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陰イオン分析は、サンプル中に存在する陰イオンの同定(定性分析)、または存在する陰イオン量の測定(定量分析)にすぎないことがあります。従来の湿式化学では、比色分析法を使って、陰イオン組成を同定、定量してきました。陰イオン交換クロマトグラフィーまたはイオンクロマトグラフィー(IC)などの最新の陰イオン分離技術は、サンプル中の陰イオンを分離するだけではなく、各陰イオンを定量もできるため、10 ~ 30 分の 1 回の分析で多数の陰イオンの分析結果を得ることができます。
このページでは以下の内容をご紹介します。
米国 EPA メソッドの説明をご覧になり、臭素酸塩の分析法を選択してください。
総クロム分析、六価クロム規制、クロムスペシエーションの説明をご覧ください。
生成、健康への影響、規制、米国 EPA メソッドの説明をご覧ください。
飲料水の無機イオン規制、イオンクロマトグラフィーを使用した分析の説明をご覧ください。
クロムと臭素などのスペシエーションに用いるツールの説明をご覧ください。
硝酸塩と亜硝酸塩の還元、ミクロシスチンの分析、全窒素と全リンの還元の説明をご覧ください。
飲料水の含有規制、米国 EPA メソッド、土壌分析の説明をご覧ください。
環境分析に使われるその他の分析法と同様、サンプル調製、分離、検出、データ報告などのステップが必要です。
飲料水などのシンプルなサンプルマトリクスでは、適切な分析カラムとメソッドを選択すれば、マトリクス干渉の排除に十分であるため、サンプル調製が不要なことがあります。廃水などの高マトリクスサンプルでは、ろ過後のマトリクス除去がサンプル調製で重要なステップです。土壌サンプルの場合、マトリクスから分析種を抽出する必要が生じることがあるため、干渉の原因となる陰イオンを大部分除去します。
ほとんどの場合、マトリクスの除去により、分析対象の陰イオンとは異なる化学特性を持つイオンを除去して、干渉を防ぐことができます。固相抽出(SPE)は、干渉除去に最も広く使われる技術です。たとえば、水に溶解した疎水性化合物は、C 18ベースの樹脂を用いた逆相トラップカラムを用いて除去することができます。鉄(FE3+)などの金属陰イオンは、沈殿して分析カラムに詰まり、カラム寿命を縮めることがあります。特異的なインラインまたはオフライン SPE 技術を使うと、塩化物、硫酸塩、遷移金属などのサンプルマトリクスを効率よく除去できます。
最新の陰イオンクロマトグラフィーシステムは、高速かつ正確に陰イオンを分析します。システムは、以下の主要コンポーネントで構成されます。
オートサンプラー:オートサンプラーは、サンプルのローディングとリンスをサンプル間で自動的に実施して、信頼性と再現性の高い結果を得られるよう設計されています。オートサンプラーには、クロマトグラフィーアプリケーション用に一連のリキッドハンドリングステップがプログラムされているため、使いやすく、高いコスト効率を達成します。
オートサンプラーにより、サンプルをイオンクロマトグラフィーシステムに導入してサンプル分析を実施し、オンライン pH モニタリング、オンライン導電率測定、自動希釈、さらには標準曲線のオンライン生成までが可能です。以上の機能には、多くの利点があります。たとえば、注入前に導電率または pH の許容範囲を外れたサンプルがあれば、カラムに過負荷を与える可能性があるため、自動希釈ステップが自動的に起動します。これにより、カラムのファウリングを防ぎ、試薬の無駄を減らし、質の劣る使えないデータを排除します。
ポンプ:サンプルをカラムに流すためには、高品質のクロマトグラフィーポンプが不可欠です。その他の種類のポンプ(シングルピストンまたはデュアルピストン)は、アイソクラティックおよびグラジエント溶出手順の両方に利用できます。イオンクロマトグラフィーポンプはさまざまな流量を設定でき、PEEK などのメタルフリー材料を採用して、金属汚染を排除します。金属汚染は、カラムの詰まり、サプレッサー性能への干渉、電気化学検出器のファウルの原因となるおそれがあります。
溶離液:最新の IC 技術は、自動的に溶離液を生成するオプション(溶離液生成)を提供するため、手作業での溶離液調製によるエラーやばらつきを低減します。陰イオンクロマトグラフィーでは、水酸化物と炭酸塩の 2 種類の溶離液が広く利用されていますが、溶離液ジェネレーターカートリッジを利用して簡単に生成できます。溶離液電解生成の開発により、システムに水を加えるだけで、溶離液が自動かつオンラインで生成されます。濃縮溶液を溶離液の希釈に使用すると、大気中の二酸化炭素を吸収するため、効率が落ち、問題が発生します。二酸化炭素によりクロマトグラフィー結果が劣化し、常にオンラインで希釈した水酸化物溶離液となります。実際の溶離液生成は、希釈ではなく、オンラインで電解的に生成します。
