遺伝子治療の基礎研究をサポートするTalii™イメージベースサイトメーター

菅野江里子氏 (岩手大学 工学部 応用科学・生命工学科 視覚神経科学研究室 特任准教授)

「見えない人の生活は、想像もできないくらい大変ですよね。そういう方が、もう一度光を感じる事ができないか、そんなことを思いながら研究しています」と語るのは、菅野氏。同じ研究室の富田浩史教授と共に、クラミドモナスの眼点から単離されたチャネルロドプシン遺伝子を利用する遺伝子治療法の開発を目指して基礎研究を行っています。「この遺伝子は光受容とシグナル伝達の両方の機能を持っていて、網膜細胞に導入することで、その両方の機能を同時に働かせたいと思っています。そのために遺伝子を改変したり、導入に適したウイルスベクターを選択したりと、様々な条件検討を日々行っているんですよ」。作成した様々なウイルスは実験動物に感染させて評価するので、そのためにはウイルスの力価をルーチンに確認する必要があります。
「ウイルスの力価の評価には、ELISA法とフローサイトメーターを使う方法が一般的ですが、ELISA法はウイルスの外皮タンパク質の量で評価とするので、実際の感染効率を反映しない場合があります。現に私たちが用いるアデノ随伴ウイルスでは、外皮タンパク質だけの空っぽの非感染性ウイルスが存在し、この方法が使えないことがわかりました。また一般的なフローサイトメーターは、操作が煩雑で、専任スタッフや使用前後の機器の調整や洗浄に時間がかかるなど、いくつものハードルがあります。しかも共同機器として使用する場合には、サンプルが感染細胞だと使いづらい面がありますね」と問題点を指摘します。そして次のように語ります。「その点、Tali™イメージベースサイトメーターは、ベンチトップサイズなので、感染細胞を扱う培養室内に設置して気軽に感染効率をチェックできます。まるでセルカウンターを使うような感覚で。しかも予算的にも助かりました」と語ります。
日本での失明者数は、約19万人にも上るそうです。さまざまなアプローチで基礎研究が治療法開発に貢献できること、そしてその研究にTaliサイトメーターが役立つことを願ってやみません。

参考文献

  1. 「Tali™イメージベースサイトメーターを用いたウイルスベクター力価計測」菅野江里子
    ライフテクノロジーズ Voice of Customer(2012)

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