緒言

細胞刺激試薬であるPhorbol 12-myristate 13-acetate(PMA)、Ionomycin、Brefeldin A、およびMonensinは、細胞内シグナル伝達のための転写因子を活性化し、多くの異なる免疫細胞においてサイトカインを産生させることができます。Brefeldin A溶液は、シグナル伝達タンパク質とサイトカインを細胞内で貯留させるために有用です。Brefeldin Aは細胞内タンパク質輸送阻害剤です。培養中の細胞をBrefeldin Aとインキュベートすると、ゴルジ体(GC)へのタンパク質輸送が遮断され、小胞体(ER)にタンパク質が蓄積します。細胞のin vitro活性化の最後の数時間にBrefeldin Aを加えると、細胞内におけるサイトカインの検出が増強されます。分泌タンパク質のイムノアッセイ(例:ELISA、ウェスタンまたはマルチプレックスタンパク質検出など)を実施する場合、細胞をBrefeldin Aで処理する必要はありません。


材料

  1. 通気キャップ付きのT25またはT75滅菌フラスコ(例:Nunc EasYFlask細胞培養フラスコ、T25、フィルター、カタログ番号156367)
  2. RPMI 1640培地(例:BenchStable RPMI 1640培地、カタログ番号A4192301)
  3. ウシ胎児血清(例:Gibcoウシ胎児血清、カタログ番号26140079)
  4. 細胞刺激試薬カクテル:phorbol 12-myristate 13-acetate(PMA)、Ionomycin、Brefeldin A、Monensin(例:タンパク質輸送阻害剤を含むまたは含まないInvitrogen細胞刺激試薬、カタログ番号00-4975-93または00-4970-93)
  5. Brefeldin A溶液(例:eBioscience Brefeldin A solution、カタログ番号00-4506-51)
  6. 細胞スクレーパー(例:Nunc細胞スクレーパー、カタログ番号179693)


手順

  1. 無菌条件下で無菌手法を用いて、全血(補足プロトコルA)または準備されたリンパ組織(補足プロトコルB)からPBMCを分離します。
  1. RPMI 1640培地にウシ胎児血清を最終濃度10%になるまで添加することにより、完全なRPMI 1640培地を調製します。培地を37℃にします。
  1. 完全RPMI 1640培地で細胞を3 x 106細胞/mLの濃度に再懸濁します。使用するフラスコのサイズ(T25またはT75)に基づいて必要な容量を調製します。
  1. 2つの培養フラスコを準備し、一方には「活性化」、もう一方には「非活性化」とラベル表示します。
  1. 準備したフラスコに細胞溶液(ステップ3で調製)を均等に分注します。
  1. 「活性化」とラベルしたフラスコに1x濃度(2 μL/mL)の細胞刺激試薬カクテルを加えます。
  1. 「活性化」、「非活性化」とラベルしたフラスコのそれぞれに、1x濃度(3 μL/mL)のBrefeldin A溶液を加えます。
  1. 両方のフラスコを通気性のフィルターキャップで覆い、37℃の5% CO2インキュベーター内で5時間インキュベートします。
  1. 細胞スクレーパーで細胞を回収します。

プロトコルのコツ:

最適化された調製済みの 固定バッファーを使用すると、フローサイトメトリーにおけるサイトカインと転写因子の検出効率を向上させることができます。


補足プロトコルA:全血からのPBMCの分離

材料

  1. リン酸緩衝生理食塩水(例:Gibco PBS(10倍)、pH 7.4、カタログ番号70011044)
  2. 15 mLまたは50 mLコニカルチューブ(例:Nunc 15 mLコニカル滅菌済遠心チューブ、カタログ番号339650)
  3. Ficoll-Paque®密度勾配分離培地
  4. フローサイトメトリー染色バッファー(例:eBioscienceフローサイトメトリー染色バッファー、カタログ番号00-4222-26)

手順

  1. コニカルチューブで血液サンプルをPBSで少なくとも1:1に希釈します。
  1. 元のサンプル量と等量のFicoll-Paque®培地を希釈サンプルの下に置きます。
  1. ブレーキをオフにした状態で、室温で20分間、400 x gで遠心分離します。
  1. PBSとFicoll-Paque®培地層の界面にあるPBMCを新しいチューブに回収します。
  1. チューブをPBSで満たし、細胞を洗浄します。
  1. 細胞を2~8℃で4~5分間、300~400 x gで遠心分離します。上清を廃棄します。
  1. 細胞ペレットを適量のフローサイトメトリー染色バッファーまたは任意のバッファーに再懸濁し、細胞数と生存率の分析を行います。
  1. ステップ6のように細胞を遠心分離し、適量の完全RPMI 1640で、最終濃度が3 x 106個/mLになるよう細胞を再懸濁します。

注:

細胞を培養するので、無菌的にすべてのステップを実施し、また、アジドを含まないバッファーを使用します。

プロトコルのコツ:

自動セルカウンターを使用すれば、採取したばかりの末梢血単核細胞からの細胞の健康状態と濃度の評価の精度が大幅に向上します。 Countess II FL自動細胞カウンターを使用してPBMCを計数する方法に関する 詳細なプロトコルを参照してください


補足プロトコルB:リンパ系組織からの免疫細胞の分離

材料

  1. 60 x 15 mmの細胞培養皿(例:Nunc細胞培養ペトリ皿、カタログ番号150340)
  2. プラスチック製の3 mLシリンジまたはつや消しされたガラス製顕微鏡スライド2枚
  3. セルストレーナー(ナイロンメッシュ)
  4. 15 mLまたは50 mLコニカルチューブ(例:Nunc 15 mLコニカル滅菌済遠心チューブ、カタログ番号339650)
  5. フローサイトメトリー染色バッファー(例:eBioscienceフローサイトメトリー染色バッファー、カタログ番号00-4222-26)

手順

  1. 組織(脾臓、胸腺、リンパ節)を10 mLのフローサイトメトリー染色バッファーまたは任意のバッファーを入れた細胞培養皿に採取します。3 mLシリンジのプランジャーで押し出し、単細胞懸濁液に調製します。あるいは、10 mLのフローサイトメトリー染色バッファーを用いて、2枚の顕微鏡スライドのすりガラスの端に組織を挟みつぶしてください。
  1. 15 mLコニカルチューブの上にセルストレーナーを置きます。細胞培養皿から細胞をセルストレーナーに通して、凝集塊やデブリを除去します。
  1. 細胞懸濁液を2~8℃で4~5分間、300~400 x gで遠心分離します。上清を廃棄します。
  1. 細胞ペレットを適量のフローサイトメトリー染色バッファーまたは任意のバッファーに再懸濁し、細胞数と生存率の分析を行います。
  1. ステップ3のように細胞を遠心分離し、適量の完全RPMI 1640培地で、最終濃度が3 x 106個/mLになるように細胞を再懸濁します。

注:

リンパ系組織から単細胞懸濁液への調製は、一般的に機械的な分散で十分です。

注:

細胞を培養するので、無菌的にすべてのステップを実施し、また、アジドを含まないバッファーを使用します。

For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.