封入剤を使用することで、画像を改善することができます

研究者は、通常、試料の保管・保存が短期、長期のいずれの場合であっても、封入剤を用いて試料を良好な条件下に維持します。

封入剤の基本的なタイプと、封入剤を選ぶにあたり、あなたが求めている保護や保存のレベルを得るために何を検討すればよいかを学んでください。

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封入剤とは?

封入剤とは、顕微鏡での観察中にサンプルを包んでいる媒質のことです。封入剤の最も単純なタイプは、空気または生理食塩水系をベースとしたPBSのような緩衝液です。蛍光標識を用いた固定細胞のイメージングに言及する際に、多くの人が封入剤(Mounting medium)という用語を使用するので、イメージング剤(Imaging medium)という用語は、しばしば生細胞のイメージングする間にサンプルを囲んでいる媒質を指します。

観察中に固定細胞を封入剤の中におくのには、次に挙げるいくつかの理由があります:

  • 観察中に試料をその場に保持しておくため
  • 試料を乾燥から防ぐため
  • 使用する対物レンズの屈折率により近く合わせるため
  • 光褪色を防ぐため
  • 長期間試料を保存するため

封入剤の選択は、主としてサンプルタイプ、どのように観察するか、どの蛍光体または蛍光タンパク質を使用するかによります。市販のバージョンを購入するのか、または自分で独自に「調合」したいのかによって選択可能な様々な封入剤があり、組成は多岐にわたっています。トルエンまたはキシレンなどの有機溶媒をベースにした封入剤もあれば、水性または水溶性のものもあります。


固定細胞観察用の封入剤

封入剤には主に2つのタイプ、すなわち水溶性と溶剤系のものがあります。ワークフローの主な相違は以下のとおりです。水溶性封入剤では、試料を緩衝液から封入剤に直接移すことができます。これとは対照的に、溶剤系封入剤を使用する場合、試料は、通常、脱水(溶剤中または空気中)を行ってから、封入剤に移す必要があります。これらの溶剤系封入剤は、試料を最も長く保存することができます。

最もよくみられるタイプの水溶性封入剤は、単にPBSなどの緩衝生理食塩水です。緩衝生理食塩水での観察は、抗体ラベリングと染色をした後に、後処理ステップを最小限に抑えて速やかに試料を観察し、試料を迅速に調べ、染色が予想したとおりに見えるかどうかを確認することができます。これは、2種類以上の蛍光体で試料を標識したい場合や、各ステップで染色プロセスを確認する必要がある場合、プロトコールどおりにうまくいくか確信できない場合、またはすぐに結果を得たい場合に好都合です。


サンプルの保護や保存を容易にするタイプのマウント剤もあります。

ガラスに合った屈折率の最適化、光褪色の防止、サンプルの長期間保存といった好ましい特性を付与するように処方された封入剤を広く利用することができます。「硬化する(cure)」または固まる(harden)まで時間を要する封入剤もあることにご留意ください。硬化するまでに時間のかかる封入剤は、スライド上であちこち動かすことで、サンプルを思わずを傷つけつたりこわしたり、または染色した細胞を光褪色させないよう、サンプルを十分に硬化させてから観察を行うことが大切です。通常、封入剤の屈折率は、十分硬化した後に指定値に達し、その光防護特性は硬化プロセスの間に増加します。また、封入剤が十分硬化した後の硬度も多岐にわたります。すなわち、ゼリーのように固まるものもあれば、硬質プラスチックのように凝固するものもあります。


サンプルの乾燥防止

PBSまたはその他の液体封入剤を使用する場合、乾燥を防ぐために、またはより良好に長期間保存するためにカバーガラスの縁を封じたいと思うこともあるでしょう。融解したパラフィン蝋またはマニキュアなどをカバーガラスの縁に沿って塗布することにより、水分バリアーとして機能し、カバーガラスがスライドに密着しやすくなります。カバーガラスを封じることを選択した場合、それ自体に蛍光性がある物質もあることを認識してください。それらを使用する際はイメージング領域を避けることで、余計なバックグラウンド蛍光を心配する必要がなくなります。

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For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.