タンパク質の転写はウェスタンブロット分析での重要なステップの1つであり、そこでは、電気泳動によりゲル内で分離されたタンパク質を固体支持マトリックスに転写する処理などが行われます。タンパク質を固体支持マトリックスに固定することで、目的のタンパク質に適合する抗体を用いた特異的タンパク質の検出が容易になります。典型的な固相マトリックスのメンブレンシートには、ニトロセルロース、PVDF、ナイロンが使われています。この記事では、転写メソッドの評価と比較を行い、またメンブレンの特性や、特定のものを選ぶべき理由、そしてウェスタンブロットでの転写に用いられるさまざまな転写バッファーのレシピについても説明しています。

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概要

タンパク質のウェスタンブロッティングは1979年にTowbinらによって導入され、現在ではタンパク質分析の日常的かつ基本的な手法になっています。ウェスタンブロッティングは、タンパク質ブロッティングや免疫ブロッティングとも呼ばれ、メンブレンに結合した目的のタンパク質を抗体を用いて検出します。抗体-抗原相互作用の特異性を利用することで、細胞や組織ライセートなどの複雑なタンパク質が混合した状態から、目的のタンパク質を検出することができます。ウェスタンブロッティングを使用すると、目的のタンパク質に関する定性的および半定量的データを取得できます。

Three major steps in western blot analysis workflow- separate, transfer and detect.
ウェスタンワークフローの主要ステップ:分離、転写、検出。

ウェスタンブロッティングの手法における最初のステップは、変性ゲル電気泳動(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動の頭文字からSDS-PAGEとも呼称)またはネイティブPAGEを用いて、サンプル中のタンパク質をサイズごとに分離することです。電気泳動後、分離されたタンパク質は、固相支持マトリックスであるニトロセルロースまたはポリフッ化ビニリデン(PVDF)のメンブレンに転写(ブロット)されます。タンパク質分離を必要としない場合は、ドットブロッティングと呼ばれる方法を用いてサンプルを直接メンブレン上にスポッティングすることもできます。

ゲルからメンブレンへのタンパク質転写が必要な理由としては次の2つが挙げられます。

  1. 脆弱なゲルと比較してメンブレンの方が扱いやすい
  2. 抗体のような高分子による膜上の標的タンパク質のアクセス性を向上させる。

転写後は、抗体のメンブレン表面への非特異的結合を防ぐために、ブロッキングという操作をする必要があります。転写したタンパク質はその後、抗体と検出プローブ(酵素、フルオロフォア、同位体など)を使用してプローブが実施されます。次に、適切な方法を用いてローカライズされたプローブを検出し、標的タンパク質の位置と相対的存在量を記録します。

課題となるのは、タンパク質ブロッティングワークフローにおける免疫検出であり、これに加えて、ゲルマトリックスからメンブレンへのタンパク質の転写も潜在的なハードルの1つとなっています。タンパク質の転写効率に影響する可能性がある要素としては、化学的性質、ゲルの厚さ、転写するタンパク質の分子量、メンブレンの種類、用いる転写バッファー、転写メソッドが挙げられます。

転写メソッド

転写メソッドには、拡散転写、キャピラリートランスファー、熱加速対流転写、真空ブロッティング、電気ブロッティング(電気転写)など、さまざまな方式があります。これらのメソッドの中でもっとも一般的なものが電気ブロッティングであり、ウェスタンブロッティングでも頻繁に利用されていますが、その理由は他の方法よりも高速で効率的だからです。タンパク質をSDS-PAGEないしネイティブゲルからメンブレンへ電気転写する方法には次の3つがあります。

電気ブロッティング

電気ブロッティングまたは電気転写と呼ばれる手法は、電気泳動時にタンパク質がゲル外へ移動する速度の違いを利用しています。このテクニックでは、ニトロセルロースメンブレン、PVDFメンブレン、その他の適切なタンパク質結合担体に、タンパク質を含むポリアクリルアミドゲルを直接接触させます。次に、ゲルとメンブレンのペアが“サンドイッチ”されるように2つの電極の間に配置しますが、通常これらは導電性溶液(転写バッファー)に浸されています。電界をかけることで、タンパク質はゲルからメンブレン表面に移動し、その位置に安定して付着します。こうして得られるメンブレンは、かつてはポリアクリルアミドゲル中にあったタンパク質の分布パターンのコピーになっています。

