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細胞処理は、シグナル経路の調節から細胞周期またはアポトーシスにいたるまで、細胞生物学においてタンパク質のさまざまな生物学的機能を分析するための一般的なツールです。このような生物学的ツールは、抗体の特異性の検証にも応用できます。細胞処理による検証方法は、研究用の Invitrogen 抗体の検証に利用される戦略の1つです。
細胞処理によるターゲットの検証は、目的タンパク質のエンリッチメント、デプレッション、またはトランスロケーションに基づきます。例えば、細胞周期においてその量がダイナミックに変化するタンパク質は、特異的な細胞周期阻害剤を使用することによってエンリッチが可能です。サイトカイン処理やシグナル経路の活性化により転写因子は活性化し、その結果、核へのトランスロケーションが起こります。トランスロケーションはその後、抗体で簡単にモニタリングでき、その動きは同じ細胞内区画における繊細で活発な変化と比べても容易に捉えることができます。
翻訳後修飾(PTM)を分析する時は、特異的な部位のリン酸化を通じた特異的なキナーゼの活性化を証明するために、阻害剤と組み合わせた細胞処理法が使用されます。この場合、リン酸特異的な抗体と適切なコントロールが使用されます。
下の例では、抗体のターゲット特異性を検証するために、細胞のノコダゾール処理と siRNA によるノックダウンを使用しました。ポロ様キナーゼ 1 としても知られる、セリン/スレオニンのプロテインキナーゼである PLK1 は、細胞周期 G2/M を阻害することでエンリッチされます。PLK1 は、ノコダゾール処理した、または未処理の U2OS 細胞の全ライセートで見られます。siRNA のノンターゲティングコントロール、または PLK1 siRNA が、抗体特異性の検証に使用されました。GAPDH はローディングコントロールとして使用されました。
図 1.PLK1 のウェスタンブロッティング解析。ノンターゲティングコントロール、または PLK1 siRNA トランスフェクトが行われた、未処理またはノコダゾール処理(100 nM、48 時間)U2OS 細胞ライセート 25 µg を、4 ~ 20%トリス塩酸塩ポリアクリルアミドゲルにローディングし、電気泳動を行いました。タンパク質は PVDF メンブレンに転写し、5%ミルク/0.1% Tween 20 で最低 1 時間ブロッキングしました。メンブレンは、1:1,000 に希釈した PLK1 マウスモノクローナル抗体(Cat. No. MA1-848)と、ロッキングプラットフォームにおいて 4 °C にて一晩、振とう下で反応させました。メンブレンを TBS/0.1% Tween 20 で洗浄した後、1:20,000 に希釈した HRP 標識抗マウス IgG 二次抗体(Cat. No. 31430)と、最低 1 時間反応させました。メンブレンを洗浄後、SuperSignal West Dura substrate(Cat.No. 34075)を用いて化学発光検出しました。
細胞処理はまた、IP アプリケーションによる抗体特異性の検証にも利用できます。下の例では、アセチル化リジンモノクローナル抗体を用いて、トリコスタチン A(TSA)処理または未処理細胞の全ライセートから、リジンアセチル化タンパク質の免疫沈降を行いました。TSA 処理によって起きたアセチル化ヒストン H3(Lys 9)のエンリッチメントを検出するために、アセチル化ヒストン H3(Lys 9)モノクローナル抗体を使用し、免疫沈降によって目的とするターゲットに対する抗体の特異性を確認しました。
図 2.アセチル化ヒストン H3(Lys 9)の免疫沈降。未処理(DMSOのみ)または 0.3 µM および 3 µM のトリコスタチン A(TSA)で 16 時間処理した細胞の全ライセート。抗原ー抗体複合体は、500 µg のライセートと 3 µg のアセチルリジンモノクローナル抗体(Cat.No. MA1-2021)を 4 °C にて一晩、ロッキングプラットフォームでインキュベートして形成させました。免疫複合体は、50 µLの Protein A/G Agarose(Cat.No. 20421)により捕捉し、十分に洗浄後、5X レーンマーカー還元サンプルバッファー(Cat.No. 39000)で溶出しました。サンプルは 4 ~ 20%トリス塩酸塩ポリアクリルアミドゲルで分離し、PVDF メンブレンに転写後、5% BSA/TBS/0.1% Tween で最低 1 時間ブロッキングしました。メンブレンを 1:1000 に希釈したアセチル化ヒストン H3(Lys 9)モノクローナル抗体(Cat.No. Ma5-11195)で4 °C にて一晩、振とう下で反応させ、TBST で洗浄後、1:2000 に希釈した Clean-Blot IP Detection Reagent (Cat.No. 21230) で最低 1 時間反応させました。化学発光検出には、SuperSignal West Pico substrate(Cat.No. 34087)を使用しました。
細胞処理はまた、免疫蛍光染色における、アセチル化リジンモノクローナル抗体(左パネル)および phospho-ATM(Ser1981)モノクローナル抗体(右パネル)の特異性検証にも使用できます。処理しない場合、HeLa 細胞の核における染色レベルはほんの僅かです。TSA(左パネル)またはカンプトテシン(右パネル)処理では、目的タンパク質の核における染色が増加しています。これらの結果は、ウェスタンブロッティングのような他のアプリケーションによって得られた結果と相関しており、抗体の特異性が確認できています。
図 3.未処理(左パネル)または 0.3 µM のトリコスタチン A で 16 時間処理した(右パネル)HeLa 細胞におけるリジンアセチル化タンパク質(グリーン)の免疫蛍光染色。ホルマリン固定した細胞を TBS で希釈した 0.1% Triton X-100 で室温にて 10 分間透過処理し、1% BSA を用いて室温にて 15 分間ブロッキングしました。細胞は、1:100 に希釈したアセチルリジンモノクローナル抗体(Cat.No. Ma1-2021)と室温で一時間、振とう下で反応させ、PBS で洗浄後、1:100 に希釈した DyLight 488 ヤギ抗マウス IgG 二次抗体(Cat.No. 35502) と室温で 30 分間反応させました。F-アクチン(赤)は、DyLight 554 ファロイジン(Cat.No. 21834)で染色しました。Hoechst 33342 dye (Cat.No. 62249) による核染色(青)とのマージ画像は下のパネルに示しています。画像は、Thermo Scientific ArrayScan イメージングシステムにより、倍率 20x で取得しました。
図 4.未処理(左パネル)または10 µM のカンプトテシンで 4 時間処理した(右パネル)HeLa 細胞における pSer1981 の ATM リン酸化(グリーン)の免疫蛍光染色分析。ホルマリン固定した細胞を TBS で希釈した 0.1% Triton X-100 で室温にて 10 分間透過処理し、1% BSA を用いて室温にて 15 分間ブロッキングしました。細胞は、1:1,000 に希釈した phospho-ATM(pSer1981)モノクローナル抗体(Cat.No. MA1-2020)と室温にて 1 時間、振とう下で反応させ、PBS で洗浄後、1:400 に希釈した DyLight 488 ヤギ抗マウス IgG 二次抗体(Cat.No. 35502) と室温で 30 分間反応させました。F-アクチン(赤)は、DyLight 554 ファロイジン(Cat.No. 21834)で染色しました (上のパネル)。Hoechst 33342 dye(Cat.No. 62249)による核染色(青)とのマージ画像は下のパネルに示しています。画像は、Thermo Scientific ArrayScan イメージングシステムにより、倍率 20x で取得しました。
細胞処理を用いる方法によって検証された Invitrogen 抗体は、検索結果や製品ページにおいて「特異性検証済み」の記号で示されています。検証済みを示すデータが、それぞれの製品ページに掲載されています。