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リアルタイムでの生物プロセスの観察細胞の研究は、基礎生物学の研究であり、生細胞は、私たち研究者が有する、最も利用しやすい生物学的プロセスモデルの一つです。しかし、様々な実験操作や観察中に細胞を生きた状態で健全に保つことは、簡単なことではありません。 下記の情報は、生細胞観察実験がご自分の実験に適用可能な方法であるかどうかを決めるのに役立ちます。 |
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低速度撮影のイメージングを用いた生細胞の研究は、しばしば「生細胞イメージング」と呼ばれます。撮影画像間の経過時間(time lapse)は、実験中にどのようなプロセスを観察するかにより、ミリ秒単位から日単位まで幅があります。生細胞イメージング技術を用いることにより、ターゲットが関与する動的な生物学的プロセスを研究することができます。この技術は、単一時点で細胞の構造体が凍結され、細胞の活動が停止する固定細胞イメージングとは対照的です。生細胞イメージングを用いれば、酵素活性などの動力学的プロセス、シグナル伝達、タンパク質および受容体の細胞内輸送、ならびに膜リサイクリング(エンドサイトーシスおよびエキソサイトーシス)は、すべて解析することができます。
図 1. CellLights®Actin-GFPを形質導入された心筋細胞に由来するマウス胚性幹細胞の自発性収縮
| 図 2. 蛍光カルシウムインジケータFluo-4 AMをロードされた分化NG108細胞中の脱分極誘発型カルシウムシグナル伝達。 イメージは、内部カルシウムの増加を示す擬似カラーとし、緑色から赤色への色の変化を生じさせました。 |
活発な生物学的プロセスを研究するためには、顕微鏡観察中に細胞の機能を維持して比較的健全な状態に保つ条件を見つけて維持する必要があります。蛍光観察は、イルミネーションに起因する不要な副作用を起こすことがあるため、実験を可能な限り非侵襲的になるようデザインする必要があります。ただし、インキュベーター内では、細胞はイルミネーションに曝露されません。生細胞イメージングでは、実験中に細胞が機能を維持できること、および結果の解釈を複雑にする問題が実験方法に起因するものか否かを評価できることの両方が必要となります。
生細胞イメージングを計画している場合、以下に強調して挙げる重要な注意点を含めた実験計画を立案することが不可欠です。
できるだけ弱い光を用いて光毒性を防ぎ、生細胞サンプルを観察することは、常に最良の方法です。このことは、光源を最大限にコントロールすることで、波長範囲および細胞を照らす光子の数を最小限に抑えることが可能なイメージングシステムを選択する必要がある、ということを意味します。最も低いレベルの蛍光体励起で最も高いシグナルが得られるイルミネーションを用いることを目指さなければなりません。毒性を防ぐ目的で光の強度を抑えるため、蛍光シグナルはより低くなります。そこで、感度が高い検出器(理想的には冷却CCDカメラ)を搭載したシステムを用いて、生細胞イメージングをしたいことでしょう。実験の途中でターゲットが焦点から外れることがあるため、生細胞イメージングではより長い期間にわたって困難を強いられる場合があります。多くの顕微鏡は、これを助ける自動フォーカシングの特長を備えています。さらに、システム内の温度を一定に維持したり、観察容器中の溶液量を一定に保つ機能は、フォーカスドリフトの解消に役立ちます。
蛍光タンパク質を使用して関心のあるタンパク質や構造体を標識することができます。市販される様々な蛍光タンパク質のおかげで、このアプローチは非常に普及し、確固たるものになりました。
いくつかの生物学的課題に対しては、より低分子で膜浸透性の試薬が最良の選択肢となります。これらの試薬としては、励起時にイオン(例えば、Ca2+)と結合した場合にのみ、蛍光を明るく発する蛍光色素などがあります。最も明るく最も特異的な蛍光色素を選択して実験を開始すれば、それを比較的低濃度で使用することができるうえ、ターゲットからの観察可能なシグナルも得られます。使用する光の量を最小にして蛍光色素を励起することができると同時に、低いバックグラウンドで良好なシグナルをもたらすことができる条件になるよう、常に最適化を行う必要があります。このことは、最も低い強度と最も短い露光時間になるように実験を最適化することを意味します。場合により、特に長い期間にわたる観察を望む場合は、分解能を幾分犠牲にし、代わりにより健全な細胞を用いることが得策です。これは、より短い露光時間、ビニングまたはより低い拡大率を意味することもあります。利用可能な場合は、蛍光スペクトルの赤端により近いプローブを選択することもできます。これは、それらプローブを励起させるにはより長い波長を必要とし、より長い波長は光毒性がより少ないことを意味するからです。
多くの細胞は、その最適な温度、浸透圧、pHおよび湿度から逸脱した環境には耐えられません。もちろん、実験条件はどのような実験課題を抱えているかによって変わります。例えば、細胞の増殖および分裂を詳細に研究する実験では、受容体の活性化やカルシウム蓄積などの実験に比べて、異なる条件セットを用いることがあります。何の制御もしない環境下で、短期間の観察に耐えられる頑強性の不死化細胞株もあります。その一方で、より長い期間の観察研究において、不死化細胞および一次細胞を用いていずれも良好な結果を得るには、通常、厳しく制御した環境パラメータが必要です。
短期間の実験中に、観察用培地の蒸発に起因する浸透圧および酸素の変化は、容量を大きくすることにより防止できます。より長い期間の研究では、観察用培地における重炭酸塩をベースにした緩衝系に加えて、通常、加熱ユニットと、CO2も調整する加湿型インキュベーションチャンバーを組み合わせて温度、pHおよび湿度を制御します。
観察実験では、培地のいくつかの選択肢があります。一つの選択は、細胞の培養に使用するのと同じ培地で観察することです。ほとんどの細胞培養培地の処方には、無機鉱物または塩類、ビタミン、アミノ酸、核酸、糖類、脂質および他の生化学物質の混合物が含まれ、通常はこれに血清を添加します。培地のpH緩衝系は、通常、重炭酸塩および外部から適用したCO2に依存します。これは、ほとんどの細胞が、こうした処理を内部pH制御のために長期間必要とするためです。増殖培地において観察に関連した問題があります。イルミネーションに起因して、一般的な培地構成成分(ビタミンB群、タンパク質、フェノールレッド)のいくつかが蛍光を発し、これがバックグラウンドの増加や、研究中の細胞を害する活性酸素種の生成につながるという問題です。
もう一つの選択肢は、生理食塩水をベースにした溶液中で細胞を観察することです。これでより高い光学的透明度が得られますが、長期間の細胞増殖を支えることはできません。これら生理食塩水をベースにした溶液は、重炭酸塩緩衝液および外部から適用したCO2を基にするか、またはHEPESなどの合成緩衝液を含有させて生理的pH値を維持することも可能です。生理食塩水をベースにした観察用培地は、細胞増殖を支えるために処方されるものではないため、それがいくつかの実験で長期間にわたって問題となったり、より高い代謝活性や成長速度が必要になります。
観察実験用に特化して開発された市販の培地もあります。増殖培地をベースとした溶液は、増殖を支えることを目的としていますが、バックグラウンド蛍光の一因となる従来の増殖培地の構成成分を含めることなく処方されます。生理食塩水をベースとした処方は、より高い光学的透明度と緩衝作用をもたらしますが、短期間の研究での使用に最も適しています。
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.