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抗体の特異性の検証*では、非特異結合のない最高レベルの機能を確保することが重要です。遺伝的に操作したサンプルに対する抗体性能の検証は、抗体が特定のターゲットを認識していることを検証するための 1 つの方法です。マウスノックアウトモデル、ドミナントネガティブ突然変異体、モルフォリノ、siRNA、そして最近では遺伝子編集といったような、さまざまな方法を用いて行われます。
サーモフィッシャーサイエンティフィックは、最高の抗体の提供をお約束します。当社は現在、すべての Invitrogen 抗体ポートフォリオの再試験を行っており、そのターゲット特異性を検証しています。
CRISPR-Cas9 システムを使用することで、抗体特異性の検証における堅牢なコントロールとして役立つ、ノックアウト細胞モデルを作成できます。CRISPR-Cas9 システムでは、DNAの 切断において、CRISPR 関連 Cas9 エンドヌクレアーゼをターゲット遺伝子へと「案内」するために、ノンコーディングシングルガイド RNA(sgRNA)分子を使用します。DNA の切断はターゲット遺伝子のノックアウトを引き起こします。このように、適切な細胞モデルにおける目的タンパク質の発現を除去するために CRISPR-Cas9 技術が使用され、そのような細胞は抗体特異性の検証におけるネガティブコントロールとして使用できるのです。
CRISPR-Cas9 はまた、上流メディエーターの発現をノックアウトすることで、シグナル経路における複数のシグナルタンパク質に対する抗体特異性の同時検証にも使用できます。このようなマルチプレックス性により、合理的でハイスループットな抗体検証が可能となります。こういったアドバンテージにより、CRISPR-Cas9 技術は遺伝子操作による抗体検証における優れたソリューションとなっています。
CRISPR-Cas9ノックアウトによる抗体特異性検証のスキーム。
下の例では、Cas9 エンドヌクレアーゼを安定的に発現させた U2OS 細胞に、akt1 遺伝子をターゲットとする 3 つの異なる sgRNA を個別に、または組み合わせて、72 時間トランスフェクションを行いました。Invitrogen AKT1 マウスモノクローナル抗体(Cat.No. AHO1112) を用いたウェスタンブロッティング(WB)および免疫蛍光染色(IF)の検証を通して、タンパク質の発現が有意に減少していることが明らかとなっており、抗 AKT1 抗体の特異性は確認できています。WB に使用したライセートは、個々のクローンではなく、細胞集団の混合物由来であることに注意してください。AKT1 が完全に消失していないのは、そのためです。
ウェスタンブロッティング解析の CRISPR ノックダウンにより、AKT1 抗体の特異性が明らかとなりました。AKT1 のウェスタンブロッティング解析は、15 µg の U2OS-Cas9 細胞ライセートをローディングして行いました。AKT1 は、AKT1 抗体(Cat.No. AHO1112)によって 55 kDa 付近に検出されました。データは GAPDH によるローディングコントロールでノーマライズしました。sgRNA 1、2、3 の混合物では、AKT1 タンパク質の発現量の低下が観察されており、抗体が特異的であることが確認できます。
sgRNA2 および sgRNA 1、2、3 の混合物は、タンパク質発現の減少を有意に引き起こしました。Cas9 ヌクレアーゼを安定的に発現させた U2OS 細胞をカバースリップにプレーティングし、24 時間後に Akt1 遺伝子に対する複数の sgRNA(sgRNA1、sgRNA2、sgRNA3、sgRNA 1、2、3の混合物)でトランスフェクションしました。トランスフェクションしてから 72 時間後に細胞を固定化し、透過処理後、AKT1 抗体(Cat.No. AHO1112)と反応させました。核および細胞骨格は、DAPI 含有 Invitrogen SlowFade Gold 褪色防止マウント剤およびローダミン標識ファロイジンにより、それぞれ染色しました。画像は、Nikon Ti-U 顕微鏡を用いて、60x の倍率で取得しました。sgRNA2 および sgRNA 1、2、3 の混合物でトランスフェクションした細胞では、AKT1 シグナルの有意な低下が観察されており、抗体が特異的であることが確認できます。
抗体の特異性検証のための CRISPR-Cas9 実験ワークフロー。