カラム:カラムは、IC 分析の中核部分になります。陰イオン分析には、炭酸塩に最適化されたカラムと水酸化物カラムの 2 種類の IC カラムがあります。炭酸塩に最適化されたカラムは、炭酸塩、または炭酸塩/重炭酸塩溶離液を使って、シンプルなマトリクスの陰イオンをアイソクラティック分離するのに適しています。水酸化物に選択的なカラムは、水酸化物溶離液を使ったアイソクラティック分離とグラジエント分離の両方に適しており、通常炭酸塩に最適化されたカラムに比べて高い感度を発揮します。
カラム技術の進化によって、異なる化学特性を持つ樹脂を使った多様な陰イオン交換カラムが生まれました。異なる化学特性を持つカラムを、それぞれの分析種に合わせて選択できます。分離用のカラムを選択するには、以下のパラメーターを考慮します。
サプレッサー:1975 年に発売されたサプレッサーは、IC 分析でバックグラウンドの導電率を下げて、分析種の導電率を高めるという利点があります。 溶離液、分析種、マトリクス濃度に応じて、最適のサプレッサーを選択してください。また、有機溶媒を使用するか否かでも、好適なサプレッサーは異なります。電解再生サプレッサーを使用すると、サプレッサーの再生に必要な試薬の調製や供給が不要になります。旧式のサプレッサーでは有毒な試薬が必要でしたが、電解サプレッサーはプラグアンドプレイ方式のシンプルな装置です。
検出器: 従来の UV 検出器は、イオン交換クロマトグラフィーにより分離された分析対象のほとんどに発色団がないため、一般に陰イオン分析に不向きでした。現在では、陰イオン分析には主にサプレッサー付電気伝導度検出器を採用しており、先に説明したサプレッサーの利点が生かされています。紫外可視光検出を用いたポストカラム誘導体化にサプレッサー付電気伝導度検出器を組み合わせると、検出限界をさらに引き下げることができます。ポストカラム誘導体化は、臭化物やクロムなどの微量の汚染物質陰イオン分析に使用されています。
試薬フリーのイオンクロマトグラフィー(RFIC)および高圧イオンクロマトグラフィーを使うと、10 ~ 30 分でさらに微量な陰イオンを正確に測定できます。個別のニーズに応じて、RFIC や高圧システムなどの各種測定装置を選択して、感度を損なわずに高速処理能力を実現できます。
陰イオン分析の規制遵守では、データ解析とレポート作成が重要なコンポーネントです。手作業でスプレッドシートにデータを転送して、データ計算と評価を実施する必要があるというラボが少なくありません。そのため、人的エラーが発生しやすくなり、データバージョンの追跡も困難です。測定装置の管理、自動化、データ処理には、LIMS など、トータルなワークフロー管理に対応するインフォマティックシステムと統合できる高性能のソフトウェア情報システムが必要です。
臭化物や過塩素酸塩、およびハロ酢酸などの有機酸などの陰イオンは、ポストカラム誘導体化や測定機器を組み合わせて使わないかぎり、一次元クロマトグラフィーでは分離が困難です。二次元イオンクロマトグラフィー(2D-IC)は、このような陰イオンに対応する高度な分析法です。2D-IC では、一次分離カラムで分離できなかった分画を、選択性が異なる二次カラムにロードして、さらに分離します。2D-IC アプリケーションは、特に干渉を起こす陰イオン濃度が高い溶液で、微量の分析対象陰イオンを定量する際に、最適の結果を実現します。
サプレッサー付電気伝導度検出器のIC ではサンプル分析の分解能と感度が十分に得られない場合には、イオンクロマトグラフィー機器を質量分析計と組み合わせると(IC-MS、IC-MS/MS、または IC-HRAM)、微量の陰イオンを分析することができます。その例として、過塩素酸塩(IC-MS)、ハロ酢酸(IC-MS/MS)、メタボロミクスの有機酸(IC-HRAM)などがあります。
MS パラメーターが微量の分析種を検出するよう設定されている場合、MS 単独に比べて、IC-MS は干渉陰イオンの検出を抑えます。さらに IC メソッドは、高濃度の干渉陰イオンを廃棄に送るようセットアップできるため、シグナル抑制を防ぎます。そのため、高い正確性と再現性で結果を回収することができます。
スペシエーション分析では、ICP-MS を IC と組み合わせて(IC-ICP-MS)、クロムやヒ素などの 1 元素中の異なる陰イオン種を定量します。HPLC よりも IC を利用する利点には、IC カラムの選択性と IC および ICP-MS 間のインターフェースが容易な点です。サプレッサー付電気伝導度検出器を組み合わせると、分析種を水のバックグラウンドで ICP-MS に供給できるため、簡単に非苛性の ICP-MS のインターフェースとなります。
陰イオン分析に従来適用されてきた比色分析法は、使いやすく費用対効果が高いため、今も多くのラボで広く使われています。しかし、比色分析法を選ぶ際には、以下を念頭に置く必要があります。
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