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低濃度の病原体の検出は、汚染された食品や給水を通じて細菌またはウイルス性病原体がヒトの病気を引き起こす状況を避けるために重要です。このような観点から、食物連鎖のできるだけ早い段階で病原体を検出し、その影響を軽減することが研究において重要です。リアルタイムPCR(qPCR)は、概して病原体検出に有用なツールとなりえますが、食品や水質検査における一般的な粗サンプル中に存在するPCR阻害物質に影響されます。
一方、デジタルPCRは阻害物質に対する感受性が低く、より堅牢な検査プラットフォームを提供します。デジタルPCRは、各バルク調製されたPCRサンプルを数千の独立したマイクロチャンバーに区画化することで機能します。デジタルPCRはリアルタイムPCRとは対照的に、ほとんどの一般的なPCR阻害物質にあまり影響されません。これは主に、阻害物質が、数万のマイクロ反応区画化で自然に希釈されていること、またエンドポイント反応を見るためです。そのため、他の方法では大きく阻害されるサンプルでも、病原体濃度をより正確かつ高精度に測定できます。さらにデジタルPCRは、個々の病原性ターゲット分子の絶対数を計数できるため、標準物質や標準曲線は必要ありません。
1.デジタルPCRには、定量PCRやリアルタイムPCRよりも多くの阻害物質に耐性があるのはなぜですか?
dPCRは増幅率を測定するのではなく、サンプルを>20,000個のマイクロチャンバーに区画化し、ポジティブ/ネガティブの結果を取得することで機能します。dPCRは、DNAポリメラーゼ酵素に影響する阻害物質を希釈することにより、またエンドポイント定量という性質により、評価が難しいサンプルにしばしば存在するPCR阻害物質に対する堅牢性を向上させることができます。
2.1回のデジタルPCR反応で複数の病原体を測定できますか?
はい。1回のdPCR反応で複数のアッセイを使用すること(マルチプレックス化)により、反応あたり検出されるターゲット数を増やすことができます。1回のdPCR反応で異なるアンプリコンをマルチプレックスすることは、アッセイを異なる蛍光色素で混合するのと同じくらいシンプルで、プライマーに制約されることはありません。ただし、すべてのアッセイは、適切なポジティブコントロールを使用してシンプレックスフォーマットで個別に試験する必要があります。これは、シンプレックスとマルチプレックスのdPCR反応間の結果の一致を確保するのに役立ちます。
マルチプレックスdPCRアッセイ、または複数の蛍光標識プローブを用いるアッセイのしきい値の設定は、2次元(2D)プロットでデータを可視化することによって行う必要があります。2Dで2つのターゲットのしきい値を設定する場合、4つのクラスターをプロットで識別できます。FAM色素のしきい値が5,000、VIC色素のしきい値が1,000のマルチプレックスデータの2Dプロットを図1に示します。黒色のドットは、両方のターゲットがネガティブのマイクロチャンバーを示しています。紫色のドットは、FAM色素で標識されたターゲットのみに対してポジティブのマイクロチャンバーを示し、オレンジ色のドットはVIC色素で標識されたターゲットのみに対してポジティブのマイクロチャンバーを示しています。
マルチプレックスdPCRを行う場合、複数のターゲットを含むマイクロチャンバーを検出するのが一般的です。ターゲット濃度が増加するにつれて、複数のターゲットに対してポジティブのマイクロチャンバーの数が増加します。図1では、両方のターゲットに対してポジティブのマイクロチャンバーは緑色のドットで示され、二重ポジティブのマイクロチャンバーの量をソフトウエアで容易にカウントできます。2Dでのマルチプレックスアッセイのしきい値は、各チャンネルの蛍光しきい値の適切な位置を特定するのに役立ちます。
図1. 2つのターゲットと、FAM色素(y軸)およびVIC色素(x軸)で標識された2つのプローブを使用した、マルチプレックスdPCRアッセイデータのdPCRプロット
両方の色素の蛍光強度は、分析された各マイクロチャンバーにプロットされます。水平のしきい値より上の紫色のドットは、FAM色素で標識されたプローブに対してポジティブとしてカウントされるマイクロチャンバーを示します。垂直のしきい値を超えるオレンジ色のドットは、VIC色素で標識されたプローブに対してポジティブとしてカウントされるマイクロチャンバーを示します。緑色のドットは、両方のプローブでポジティブとカウントされるマイクロチャンバーを示し、両方のターゲットが存在することを示しています。
3.dPCRが病原体定量に使用されるのはなぜですか?
きわめて低濃度のウイルス量を分析する研究において変化を検出し、既存のqPCR法を補完するためには、高感度で正確な定量が必要です。dPCRテクノロジーは一般的なPCRプラットフォームに比べて、高感度、高精度、および信頼性の高い性能などの利点があります。
デジタルPCRは、リファレンスサンプルやアッセイ標準に依存しません;目的の核酸ターゲットの正確なコピー数を測定する研究において、絶対定量に使用できます。バルク反応混合物は、数千の小さな独立した反応に分配・区画化されるため、各マイクロチャンバーはターゲットのコピーを1つ含むか、あるいはまったく含みません。次に統計的手法を使用して、ポジティブおよびネガティブのマイクロチャンバーの数に基づいて元の濃度を計算します。