Schematic of western blot transfer of proteins from a polyacrylamide gel to a membrane

ポリアクリルアミドゲルからメンブレンへのタンパク質のウェスタンブロット転写の模式図。

ウェット式またはタンク式転写

ウェット式転写を行う場合は、最初にゲルを転写バッファーで平衡化します。次にゲルを“転写サンドイッチ”(フィルターペーパー-ゲル-メンブレン-フィルターペーパー)の状態に配置し、パッドを緩衝剤としてサポートグリッドで一緒にプレスします。サポートされたゲルサンドイッチを、タンク内にあるステンレススチール/白金ワイヤー電極の間に垂直に配置し、タンクに転写バッファーを充填します。

標準的な電界オプションで複数のゲルを電気転写できます。このオプションでは、一定の電流(0.1~1 A)または電圧(5~30 V)を用いて最短1時間から一晩をかけて処理をします。単一ゲル転写用の高電界オプションでは、転写時間を最短30分にまで短縮できますが、高電圧(最大200 V)または高電流(最大1.6 A)を必要とし、発生する多大な熱を消散させるための冷却システムも必要になります。

14~116 kDaのタンパク質で80~100%の転写効率を達成できます。転写時間が長くなるにつれて転写効率は向上し、通常は高分子量タンパク質よりも低分子量タンパク質の方が転写効率は良好です。ただし時間が長くなると、タンパク質がメンブレンを通過してしまう過剰転写(ストリッピング、ブロースルー)のリスクが生じることになり、特に孔径が大きいメンブレン(0.45 µm)の使用時には低分子量(<30 kDa)タンパク質で危険性が顕著です。

Order of assembly of western blotting stack for wet transfer

電極の位置に対するゲルの位置、転写メンブレン、およびタンパク質の方向を示した一般的なタンク転写ウェスタンブロット装置の組み立て模式図です。

セミドライ電気ブロッティング(セミドライ転写)

セミドライ式タンパク質転写では、転写サンドイッチが2つのプレート電極の間に水平に配置されます。ゲルの周囲ではなくゲルを通過する電流を最大化させることで、転写速度はウェットタンクよりも向上します。これを行うため、転写に用いるバッファーの量は、転写サンドイッチにちょうど浸み込む量に調整します。このテクニックで重要なのは、メンブレンとフィルターペーパーがはみ出さないようゲルサイズにカットすること、そしてゲルとフィルターペーパーを転写バッファーで完全に平衡化することです。一般的に使用されているのは、転写バッファーをより多く保持できる極厚フィルターペーパー(約3 mm厚)です。

メタノールを含んだ転写バッファーもありますが、通常は使用しません。電気転写は、一定の電流(0.1~0.4 A)または電圧(10~25 V)で、10~60分間行います。高速ブロッティング手法では、メタノール不使用でイオン強度の高い転写バッファーと高電流電源を使用し、転写時間を10分未満に短縮します。高速メソッドでは、電流を一定のアンペア値に維持し、電圧は最大25 Vに制限します。

Semi-dry transfer stack assembly using the Invitrogen Power blotter

セミドライ電気ブロッティング転写。Invitrogen Power Blotterは、10~300 kDaのタンパク質のポリアクリルアミドゲルからニトロセルロースまたはPVDFメンブレンへのセミドライ転写を5~10分で迅速に実施できるよう、特別に設計されています。Power Blotterの一体型電源は、一般的に使用されているプレキャストゲルまたは自家製ゲル(SDS-PAGE)と、ニトロセルロースまたはPVDFメンブレンとともに使用した際に、高効率で一貫性のあるタンパク質転写が可能となるよう最適化されています。

ドライ電気ブロッティング(ドライ転写)

