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抗体は、その特異性と比較的容易に得られるために、生物学研究者にとって不可欠なツールセットの代表的存在です。
直接および間接免疫蛍光標識法の長所と短所を学び、実験用の一次抗体を選択する際の基本的な注意点を理解してください。
免疫蛍光は、サンプル中の特異的な生体ターゲットを、抗体を使用して蛍光で標識する技術です。抗体は、Y形の高分子量の糖タンパク質であり、免疫グロブリンとも呼ばれ、もう1つの分子(しばしば抗原またはエピトープと呼ばれます)に特異的に結合(ただし、非共有結合)します。免疫蛍光では、蛍光ラベルの特異性は、抗原に対する抗体の特異性に由来します。結合した抗体は、抗体に取り付けられた蛍光体によって検出されます。
免疫蛍光は、免疫細胞化学(ICC)や免疫組織化学(IHC)、抗体標識と呼ばれることがあります。一般に、IHCは組織の薄切片内のターゲットを染色する実験に言及されます。一方、ICCは、ターゲットがもともと存在していた細胞外マトリックスを除くことにより組織から分離された細胞を染色すること、または培養細胞を染色することを指します。
図1. I免疫蛍光法は、蛍光色素に標識された抗体に依存しており、この抗体は特定のターゲットに対して特異性があります。図は、蛍光色素(緑色)が標識した抗体(灰色)を示しています。実際には、市販されているほとんどの標識抗体は、1抗体あたり2~7個の蛍光体分子で標識されています。
蛍光イメージングとの関連において抗体が議論される場合に、一次または二次抗体という用語を耳にすることでしょう。これらの用語は、蛍光で標識された抗体が目的の抗原に結合する順序を指しています。一次抗体はターゲットに直接結合し、二次抗体は、一次抗体を架橋することでターゲットである生体分子と間接的に結合します。
抗体を選択する際、goat anti-mouse、donkey anti-goatのような用語を目にしますが、これらの用語を簡単に識別することは少し難しいです。これらの用語において、最初に述べられる動物名は宿主の種、すなわち抗体が産生された種を指しています。「anti」の後に続く動物名は、その抗体がどのような種を認識するかを示しています。免疫標識の二次抗体を作るためには、その抗原は常にもう1つの種の抗体でなければならない、ということになります。したがって、goat anti-mouse IgG Invitrogen™ Alexa Fluor™ 488とは、マウス免疫グロブリンに対して産生され、488 nmで発光する色素に抱合されたヤギ由来の抗体を意味します。
免疫蛍光の直接法および間接法のいずれにも、利点と欠点があります。免疫蛍光イメージングを行うにあたり、どちらの方法を選んで用いるかは、ターゲットやどのような一次抗体が入手可能かに大きく左右されます。一般的に間接標識のアプローチをする際、以下の理由により、蛍光色素に抱合された二次抗体を使用することは最も一般的で費用対効果も高くなります。これは、蛍光で標識した二次抗体は、比較的安価であり、さまざまな色が揃っており、反応性のあらゆる一次抗体と組み合わせて使用することと、複数の二次抗体が一次抗体に結合できるためにシグナルの増幅が可能になることが理由です。
図2.免疫標識は、いくつかの方法で行えます。特異的なターゲットまたはエピトープと結合する抗体を、橙色で示しています。直接免疫蛍光染色法については、エピトープと結合している抗体を蛍光色素(緑色)で表しています。間接免疫蛍光染色法または二次検出では、一次抗体はエピトープと結合し、一次抗体に特異的な蛍光標識された二次抗体(紫色)が一次抗体に結合します。
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免疫蛍光染色実験の計画を立てる際、検討すべき最も重要な事柄の1つは一次抗体の選択です。これが成功または失敗の鍵を握るからです。市販の一次抗体から選択する際の最良の方法は、免疫蛍光法で機能することがわかっているものを選択することです。多くの場合、抗体に関する解説文や既報の文献で使用例を見つけられます。できれば、サンプル中のターゲットと同じ種に対して産生された一次抗体を選択したいことでしょう。このことは、いつも可能とは限りませんが、実験がうまくいかないことを意味しているわけではありません。ターゲット配列に対して高いアミノ酸相同性があるタンパク質を他のどの種が有しているかを知り、最も高い相同性があるターゲットに対して産生された一次抗体を選択する必要があることを意味しているだけです。
抗体を選択する段階で、同じ実験の中で他のどのようなターゲットをイメージングしたいかを事前に検討しておくというのは良い考えです。複数の蛍光色の抗体を使用する場合、同じ種の宿主で産生された複数の一次抗体を使用することは確実に避けたいことです。例えば、宿主動物がマウスである非標識の一次抗体を使う場合、標識済み二次抗体はマウス以外の宿主で産生された抗マウス抗体が必要です。標識済み二次抗体は1種類の一次抗体とのみ反応する(両方でなく)必要があるため、もう1つのターゲットがある場合は、一次抗体の宿主をマウス以外の種にすることが確実に必要です。
図3.同じサンプル中の2つの異なるターゲットの二次検出は、異なる種の宿主で産生された各ターゲットの一次抗体に依存しており、これにより、二次抗体間の交差反応を防止できます。
一次抗体を選択したなら、市販の二次抗体を選択するのはとても簡単です。選択した一次抗体の宿主と同じ種に対して産生された二次抗体を選択しなければなりません。マウスで産生された一次抗体をもっている場合、二次抗体用にマウス以外の種の宿主を選択する必要があります。例えば、イメージングしたい色の蛍光色素が標識したgoat anti-mouse抗体です。
トラブルシューティング
標識済み二次抗体を使用した標準的な免疫蛍光アッセイで、十分なシグナルが得られないことがあります。これは、一次抗体が適していないことが原因である可能性があります。また、ターゲットの親和性が低いことや、ターゲットに対して特異的でないこと、サンプル中のターゲット量が少ないことなどから、標識済み二次抗体によるシグナルの増幅が弱く視覚化できないこと原因として考えられます。いずれの場合でも、シグナルを高める増幅方法があります。
ビオチン-ストレプトアビジンによるシグナル増幅は、対処法の1つです。これにより、ターゲットを標識する蛍光色素の数を増やせます。不便な点は、非特異的な標識防止を目的として内在性ビオチンをブロッキングするステップが必要になるという点です。
図4.蛍光-ストレプトアビジン抱合体を使用して標識されたビオチン化抗体は、標識実験で暗いシグナルを増幅できます。これは、より多くの蛍光色素が各抗体分子に結合できるためです。エピトープに対する特異性は保持されます。
もう1つの対処法は、チロシンシグナル増幅を用いることです。この方法では、二次抗体は反応性色素を放出できる酵素に抱合され、この色素が、H2O2の存在下で抗体結合部位を囲む近接領域を標識します。ビオチン-ストレプトアビジン増幅と同様に、チロシンシグナル増幅では、染色ワークフローにさらなるステップが加わります。不要な高いバックグラウンド蛍光をサンプルから除くため、さらにブロッキングを必要とすることもあります。
図5.チロシンシグナル増幅も、1エピトープあたりにより多くの蛍光を付加することで、暗いシグナルを増幅できます。しかし、エピトープを囲む近接領域に結合する反応性蛍光体のために、ラべリングの特異性はより少なくなります。
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.