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SiteClick™ システムは、新しいタイプの部位特異的な抗体標識キットです。クリックケミストリ法と酸素反応を組み合わせ、抗体分子の重鎖N-結合型グリカンを特異的に標識します。煩雑で一貫性を欠きがちな従来の抗体標識法と比較して、SiteClick™ は部位特異的で、再現性の高い抗体標識が行えます。Qdot® やR-PEなど、標識分子の選択肢も豊富なので、さまざまなアプリケーションに対応します。
クリック反応とは?
簡単で安定な結合を作るいくつかの反応から、新たな機能性分子を作り出す反応です。名前の「クリック」とは、シートベルトがカチッと音を立ててロックされるように、素早く確実な結合を作る様子をたとえています。アルキンとアジド化合物による反応は、その代表的反応の一つであり、SiteClick™ システムも、この反応を利用しています。
SiteClick™ 標識法の利点
SiteClick™ システムを使う部位特異的な標識法は(図1)、従来のアミンあるいはチオール反応性標識試薬でおこりがちな抗原結合ドメインへの影響を抑えます。修飾前に遺伝子操作で標識部位を抗体に組み込む必要がなく、抗体結合ドメイン内や周辺にリジン残基を含むモノクローナル抗体の標識において、特に有効です。なぜなら、抗原結合ドメインが標識されると抗原結合が妨害されたり、モノクローナル抗体の場合には、還元システイン標識に使用されるジスルフィド結合還元試薬に対する感受性に差があり、部分的に単離した抗体の断片が残ることで、抗体との結合や収量が減少する危険があるからです。SiteClick™システムでは、標識分子は抗原結合ドメインから物理的に離れた重鎖N-結合型グリカンに部位特異的に結合します。標識を行うたびに、そして異なる抗体間でも優れた再現性が得られます。重鎖グリカンには、フィコビリタンパク質(R-PEなど)や、Qdot® プローブ、蛍光色素、金属キレート化合物およびその他の小分子(ビオチンなど)など様々な標識分子が部位特異的に結合できるので、同じ動物種で作成した異なる抗体によるマルチプレックス解析が可能です(図2)。
抗体グリカンを部位特異的に標識
通常、IgG抗体の重鎖Fcドメインには、特定のアスパラギン酸残基に結合した2つのN-結合型グリカンが保存されています。これらの糖鎖の大半は、2つの末端分岐をもつ複雑な二分岐グリカンで、このグリカン分岐の末端配列を含め、非常に均一な構造をしています [1]。抗体のグリカン分岐のほとんどの末端は、ガラクトース-N-アセチルグルコサミン(Gal-GlcNAc-)あるいはN-アセチルグルコサミン(GlcNAc-)であり、この末端 Gal残基をβ-ガラクトシダーゼで除去することで、ほとんどの末端GlcNAc標識部位が露出し、β-ガラクシトル トランスフェラーゼ(GalT)酵素と反応します(図1)。ごく一部の抗体は、末端がシアル酸ですが、ライフテクノロジーズの実験では、末端シアル酸残基を除去しても、最終的な抗体標識の程度にはほとんど差がないことを確認しています。β-ガラクトシダーゼによる末端Gal残基除去後、各々のN-結合型グリカンには平均して重鎖あたり2つの末端GlcNAc 残基(抗体あたり4つの末端GlcNAc)が現れます。実際には、マウスやウサギのモノクローナル抗体標識の程度は、次のステップの蛍光DIBO色素の結合で決まりますが、一貫して抗体1分子あたり3~4分子の色素が結合します。SiteClick™法 は、様々な種類の生物種(ヒト、ウサギ、マウス、ラット、ヤギ、ハムスター、チキンなど)に対応します。しかもこの標識法は、IgG、IgM、IgYなど複数の抗体クラスにも有効です。チキン抗体には2つではなく6つの重鎖グリカンがあるため、より高い程度で標識できます。
GalT(Y289L)酵素標識化とクリック反応の組み合わせ
SiteClick™による酵素標識法では、修飾化したβ-GalT1酵素、GalT(Y289L)を使用します。これにより基質許容性が広がり、アジド化N-アセチルガラクトサミン(GalNAz)をN-結合型グリカンの末端GlcNAc 残基に特異的に結合します [2,3](図3)。アジドで活性化した抗体を、ジベンゾシクロオクチン(DIBO)-官能基化分子と銅触媒フリーで反応させることで、 DIBO検出分子とアジド化抗体の間で強力な安定した結合が生まれます [4]。このように、SiteClick™システムはGalT(Y289L)酵素による標識とクリック反応を組み合わせることで、生物種や抗体クラスに関わらず、高効率で再現性が高い、部位特異的な抗体標識を実現します(図4)。
参考文献
関連リンク