパク質は PVDF メンブレンに転写し、5% BSA/TBST 溶液で最低 1 時間ブロッキングしました。メンブレンを 1:1000 に希釈した PAX8 モノクローナル抗体(Cat.No. MA1-117)と 4 °C にて一晩、振とう下で反応させた後、TBS/0.1% Tween 20 溶液で洗浄し、1:50 0に希釈した HRP 標識ヤギ抗マウス IgG 二次抗体(10 µg/mL にあらかじめ希釈した)(Cat.No. 32430)と、1 時間反応させました。化学発光検出には、SuperSignal West Pico substrate(Cat.No. 34080)を使用しました。
フローサイトメトリーを用いれば、不均一な細胞集団における相対発現パターンを容易に解析できます。 ゲーティング技術を使用すれば、ユニークな細胞タイプにおける発現解析によって抗体の結合特異性を検証できます。下の例では、全血内の特定の細胞集団に発現する既知のマーカーを染色し、フローサイトメトリーにより解析しました。既知の発現パターンと同じように、CD3 抗体はリンパ球のサブセット(T細胞)のみを、HLA-DR 抗体は単球とリンパ球のサブセット(B 細胞)を、そして CD16 抗体は全ての顆粒球、つまり単球のサブセットとリンパ球のサブセット(NK 細胞)を、それぞれ染色しました。
この 2 つ目の例では、既知の発現パターンと同様に、Foxp3 抗体は CD4+T 細胞のサブセットのみを染色し、CD8+T 細胞を染色しませんでした。
Balb/c 脾臓細胞の CD3(クローン 17A2)、CD4(クローン GK1.5)、CD8(クローン 53-6.7)による表面染色および Foxp3/Transcription Factor Staining Buffer セット/プロトコルを使用した Foxp3(クローン FJK-16s)による細胞内染色。CD3+CD8+(青色のヒストグラム)および CD3+CD4+(紫色のヒストグラム)ゲート内のリンパ球を解析に使用しました。