ドライ電気ブロッティング法では、従来の転写バッファーを使用しない革新的なコンポーネントを含んだ特殊な転写サンドイッチを使用します。バッファータンクや湿潤済みフィルターペーパーの代わりに、バッファーを組み込んだ独自のゲルマトリックス(転写スタック)を使用します。ゲルマトリックス中の高いイオン密度により、迅速なタンパク質転写が可能です。ブロッティング中、銅製の陽極は水の電気分解による酸素ガスを生成しないため、ブロットの歪みが低減されます。ウェット式およびセミドライ式などの従来のタンパク質転写テクニックでは、酸素を生成する不活性電極を使用しています。短い電極間距離、強い電界強度、および高電流により、転写時間は通常は短縮されます。バッファー調製が不要である分、セットアップ時間とクリーンアップ時間は他の転写メソッドと比較して大幅に短縮されます。

ウェスタンブロットの転写メソッドの比較:ウェット、セミドライ、ドライ転写メソッド

タンパク質をゲルからブロッティングメンブレンへ効率的かつ高い信頼性で転写することは、ウェスタン検出試験を成功させるための基礎になります。結果の精度は、ウェスタンブロッティング法の転写効率に左右されます。従来のウェット式転写は効率的には優れていますが、時間と労力がかかります。セミドライブロッティングが従来のウェット転写よりも利便性と時間節約の点で優れている理由は、各種タイプのバッファーシステムを使用でき、事前組立済みまたは独自作成の転写スタックを使用できる柔軟性を備えているためです。しかしセミドライ転写では、分子量が大きなタンパク質(>300 kDa)の転写効率が低下する可能性があります。ドライ電気ブロッティングでは、高速かつ高品質な転写を実現でき、またバッファーを追加する必要がないことによる利便性も得られます。

 

ウェット転写

Invitrogen Mini Gel tank with Mini Blot Module

セミドライ転写Invitrogen Power Blotter, Semi-dry transfer systemドライ転写iBlot 3 device
転写時間30~20分7~10分最短3分
転写バッファーの要件メタノールが必要(約1,000 mL)メタノール非含有の転写バッファー(約200 mL)バッファー不要
スループット+++++++++
パフォーマンス(転写効率)++++++++
使いやすさ++++++++
クリーンアップ有害なメタノールの廃棄処理など、使用ごとにおおがかりなクリーンアップが必要使用ごとに軽度のクリーンアップが必要ほぼ不要
特記事項長時間の転写には冷却が必要な場合ありTowbinバッファーを含む複数のメソッドを使用可能転写スタックが必要
protein transfer comparison

その他の転写メソッド

拡散ブロッティング

拡散ブロッティングは分子の熱運動を利用した方式で、これを用いて分子を高濃度域から低濃度域に移動させます。ブロッティングメソッドでの分子の転写においては、タンパク質は拡散によってゲルマトリックスから移動し、転写メンブレンに吸着します。吸着したタンパク質が溶液から“除去”されることで、濃度勾配を維持しやすくなり、これがタンパク質のメンブレン側への移動を促進します。拡散ブロッティングはもともと(等電点電気泳動)IEFゲルからのタンパク質の転写用に開発されたものですが、他の高分子、特に核酸にも有用です。拡散ブロッティングの有用性が最大限に発揮されるのは、単一ゲルから複数の免疫ブロットを調製する場合です。この方法で得られたブロットは、質量分析によるタンパク質同定や、酵素電気泳動によるタンパク質分析にも使用できます。タンパク質の回収率は通常、転写可能な総タンパク質の25~50%であり、他の転写メソッドと比べ低い傾向にあります。さらに、タンパク質の転写は定量的ではありません。拡散ブロッティングは、SDS-PAGEゲル内の非常に大きなタンパク質には適しませんが、比較的小さなタンパク質は、簡単に転写できます。

真空ブロッティング(真空キャピラリーブロッティング)

真空ブロッティングはキャピラリーブロッティングの一種であり、リザーバーからのバッファーが、ゲルとブロッティングメンブレンを通じて、乾燥したティッシュペーパーなどの吸湿材に取り込まれます。真空ブロッティングでは、スラブゲル乾燥システムなどの適切なゲル乾燥装置を用いて、ゲル中のポリペプチドをニトロセルロースなどのメンブレンに引き込みます。高真空にするとゲルや転写メンブレンが損傷するため、強力なポンプは使用できません。真空状態で45分経過するとゲルが乾燥する場合もあり、十分なリザーブバッファーが必要です。転写後にゲルがメンブレンに付着する傾向も見られますが、ゲルを再水和させることで分離は容易になります。