RNA 干渉(RNAi)技術は、細胞の自然メカニズムを利用して、ターゲット遺伝子の発現を効果的にノックダウンできるという利点があります。この方法は抗体特異性の検証に幅広く利用されます。
哺乳類細胞では、short interfering RNA(siRNA)とも呼ばれる 2 本鎖 RNA の短い断片が、細胞内の特異的な mRNA の分解またはノックダウンを引き起こします。この過程において、2 本鎖 siRNA のアンチセンス鎖は、RNA 誘導サイレンシング複合体(RISC)と呼ばれるタンパク質複合体の一部となります。RISC はその後、相補的な mRNA を見つけ、それを特異的な部位で切断します。切断されたメッセージは分解のターゲットとなり、最終的にはタンパク質発現の損失が引き起こされます。
RNAi 実験は、さまざまな方法で行われます。RNAi は、合成したスモール RNA のプール、または in vitro 切断(ターゲット RNA の in vitro ダイシング)によって得た siRNA のプールを、ターゲット細胞にトランスフェクションすることで可能となります。RNAi はまた、ショートヘアピン RNA(shRNA)ベクターを、細胞にトランスフェクションすることでも可能です。shRNA は細胞内でプロセスを受け、in vivo 生成された siRNA が、ターゲットとなる特異的な mRNA 分子を分解します。ノンターゲティングコントロールが、ノックダウンの特異性を確認するために使用されます。
siRNA によるターゲット mRNA ノックダウンの原理。図は、in vitro 合成した siRNA による典型的な RNAi 実験を示しています。
下の例では、96 ウェルフォーマットを用いて Invitrogen Silencer Select siRNAs を細胞にトランスフェクションし、RT-qPCR を行いました。最も効率の良いノックダウンが、遺伝子発現解析によって同定されます(効率は細胞のタイプや siRNA トランスフェクションの条件によって異なります)。選択したスクリーンをスケールアップし、ウェスタンブロッティングや免疫細胞化学(ICC)による抗体の特異性検証に使用します。
抗体の特異性検証に使用するノックダウン戦略のスキーム。
ウェスタンブロッティングによる抗体の検証(A) Invitrogen SMAD2 ABfinity ウサギモノクローナル抗体(Cat.No.700048)を使用したウェスタンブロッティングの結果、SMAD2-targeting siRNA でトランスフェクションした HeLa 細胞の全ライセートにおける SMAD2(レーン 3)のノックダウンが明らかとなっています。コントロールである未処理(レーン 1)およびスクランブル RNA(レーン 2)の結果との比較により、ノックダウンが明らかとなっています。アクチンはローディングコントロールとして使用しました。(B) 未処理およびスクランブル siRNA をポジティブコントロールとして比較した場合の、ウェスタンブロッティングにおける SMAD2 バンドのノックダウンの相対定量。各バンドの強度はアクチンバンドの相対強度によってノーマライズしました。
免疫細胞化学による抗体の検証。(A) Invitrogen RNF20 ABfinity ウサギオリゴクローナル抗体(Cat.No. 710911)を使用したウェスタンブロッティングの結果は、RNF20-targeting siRNA でトランスフェクションした HeLa 細胞の全ライセートにおける RNF20 のノックダウンが明らかとなっています。コントロールである未処理およびスクランブル RNA の結果との比較により、ノックダウンが明らかとなっています。GAPDH はローディングコントロールとして使用しました。(B、C) Invitrogen™ Lipofectamine™ コントロールおよび siRNAトランスフェクション細胞による免疫細胞化学の画像により、RNF20 のノックダウンが明らかとなっています。画像は 60x の倍率で撮影しました。
ターゲットに結合することが遺伝子操作サンプルを用いる方法によって検証された Invitrogen 抗体は、検索結果や製品ページにおいて「特異性検証済み」の記号で示されています。検証済みを証明するデータが、それぞれの製品ページにて提供されています。
*「検証」という用語の使用またはあらゆるバリエーションは、表示した研究技術に使用可能であることを確認するための機能試験の対象となった研究用抗体のみに適用されます。その製品が臨床用または診断用として検証されたことを担保するものではありません。