リアルタイムPCR機器を用いてPCR産物を検出するための2種類のケミストリーを開発しました:

お客様にとってどちらのリアルタイムケミストリーが最適ですか?

 SYBR® Greenベースの検出 TaqMan®ベースの検出
 
 
PCR中に増幅するPCR産物の検出に SYBR® Green dye (dsDNA結合色素)を使用。
 
 
PCR中に増幅するターゲットの検出に、標的遺伝子に特異的な fluorogenic probeを使用。
特異性中* 
感度 コピー数変動的* 1~10 コピー
再現性中* 
マルチプレックス  yes
設計済みアッセイ  yes
通常、ユーザ設計、実験による最適化が必要yes  
遺伝子発現低レベルの定量 高レベルの定量
アプリケーション遺伝子発現
DNA 定量 (病原体検出)
CHiP
 遺伝子発現
DNA 定量
CHiP
SNP ジェノタイピング
コピー数多型
パスウェイ解析
マイクロRNA & 小RNAs
変異検出
タンパク質分析
マルチプレックス
 SYBR® Green プライマー

SYBR® Green マスターミックス

 TaqMan® Assays

TaqMan® マスターミックス

*テンプレートの品質とプライマー/設計の最適化により異なります。

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図 1: TaqMan®- と SYBR® Greenベース検出のワークフローの比較。

TaqMan® ケミストリー

バックグランド

最初は、インターカレーター色素をリアルタイムPCR産物の測定に使用しました。これらの色素の主な欠点は、特異的および非特異的なPCR産物の両方の増幅を検出することです。

TaqMan® ケミストリーの開発

PCRのリアルタイムシステムは、TaqDNAポリメラーゼの5 'ヌクレアーゼ活性を使用した蛍光標識プローブの導入により改善されました。これらの蛍光プローブが利用できるようになったことにより、特異的な増幅産物のみを検出するためのリアルタイム法の開発が可能になりました。

ステップバイステップ・プロセス

  1. オリゴヌクレオチドプローブは、 5'末端には蛍光レポーター色素が、および3'末端にはクエンチャー色素が、それぞれ結合した構造になっています。プローブ分解前は2つの蛍光の距離が違うので、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)により、レポーター色素が発光する蛍光はクエンチャー色素によって大幅に減少します。
  2. ターゲット配列が存在する場合、プローブは片側のプライマー部位の下流にアニールします。その後このプライマーからの伸長反応にと伴い、Taq DNAポリメラーゼの5 'ヌクレアーゼ活性によってプローブは切断されます。
  3. プローブの切断により:
    -- レポーター色素とクエンチャー色素が乖離するので、レポーター色素シグナルが増加します。
    --ターゲット鎖からプローブを削除した後も、鋳型鎖の最後までプライマーからの伸長反応は進みます。 従って、プローブが存在しても全体的なPCRプロセスは阻害されません。
  4. サイクル毎に分解したプローブからのリポーター蛍光分子が増えていくので、アンプリコンの増幅量に比例して蛍光強度は増加します。


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図 2: TaqMan® Probe-Based Assay Chemistryの概要

2種類のTaqMan® プローブ

2種類のTaqMan® プローブがあります:

  • TaqMan® プローブ (クエンチャー色素としてのTAMRA™ 色素付き)
  • TaqMan® MGB プローブ

対立遺伝子識別アッセイに推奨されるTaqMan® MGB プローブ

特に、従来のTaqMan® プローブが30塩基を超える場合は、対立遺伝子識別アッセイにTaqMan® MGB プローブを使用することをお勧めします。TaqMan® MGB プローブの構成:

  • 3 '末端の非蛍光クエンチャー - クエンチャーは蛍光を発しないため、リアルタイムPCR機器はレポーター色素の蓄積量をより正確に測定することができます
  • 3 '末端のMGB ― MGBはプローブの融解温度(Tm)を上昇させ、より短いプローブの設計を可能にします

その結果、TaqMan® MGBプローブは、適合プローブと非適合プローブの間で大きく異なるTm値を示し、より正確な対立遺伝子識別ができます。

TaqMan® ケミストリーの利点

  • 蛍光シグナルの生成に、プローブとターゲット間の特異的ハイブリダイゼーションが必要
  • プローブは異なる識別可能なレポーター色素で標識可能で、1つの反応チューブ中で2つの異なる配列の増幅および検出が可能
  • PCR後の処理が不要となり、アッセイの操作や材料コストを削減

TaqMan® ケミストリーの欠点

主な欠点は、異なる配列には異なるプローブの合成が必要なことです。

SYBR® ケミストリーまたは他の二本鎖DNA結合色素

バックグラウンド

二本鎖DNAに結合する小分子は、2つに分類できます:

  • インターカレーター
  • MGB (Minor-groove binders)

結合方法にかかわらず、リアルタイムPCRの検出用のDNA結合色素には2つの条件があります:

  • 二本鎖DNAへの結合時に蛍光の増加
  • PCRを阻害しない

PCRの阻害がほどんどなく、エチジウムブロマイドに比べて検出感度が高いSYBR® Green I 色素をPCRに使用できるよう開発しました。 また、従来のSYBR® Green Iより明るい蛍光を発し、PCRの阻害が少ないnewer SYBR® Green色素があります。

SYBR® 色素ケミストリーのしくみ

SYBR® 色素は、PCR中に形成される二本鎖DNAに結合することにより、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)産物を検出します。反応の仕組み

ステップバイステップ・プロセス

  1. SYBR® 色素をサンプルに添加すると、すぐにサンプル内に存在する全ての二本鎖DNAに結合します。
  2. PCRの間、 DNAポリメラーゼは PCR産物となるターゲット配列を増幅します。
  3. その後、SYBR®色素は二本鎖DNAの新しい各コピーに結合します。
  4. PCRが進むにつれ、より多くのPCR産物が生成されます。SYBR®色素は全ての二本鎖DNAに結合するので、その結果、増幅されるPCR産物の量に比例して蛍光強度が増します。

SYBR® 色素の利点

  • あらゆる二本鎖DNAシーケンスの増幅のモニターに使用可能です。
  • お客様のPCRプライマーが適切に設計され、反応系の特異性が十分に確保できていると考えられるケースでは、プローブは不要で、アッセイのセットアップとランニングコストを削減できます。

SYBR® 色素の欠点

主な欠点は、偽陽性シグナルを検出する可能性があることです; つまり、SYBR® 色素はどの二本鎖DNAにも結合するので、非特異的な二本鎖DNAシーケンスにも結合する可能性があります。従って、ターゲットでない配列を増幅することなく、またその融解曲線を解析するよう適切に設計したプライマーを用意することが非常に重要です。

さらなる考察

DNA結合色素の使用における他の考慮のポイントは、複数の色素分子が単一の増幅DNA分子に結合できるということです。複数個所に色素が結合するので、反応で増幅した二本鎖DNAの質量に依存して蛍光シグナル値は変動します。例えば増幅効率が同じ場合、短い産物よりも長い産物のほうが、より強いシグナル値を発します。これは蛍光プローブの使用とは対照的です。蛍光プローブではその長さに関わらず、合成された各増幅分子毎に、1個のリポーター蛍光分子がクエンチングから解放されて発光します。