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ヒト幹細胞の基礎研究を、より効率的に応用研究へつなげたい!
横尾誠一 氏( 東京大学医学部附属病院 眼科・視覚矯正科 ティッシュエンジニアリング部)
角膜の上皮が事故や病気で傷つき供給されなくなってしまう角膜上皮幹細胞疲弊症。 この病気で失明した患者さんの回復を目指し研究に邁進するのが、東京大学医学部の 横尾誠一氏です。傷ついていない片方の目から組織を少量採取し、角膜上皮幹細胞を 単離。そこから角膜上皮の細胞シートを培養して患者に自家移植することを目指して、 研究を進めています。
無血清・フィーダーフリー培養のメリット
横尾氏は2005年に世界で初めてヒトの成体角膜から幹細胞を安定して単離することに成功。2007年には、ウシ血清やフィーダー細胞を必要としない、角膜上皮細胞シートの新しい培養方法を確立しました。このとき用いたのがB-27 ®Serum Free Supplement。「動物由来の血清は感染症リスクや製品ロットごとの品質のばらつきが指摘されますが、無血清サプリメントではそれらのリスクは最小限に抑えられます。人間の生存に必要な必須栄養素であるレチノールを含むことからも、B-27に目をつけました」と横尾氏。B-27はもともと神経細胞の長期培養用に開発され、現在はiPS細胞など広範囲な幹細胞培養にも利用されています。「培養法のノウハウを外に出さないケースもありますが、誰にでも細胞シートを作れるように気軽に使いやすい市販品を選びました」と横尾氏は語ります。
応用研究を見据え、Xeno-Freeを使いはじめる
いま日本では、再生医療の実現に向けさまざまな法整備が進んでいます。この流れに沿って、横尾氏は、1 年前からヒト以外の種の成分を含まないB-27®Supplement, XenoFree CTS™を導入しました。「基礎研究の段階からXeno-Freeを用いれば、応用研究の際に必要となる安全性の検査コストと労力を大幅に減らせます。『ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針』に沿って申請した私たちの研究計画は、今年の3月に承認されました。研究費も確保できたので、今年度中に1例実施予定です」と横尾氏。
再生医療の基礎固めをする
角膜から単離した幹細胞は、応用研究に限らず新薬の薬効検査のような基礎研究にも使えるといいます。より身近な再生医療の実現と、基礎研究の地固めに、期待が寄せられます。
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