真空ブロッティングの転写効率は30~65%の範囲で変動し、低分子量タンパク質(14.3 kDa)はこの効率範囲の上限側、高分子量タンパク質(200 kDa)は下限側に位置します。拡散ブロッティングと同様に、真空ブロッティングでは定性的な転写のみが可能です。

ウェスタンブロット転写の条件

転写時に適用される電圧と時間は、転写メソッドに応じて異なります。以下にまとめたのは、さまざまな転写メソッドで用いられる条件の例です。ターゲットとするタンパク質の分子量に応じて、転写時間を短縮(低分子量タンパク質)または増加(高分子量タンパク質)することで、転写の効率をより改善できます。

ウェスタンブロットでの転写の電圧と時間

メソッド条件時間
ウェットタンク転写
Mini Gel Tankニトロセルロース:10 V60分
PVDF:20 V60分
XCell SureLockミニセルTris-Glycine & Tricine:25 V1~2時間
Bis-Tris & Tris-Acetate:30 V60分
SureLock Tandem Midi Gel Tankすべてのゲルおよびメンブレン:25 V30分
セミドライ転写
Preassembled transfer stacks(陰極とおよび陽極バッファー内蔵)1.3 A5~12分
高イオン性バッファー(1ステップ転写バッファー1.3 A7~12分
Towbinバッファー(標準セミドライ転写)25 V60分
ドライ転写
iBlot Transfer Device25~30 V3~8分

ブロッティング用メンブレン

ウェスタンブロッティングでもっとも一般的に用いられている固定化メンブレンは、ニトロセルロース、PVDF、ナイロンです。これらのメンブレンが一般的に使用されている理由は、以下の特長を備えているためです。

  • 体積に対する表面積の比率が大きい
  • 結合能力が高い
  • 転写後の分子を長時間安定化させる
  • 使いやすい
  • 最適化によりバックグラウンドシグナルの抑制と再現性向上が可能

通常、ウェスタンブロットのメンブレンはシートまたはロールの形態で提供され、一般的なものは厚さが100 µm、孔径は0.1、0.2、0.45 µmのいずれかです。大部分のタンパク質は孔径0.45 µmのメンブレンを用いることで良好にブロットできますが、低分子量のタンパク質またはペプチド(<20 kDa)では孔径0.1または0.2 µmのメンブレンが推奨されます。

ニトロセルロースメンブレン

ニトロセルロースメンブレンは、高いタンパク質結合性、さまざまな検出メソッドとの適合性、またタンパク質および糖タンパク質に対する固定化能力を備えており、タンパク質ブロッティングによく用いられるマトリックスです。ニトロセルロースメンブレンは、サザンブロットとノーザンブロットおよび、アミノ酸分析、ドット/スロットブロットでも使用されます。ニトロセルロースメンブレンのタンパク質結合能は80~100 µg/cm2です。タンパク質の結合は疎水性相互作用により起きると考えられ、高塩濃度と低メタノール濃度は電気泳動転写時のタンパク質、特に分子量の大きなタンパク質のメンブレンへの固定化を向上させます。ニトロセルロースメンブレンが広範に利用され続けている理由は、不可逆的なタンパク質結合の効率が高いためです。

PVDFメンブレン

PVDFメンブレンは、タンパク質や核酸に対する高い結合親和性を有しており、ウェスタン、サザン、ノーザン、ドットブロットなどのアプリケーションに使用されています。PVDFメンブレンは疎水性が高いため、転写バッファーに浸す前にメタノールまたはエタノールであらかじめ湿らせておく必要があります。これらのアプリケーションでの結合は、主として双極子および疎水性の相互作用を介して起こります。PVDFメンブレンのタンパク質結合能は170~200 µg/cm2であり、吸着タンパク質の保持力は他の担体より優れていますが、これは高い疎水性に起因します。PVDFメンブレンはその疎水性により、疎水性タンパク質(膜タンパク質)に適した選択肢となっています。PVDFはニトロセルロースほど脆弱ではなく、抗体の組み合わせを変更しつつ異なるターゲットに対して複数回の再処理(ストリッピングおよびリプロービング処理)を必要とするウェスタンブロッティング試験で有用性を発揮します。

