電気系統および火災の危険性など、一般多数の職場に共通する安全性リスクに加えて、細胞培養実験室には、毒性、腐食性、または変異原性を有する溶媒および試薬、ヒトまたは動物の細胞および組織を扱い、操作することに伴う多くの特殊な危険が存在します。  共通する危険としては、シリンジニードルまたは他の汚染された鋭利なものによる穿刺事故、皮膚または粘膜上へのこぼれやはね、口でのピペット操作による飲み込み、感染性エアロゾルの吸入曝露があります。

バイオセーフティープログラムの基本的な目的は、潜在的に有害な生物学由来物質への実験従事者および外部環境の曝露を低減、または排除することです。  細胞培養実験室における安全のもっとも重要な要素は、標準的な微生物学的慣行と技術に厳格に遵守することです。

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バイオセーフティーレベル

バイオセーフティーに関する情報は、日本では、厚生労働省所管の国立感染症研究所による国立感染症研究所病原体等安全管理規定(第三版)に記載されています。  この文書では、バイオセーフティーレベル 1 から 4 で表される4段階の封じ込めレベルが規定されており、特定の物質の取り扱いに関連するリスクレベルに応じた、微生物学的慣行、安全装置および施設の安全対策について説明があります。

バイオセーフティーレベル 1(BSL-1)

BSL-1 はほとんどの研究実験室および臨床検査室に共通する保護の基本レベルであり、正常で健康な人に疾病を引き起こすことが知られていないものに適しています。
バイオセーフティーレベル 2(BSL-2)

BSL-2 は、摂取、または経皮や粘膜への曝露により重症度の異なるヒトの疾患を引き起こすことが知られている中等度のリスクのものに適しています。  ほとんどの細胞培養実験室はBSL-2 以上のレベルですが、正確な要件は使用する細胞株と実施する作業の種類によって異なります。
バイオセーフティーレベル 3(BSL-3)

BSL-3 は、空気感染の可能性があることが知られている常在性または外来性の病原体、および重篤で潜在的に致死的な感染を引き起こす可能性のある病原体に適しています。
バイオセーフティーレベル 4(BSL-4)

BSL-4 は、空気感染により生命を脅かす疾患を引き起こす個人的リスクが高く、および感染した場合に治療法がない外来性の病原体に適しています。  これらの病原体は、封じ込めレベルが高い研究所に制限されています。

安全データシート(SDS)

安全データシート(SDS)は、物質安全データシート(MSDS)とも呼ばれており、特定の物質の特性に関する情報が含む書式です。  SDS には融点、沸点、引火点などの物理的データや、物質の毒性、反応性、健康への影響、保存および廃棄に関する情報に加え、推奨される保護装置および漏出の際の取り扱い方法などが含まれています。  

当社の全製品に関する SDS は、www.lifetechnologies.com/sdsから入手可能です。

安全装置

細胞培養実験室の安全装置には、バイオ安全キャビネット、密閉容器、および有害物質への曝露を除去または最小限に抑えるように設計されたその他の工学的制御装置などの一次バリア、ならびに一次バリアとともに使用されることが多い個人用防護具(PPE)があります。  バイオ安全キャビネット(すなわち、細胞培養フード)は多くの微生物学的手順で生成される感染性飛沫やエアロゾルを封じ込めるだけでなく、細胞培養の汚染を防ぐためのもっとも重要な装置です。  詳細については、細胞培養フードをご覧ください。

個人用防護具(PPE)

個人用防護具(PPE)は人員と有害物質との間に直接的な障壁を形成し、手袋、白衣およびガウン、靴カバー、ブーツ、保護マスク、フェイスシールド、安全眼鏡またはゴーグルなどの個人保護用のアイテムが含まれます。  多くの場合、PPE はバイオ安全キャビネットおよび取り扱う菌または物質を封じ込める他の装置と組み合わせて使用されます。

研究所における PPE の適切な使用法については、所属機関のガイドラインを参照することをお勧めします。