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坂井和子 氏 ( 近畿大学医学部ゲノム生物学教室助教)
がんの体外診断の開発を見据え、バイオマーカーとなるDNA変異を探索している近畿大学医学部ゲノム生物学教室。その基礎研究を支えているのが次世代シーケンサIon PGM™ システムです。ヒトゲノム上の複数領域をマルチプレックスでシーケンスできるIon AmpliSeq™ 技術を導入し、肺がんをはじめ肝がん、大腸がん、乳がんで、がん関連遺伝子の変異検出をおこなっています。Ion PGM™ システムを使いこなし、1年に400~500サンプルは解析するという坂井和子氏にお話を伺いました。
有望なバイオマーカーを探す
肺がん治療薬イレッサがEGFR遺伝子変異をもつ症例で奏効するとの論文が2004年に報告されてから、抗がん剤に対する感受性と遺伝子変異との関係が徐々にわかってきました。EGFR遺伝子変異のようなバイオマーカーでがんの体外診断ができれば、一人ひとりの患者に合わせた分子標的薬を選択できます。「有望なバイオマーカーの探索には網羅的解析が有効な手段となりますが、リアルタイムPCRでは既知の変異しか確認できません。これに対してIon PGM™ システムはDNA配列を直接読み取るので、多検体の新規の変異を同時に検出できるのが強みですね」と坂井氏。
10ngの微量DNAでも検出可能
解析する肺がんサンプルの多くは、がん患者のバイオプシー(生体組織診断)で得られたパラフィン包埋の組織検体です。1枚のサンプルから抽出できるDNAは30~100ngほど。「貴重なサンプルをシーケンス解析だけで使い切りたくないので、10ngから検出できるIon PGM™ システムの解析能力は魅力でした」と坂井氏は語ります。Ion AmpliSeq™ 技術では、Cancer Hotspot パネル,Comprehensive Cancerパネル,Colon & Lung Cancerパネルという既製のキャンサーパネルに加え、カスタムパネルも積極的に利用しています。「融合遺伝子や抗がん薬耐性に関わる遺伝子をより効率的に探索できるようになりました。検出の高速化は将来的に、治療を待つ患者さんにとってメリットとなるでしょう」。
変異検出の技術を開発
ゲノム生物学教室では、変異検出の技術開発も並行して進めています。2014年4月のAACR( 米国癌学会)では、参画するOncoNetworkコンソーシアムと肺がん融合遺伝子パネルの共同開発について発表。Ion AmpliSeq™ RNA ケミストリに基づく肺がん融合遺伝子パネル(IonAmpliSeq™ RNA Lung FusionPanel)を用いてALK、ROS1、RETの融合遺伝子を検出した結果、従来のFISH法より効率的に変異が検出できることを示し、腫瘍RNAの1%以下でEML4-ALK融合遺伝子が検出することを報告しました。Ion PGM™ システムの使い勝手については、「慣れれば楽ですね。サンプル調製を自動化するIon Chef™ システムも導入したので、今後さらに時間を短縮できるでしょう」と微笑む坂井氏。バイオプシー検体の解析のみならず、採血で得られる血漿のDNAを解析するCell free DNA(cfDNA)の研究も手がけます。「私たちの基礎研究を、患者さんへの負担が少ない診断ツール開発へと橋渡ししたいのです」と話す坂井氏。最新の技術を駆使して医療への貢献を目指しています。
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