ファーストストランドcDNA 合成の反応では、配列特異的プライマー(sequence-specific primer;SSP)、オリゴ(dT)プライマーまたはランダムプライマーを使用できます。RNAプライミング戦略と合わせてRNA 精製方法も、cDNAの合成において、効率性、一貫性およびcDNA収量に重要な役割を果たします。各タイプのプライマーにはそれぞれ長所と短所がありますが、ターゲットRNAによって、プライマーの種類に対する反応が異なる可能性があります。したがって、理想的には各プライマータイプについて評価を行い、ファーストストランドcDNA合成において最適の感度および正確性をもたらすプライマーを選ぶべきです。

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配列特異的なプライマー

SSPは特異性が最も高く、逆転写反応に用いるプライマータイプの中で最も一貫性の高いものであると示されています。しかし、SSPにはオリゴ(dT)プライマーやランダムプライマーが持つ柔軟性がなく、研究対象の遺伝子毎に新たにcDNA合成反応を行わなければなりません。このため、配列特異的なプライマーは、量に限りがある組織または細胞サンプルの処理に最適とは言えません。

1ステップRT-PCR反応ではファーストストランドcDNA合成の際、常に遺伝子特異的プライマーを用いますが、2ステップRT-PCR反応ではその他のプライマーを使用できます。

オリゴ(dT)プライマー

オリゴ(dT)プライマーはmRNAに特異的であり、同一のcDNAプールから多数の異なるターゲットを測定できることから、2ステップcDNA合成で良く使用されます。しかし、これらのプライマーでは常にトランスクリプトの3´末端側から逆転写が開始されるため、複雑な二次構造があると不完全長cDNAの合成につながります。FFPEから抽出したRNAなど、断片化したRNAでオリゴ(dT)によるプライミングを行った場合も問題が起こる可能性があります。とはいえ、PCRプライマーがターゲットの 3´ 末端近くに設計されている限り、それよりダウンストリームの部位で逆転写が中途終了しても大きな問題にはなりません。

様々なタイプのオリゴ(dT)プライマーをご利用いただけます。Oligo(dT)20は、20-merのチミジンの均一なミックスで、oligo(dT)12–18 は12-merから18-merのチミジンのミックスです。最後に、アンカーオリゴ(dT)プライマー は、確実に3´末端のUTR/ポリAジャンクションへアニールし、ポリAスリップが起こらないよう設計されています。最適なオリゴ(dT)プライマーは、逆転写の温度に依存する部分があります。短いプライマーに比べ、長いプライマーは温度が上がってもより強くアニールしているため、SuperScript® III Reverse Transcriptaseのように熱安定性の高いRTでは長いプライマーの方がより良い結果を得られる可能性があります。

リアルタイムPCRの実験で18S rRNAをノーマライゼーションに用いる場合、オリゴ(dT)プライマーは18S rRNAにアニールしないため、この場合オリゴ(dT)プライマーのみでcDNA合成を行うことは推奨しません。

ランダムプライマー

ランダムプライマーは広範なcDNAプールを合成するのに適しています。またランダムプライマーは、ターゲット分子の全域にアニールするためバクテリアRNAのようにポリアデニル化されていないRNAに最適です。遺伝子特異的なプライマーおよびオリゴ(dT)プライマーとは異なり、FFPEサンプルのように分解が進んだトランスクリプトおよびRNA内の二次構造もランダムプライマーでは大きな問題になりません。

cDNAの収量が増えるという利点はあるものの、ランダムプライマーを用いてリアルタイムRT-PCR 実験を行った場合実際よりもコピー数を過大評価する可能性があるというデータがあります。ファーストストランドcDNA合成反応においてランダムプライマーおよびオリゴ(dT)プライマーを同時に使用すると両プライマーの長所が組み合わされ、データ品質が高まることがあります。ランダムプライマーは2ステップqRT-PCR反応でのみ使用します。