ナイロンメンブレン

荷電したナイロン(ポリアミド)メンブレンでのタンパク質と核酸の結合は、イオン性、静電性、疎水性の相互作用によるものです。ナイロンメンブレンの感度は非常に高く、一貫した転写結果が得られ、タンパク質結合能は480 µg/cm2です。ナイロンメンブレンは耐久性が高く、ストリッピングとリプロービングの手順を必要とするウェスタンブロッティング試験に適しています。ナイロンメンブレンをブロッティングアプリケーションに使用する際の重大な欠点は、非特異的な結合が生じる可能性と、SDSなどの陰イオンに対する強い結合性です。

ブロッティングメンブレンの比較

メンブレンの選択においては、タンパク質の特性(電荷や疎水性)とダウンストリームのアプリケーションによって、使用すべきメンブレンが決まります。最適なメンブレンを見つけるには、目的のタンパク質を複数のメンブレンで試験することが必要な場合もあります。個々のメンブレンの特性および長所と短所を把握しておくことは、アプリケーションに最適なフォーマットの特定に役立ちます。

 リプローブ特性結合相互作用結合能利点欠点
ニトロセルロースストリップしてリプローブ可能疎水性および静電性80~100 µg/cm2バックグラウンドが低くなる傾向脆弱なためストリッピングとリプローブでの使用が制限される
PVDFストリップしてリプローブ可能疎水性170~200 µg/cm2ニトロセルロースより耐久性が高い傾向使用前にメタノールまたはエタノールでの事前湿潤が必要
ナイロンストリップしてリプローブ可能イオン性、疎水性、静電性480 µg/cm2.高い耐久性強陰イオンへの非特異的結合が高い

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転写バッファー

ウェット式転写メソッドでは、数種類の転写バッファーが使用されています。使用すべきバッファーのタイプは、目的とするタンパク質、ゲル緩衝系、転写メソッドによって異なります。

ほとんどの試験において、SDSはウェスタン転写バッファーに加えません。これは、タンパク質に与えられたSDSによる負電荷により、タンパク質がメンブレンを通過してしまう可能性があるためです。通常は、タンパク質を効率的にゲルからメンブレン担体に転写するための十分なSDSがSDS-PAGEゲル内に存在します。沈殿傾向のあるタンパク質の場合、低濃度のSDS(<0.01%)の添加が必要となる場合もあります。転写バッファーにSDSを加える場合は、他の転写パラメーター(時間や電流など)の最適化が必要になります。これは、メンブレンを通じたタンパク質の過剰な転写(別名“ブロースルー”)を防ぐためです。

メタノールはほとんどの転写バッファーに含まれていますが、これはSDS-PAGEで分離されるタンパク質からのSDSの除去にメタノールが寄与するためであり、これによりメンブレン担体への結合能が高まります。ただしメタノールには、ダウンストリームでの分析に必要な酵素を不活性化する危険性があり、ゲルやメンブレンを収縮させる場合もあるため、メタノール内での溶解性が低い高分子タンパク質(50 kDa)の転写時間を増加させる可能性があります。一方、メタノールがない場合、イオン強度の低いバッファーではタンパク質ゲルが膨潤する可能性があることから、バンドの歪みを防ぐため、事前にゲルを30分から1時間膨潤させておくことが推奨されます。

ウェット式転写での一般的な転写バッファー

転写バッファー組成ゲルシステム適用
Towbin転写バッファー25 mM Tris-HCl、192 mM Glycine、20%(v:v)メタノール、pH 8.3Tris-GlycineゲルTricineゲル 
CAPS転写バッファー10 mM CAPS、10%(v:v)メタノール、pH 10.5Tris-GlycineゲルTricineゲル標的タンパク質はpI >8.5、Edmanタンパク質シーケンシングの実行
Bis-Tris転写バッファー25 mM Bicine、25 mM Bis-Tris(遊離塩基)、1 mM EDTA、20%(v:v)メタノール、pH 7.2Bis-TrisゲルTris-Acetateゲル、Tris-Glycineゲル転写中のタンパク質の修飾制限が必要、Edmanタンパク質シーケンシングの実行

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推奨参照文献

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その他のリソース

For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.